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日本のエリート官僚と在日米軍の軍人たちによる秘密の会議が存在することをご存じだろうか。その会議は「日米合同委員会」と呼ばれ、そこで合意された事項は、強い効力を持っているとされる。 だが、合意事項は日米双方に拘束力を有するものの、協議は原則非公開であり、日米双方の合意がなければ公開されず、国会への報告義務もないのだ――。 秘密のベールに覆われた、日米合同委員会の驚くべき実態と闇に迫る!
2015年(平成27)5月に放送された政治討論番組「【西部邁ゼミナール】鳩山元首相が語る、米軍基地問題」で鳩山由紀夫氏は次のように発言して
いる。
「そこで決まっていることが何であるかはいっさい秘密で、総理である私にもまったく報告がないわけです。その会合がやっているということ自体も伝わってきていないわけです。でも、現実にはそういうことがあると。そして、それがある意味で日本の憲法より上に行くような話になっているという」
さらに鳩山氏は、『株式会社化する日本』(詩想社・2019年刊)のなかで次のように発言している。
「私は恥ずかしながら日本の官僚と米軍人との間の日米合同委員会が毎月二度、秘密裏に行われているということも、その会議の内容もわかっていなかったものですから」
これらの発言からわかることは、一国の首相の裁可を得ることなく、日米間で重要な決定がなされていたという事実である。
では、その意思決定の源泉とは何か――それが、ベールに包まれた「日米合同委員会」という日米間で行われる実務者会議である。
日米合同委員会は、1952年(昭和27)調印の日米行政協定(現在の日米地位協定)で設置された協議機関で、会議は月に2回程度、日本のエリート官僚と在日米軍の幹部が都内の米軍施設(南麻布のニュー山王ホテル)と外務省に集まって行われる。
日本側の代表者は外務省北米局長、米国側は在日米軍副司令官で、「刑事裁判管轄権」「出入国」「航空機騒音対策」「訓練移転」「在日米軍再編」といった多岐にわたる議題が協議され、分野ごとに分科会や部会が30以上設置されている。本会議に相当する合同委員会で合意事項が決定される。
合意事項は日米双方に拘束力を有するものの、協議は原則非公開であり、日米双方の合意がなければ公開されず、国会への報告義務もないことから、密約の温床との指摘もあるのは周知の事実だ。
振り返ってみれば、鳩山氏が総理を辞任するきっかけとなったのは、沖縄の普天間基地移設をめぐる問題だった。
2009年(平成21)の衆院選を圧勝し、発足した鳩山内閣にとっての最大の懸念は、米軍普天間基地の移設問題だった。「最低でも県外」といいつづけた鳩山首相は、移設先を捜すも実現できず、すでに決まっていた名護市への移設を求めるアメリカ側との交渉は難航。そして、結局5月には名護移設で日米双方が合意し、鳩山首相は沖縄県民の厳しい反発を受けた。結果、内閣支持率は20パーセント前
半まで急落し、鳩山首相は辞任へと追い込まれたのである。
この鳩山氏辞任の背景にあったのが、日米合同委員会であったという。以下は、政治評論家・田原総一郎氏の発言である。少し長いが引用する。
「そして、『世界一危険な飛行場』と言われる宜野湾市の普天間飛行場の返還が26年前に米国との合意によって決まったのだが、何と移設先は名護市の辺野古になった。
もちろん、沖縄県民の大部分は大反対である。そこで、2009年、民主党内閣初代首相の鳩山由紀夫氏(当時)は、『最低でも県外に移設する』と宣言した。沖縄県民の強い要望に応えようとしたのである。だが、鳩山氏は日米地位協定を詳しく知らなかったようだ。
日米地位協定とは、言ってみれば米国の占領政策の延長のような代物である。
その日米地位協定では、日米合同委員会なるものが制定されていて、その合同委員会で決まった事柄は首相といえども否定できない。そして、合同委員会は当然ながら、在日米軍が主導することになっていて、その合同委員会で米側が、普天間飛行場の移設先を辺野古と決めているのである」(「復帰50年も進まぬ沖縄基地問題 岸田首相はどう動く」AERA.dot/ 2022年5月25日)
鳩山氏の辞任が、非自民党政権ゆえの例外的なケースの結果として起こった悲劇だったのかどうかは定かではない。だが、アメリカが主導した決定事項は否応なしに認めざるを得ないという、日米合同委員会の影響力は一国の首相を超越したものであることは、推して知るべしだ。
『知ってはいけない 隠された日本の支配構造』(講談社現代新書)の著者・矢部宏治氏は、田原総一郎氏との対談において、日米合同委員会について、次のように発言している。
「ここ(筆者注・日米合同委員会)で決まったことは国会に報告する義務も外部に公表する必要もなく、何でも実行できる。つまり、合同委員会は、日本の国会よりも憲法よりも上位の存在なのです」(読書人の雑誌「本」2017年11月号)
日米合同委員会の決定事項は、日本の国会も憲法も関係なく、実行できるというのである――。
(文=斎藤 充功)
webムー編集部
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