大洪水伝説の分布は「失われた超古代文明」の証拠か!? オーパーツ地図に隠された古代の大災害

文=遠野そら

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    大洪水で滅んだ超古代文明の神話は世界各地にある。その痕跡は、古地図オーパーツに遺されているのかもしれない。

    *洪水を引き起こした彗星衝突仮説についてはこちらの記事で*

    ギルガメッシュ叙事詩の洪水伝説

     文化や文明に関係なく、世界各地で共通して語り継がれている大洪水の伝説。ノアの箱舟伝説が広く知られているが、その原型は約5000年前に書かれたとされる古代シュメールのギルガメッシュ叙事詩にあるというのが通説である。

    ノアの箱舟は人類史の出来事として繰り返し絵画のモチーフになってきた。画像=Wikipedia

     ギルガメッシュ叙事詩とは古代シュメールに永遠の命を求めた王・ギルガメッシュが、女神シドゥリに導かれ持ち帰った、いわば長い旅の記憶である。そしてその旅の途中で出会った数千年前の王、ウトナピシュティムによって語られた話が、現代に伝えられる大洪水伝説なのである。

    ——はるか遠い昔、地上で暮らしていた神々は、世界に溢れる人間たちが発する野生の雄牛のような喧騒で眠れなくなってしまった。そこで、神々は人間を滅ぼすことにしたのだ。
     しかし水の神エアは、当時の王、ウトナピシュティムを哀れに思い、大洪水が起こることを知らせ、家族が生き残るため箱舟を作るよう指示したのである。ウトナピシュティムはエアの言いつけ通りすぐさま箱舟を作り、そこに家族や親戚、職人の他、すべての生物の種を積み込んだ。
     そして夜明けの明かりとともに黒い雲が湧き出てくると、昼夜6日もの間、暴風雨が吹き荒れ、洪水が世界中を覆った。そして7日目。嵐がおさまりウトナピシュティムが外を見渡すと、四方は水で覆われており、世界は絶望という名の沈黙が支配していた。
     彼らは80キロほど先に見えたニシル山へ船をつけ、水が引いた場所を調べるべく、まず最初にハトを放した。だがハトは飛び去ったが留まるところがなく戻ってきた。次にツバメを放したが、やはり留まるところがなく戻ってきた。そしてカラスを放つと、水が引いたのを見て取り餌を食べ、船の周りを鳴きながら飛び去り、戻ってはこなかった。
     これにより水が引いたことを知ったウトナピシュティムたちは大地を踏み、山の頂にぶどう酒を注ぐと、神々は洪水を逃れた彼の功績を認め、不死の体を与えた。

    ——というものだ。

     これは古代シュメールだけではなく、各地の遺物や銘板にノアによく似たウトナピシュティムが登場するが、どれも名前は様々である。しかしどの人物も神から事前に警告を受け、世界的な洪水を箱舟で乗り切り子孫を残していくのだ。

     これらの洪水伝説に残された多くの類似点があるが、肝心なのは我々人類にどこまで広がっているかである。

     伝えられるところによると、世界中で500以上の洪水伝説が存在するというが、この内86の伝説を調査したリチャード・アンドレー博士によると、メソポタミアやユダヤの伝説との関係が示唆される伝説はたった24しかなかったという。とするとやはり不思議なのは、これほどまでにリンクしている洪水伝説にはどのような意味が含まれているのだろうか。

    ギルガメッシュのレリーフ。画像=Wikipedia

    超古代文明の記憶を裏付けるオーパーツ地図

     その答えについて、かの有名なグラハム・ハンコックは著書『人類前史』の中で、こう述べている。

    「氷河期の古地図が示唆するのは、遠い先史時代に世界中を探検し地図を作る能力を持った失われた文明が存在することだ」

     ハンコック氏は約1万2800年前、世界各地で高度な文明が発達していたが、彗星の空中爆発によって人類は幾何学、天文学知識を遺し滅亡したと推測しており、現在に伝えられる大洪水神話は、彼らの末裔が後世へ伝えた史実、として結論付けている。そしてその記録こそが、オーパーツとも言われる緑化した南極大陸を書いたピリ・レイスの古地図や、ヴァルトゼーミュラーの世界地図なのだという。

    古地図オーパーツは大洪水以前の世界地図なのか

     1507年に作成されたヴァルトゼーミュラーの地図は、アジアやオーストラリアが一見すると不正確に描かれている。だがこれが氷河期のまっただ中、2万1300万年前のものだとしたらどうだろうか。氷河期の終わりに海底へ沈んだ幻の大陸『スンダランド』の姿にピタリと一致するのだ。

    1507年に作成されたヴァルトゼーミュラーの地図。

     またさらに言えば1513年に描かれたとされる、有名なピリ・レイスの地図がある。これは当時まだ未発見だった南極大陸の海岸線が正確に描かれているとして一躍注目を集めたが、この地図にまつわる謎はそれだけではない。南極大陸の氷の下にあるクイーンモードランド地方を正確に、かつ詳細に描写しているのである。この地域が氷床に覆われたのは紀元前約4000年前とされているにもかかわらず、だ。

    ピリ・レイスの地図。南極大陸が緑に覆われていることがわかる。画像=Wikipedia

     両者ともに過去の古い地図を参考に作成していたことが明らかになっているが、ここで多くの研究者を悩ませているのが、元となった原地図の存在である。氷河期時代にはすでに詳細な地図を描ける高度な文明が発展していた、そう考えざるを得ないからである。

     ハンコック氏の説をすべて鵜呑みにする訳では無い。しかし、氏の主張通り1万2800年前のヤンガードリアス期を境に、超高度な古代文明が消滅していたとしたら、約1万2000年前に一夜にして海の底へと沈んだとされる幻の大陸「ムー」や「アトランティス」伝説、さらには世界各地に点在する古代文明の謎も説明つけることができるのではないだろうか。またさらに言えば世界各地で発見されている海底遺跡が約1万年頃のものであるのも辻褄が合うように思う。

     伝説の継承人は一体何を経験したのか。これはあくまでも推測にしか過ぎないが旧約聖書に登場するノア一族が大洪水から生き延び、神の救いを確信した日が7月17日であることから、まずは今生を大切に過ごすのも良いのかもしれない。
     古代の地図を読み解くことは、当時の世界観のみならず、失われた神話=史実の解明につながるはずだ。今後の研究にぜひ期待したいと思う。

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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