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京都府福知山市大江町にある元伊勢内宮皇大神社は、美しいピラミッド形をした日室ヶ嶽(岩戸山)を御神体として祀る古社だ。
ちなみに元伊勢とは、天照大御神が宮中を出てから現在の伊勢神宮に祀られるまでの間、すなわち崇神天皇の御代から垂仁天皇の御代まで、一時的に遷座された土地を指す。
こうしたこともあってか、日室ヶ嶽は禁足地とされており、原生林に覆われている。頂上には磐座と思われる巨石も確認されていて、もともと元伊勢内宮皇大神社はこの山頂にあったという伝承もある。
同社のHPによれば、冬至の日に丹後の与謝の石鳥居(元伊勢籠神社)から東南東を望むと、大江山千丈ヶ嶽(与謝の大山)、日室ヶ嶽、元伊勢内宮(吉佐宮)、伊勢両宮が一直線で結ばれるという。これは古代人が冬至を重視し、復活を始める太陽を拝した神秘なラインなのである。
また、日室ヶ嶽の下を流れる宮川渓流には、天岩戸神社が岩壁にはりつくように鎮座している。その名の通り、天照大御神が天の岩戸に隠れたという神話の地だ。
そのときに神々が座したとされる巨大な「御座石」や、神楽を舞った「神楽石」なども見られ、大本教の出口なおと王仁三郎も、元伊勢としてこの地を尊崇していた。
日室ヶ嶽ピラミッドは、そんな神話の地でもあるのだ。
また大江山といえば、酒呑童子伝説を忘れるわけにはいかない。いうまでもなく、大江山に住む酒好きな鬼の頭領(酒呑童子)を、源頼光と配下の渡辺綱らが討ち倒したという物語だ。
だが実際のところ、大江山には他にふたつ、鬼退治伝説がある。それは、崇神天皇の弟の日子坐王(彦坐王)が、土蜘蛛を退治したというものと、聖徳太子の異母弟の麻呂子親王が、3匹の鬼を討ったというものだ。
つまり大江山には、複数の「鬼」が住んでいたのである。
これが何を意味しているのか。
一般に鬼とは、盗賊や「まつろわぬ者」の比喩とされる。つまり大江山の鬼とは、日室ヶ嶽ピラミッドで祭祀を行っていた者、あるいは大和朝廷とは別の歴史を持つ者たちの末裔だったのかもしれない。
(月刊ムー2024年5月号)
中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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