「死ぬために生きている人々」の死生観とは!? インドネシアのトラジャ族の墓と葬式を現地取材/小嶋独観
珍スポを追い求めて25年、日本と世界を渡り歩いた男によるインドネシア屈指の珍スポ紹介!
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珍スポ巡って25年の古参マニアによる全国屈指の“珍寺”紹介! 今回は愛知県豊田市の妙楽寺をレポート! 2万を超える墓石が集った「墓の墓場」に衝撃!
愛知県豊田市の山中に妙楽寺というお寺がある。ここは40年ほど前から無縁になった墓石や訳あって行き場のなくなった墓石を引き取り供養している、いわゆる「墓の墓場」なのである。
妙楽寺の本堂からさらに車で上っていくと広い霊園がある。
新規の墓地をとり囲むようにズラリと古い墓石が並んでいる。その数は2万基以上。それらの墓石がひな壇状に隙間なくビッシリと並んでいる。
あまりの迫力にしばし呆然とする。
コレ、全部無縁墓なのかー。
今、日本ではかつてないほどの墓じまいブームが到来している。核家族化、少子化、そして葬送の多様化が進んだ現在、家単位で代々墓を継承していく事は中々難しい。
見れば造られて間もない墓石も多い。このような必要のなくなった大量の墓石群が並ぶ様は、現代日本の一断面を象徴している光景のように思えてならない。
高度経済成長期からバブル期までは多くの人が競って墓を求めていた。一時、東京でも墓地が不足し、バブルの頃などわざわざ他県の山奥の霊園などに墓地を求めた人もいたほどだ。皆、高額な使用料を支払い、墓石を建立し、自分とその家族、更に子孫のために終の棲家を求めたのであった。
しかし、その次の世代になると墓に対する考え方はガラリと変わってしまう。今ではロッカー式墓地や共同納骨堂、樹木葬、果ては散骨を選択する人が多くなってきた。自ら墓を建てようと考える人の方が少数派なのではなかろうか。
そんな世情に合わせて近年特に墓じまいが増えてきた。でも、ここに並んでいる墓石はまだマシなのかもしれない。墓石は辛うじて残り、供養をされるのだから。普通はクラッシャーで細かく砕かれ、採石場の埋め戻しの材料として廃棄されてしまうのだから。
よく見るとここに並べられているのは墓石だけではない。地蔵。
稲荷社にあったであろう狐の石像。
生前の姿を写したものだろうか、人物の石像などまである。中には髷を結った男性や結髪の女性などの石像まである。
中には墓石の上に首だけ載っているものもあり、生首みたいでギョッとした。
その「生首」の上の方に不思議な像が並んでいるのが目に入った。見たところ観音像だが、コレ、コンクリ像ですよね……。
根っからのコンクリ仏マニアの私、かなり大きな観音像に大興奮。しかも1体や2体ではない。相当な数のコンクリ仏像が並んでいる。もはや大軍団と言える規模ではないか!
こうなったら近くまで行ってよ~く見てみよう。雛壇状の墓石群は回り込むと坂道があり、雛壇の裏側まで上れるようだ。L字状に並んでいる墓石群の先端まで行くと、そこには緩やかな坂道があった。
坂道の脇には沢山の石が散乱している。恐らくここに並んでいる墓石の台石だったのだろう。
それらを組み合わせて台座を造り、その上に石塔を設置するのだろう。こんな造りで大丈夫なのだろうか?
上から墓石群を見下ろす。それにしても凄い数だし、案外高低差もあるのだなあ。
で、件のコンクリ仏に到着。もちろん後ろ姿で対峙する事になる。
御尊顔を拝しようと思い、横から回り込むものの墓石がビッシリ並んでいて、なかなか正面からは拝めない。
かといって、いくら無縁とはいえ墓石の上に乗っかって正面に回り込むわけにもいかないので腕を目いっぱい伸ばして何とか横顔だけ撮影した。
像の大きさは2~2.5メートルのものが中心で一際大きな観音像が4~5メートル程か。
コンクリ像の裏には左右一対の手を伸ばした神の長い女性のような像があった。天女、という解釈でよろしいのでしょうか?
再び下に降りて正面から見る。コンクリ像のほとんどが観音像だ。
そして特筆すべきは、その表情だ。正直言って技術的にはあまり上手くないのだが、それでもこれだけの数を造り上げるのだから、ただ物ではあるまい。
コンクリ像は全部で60体程。そして表情は全て目が離れたタレ目で、ゆる~い雰囲気なのだ。
愛知県という場所はどういう訳か戦前戦後の昭和の時期に数多くのコンクリート造形師、いわゆるコンクリ仏師が大活躍していたのだ。中でも多くの作品を残しているのは名古屋市在住だった浅野祥雲という人物。ここのコンクリ仏を見て真っ先に彼の名が脳裏を過ったが、あまりにも作風が異なる。他にも愛知県で活躍したコンクリ仏師は数名いるのだが、いずれも作風が一致しない。これはまだ見ぬコンクリ仏師が存在している、と考えるべきであろう。
墓地のさらに上の丘には、大きな観音像が立っているので、次にそちらを目指す。
再び車で上ると、大きな石の観音様がそびえていた。
その足元には赤ん坊の石像。さらにその下には、ミニ観音像が並んでいた。水子観音というそうな。
その観音像を取り囲むように無数のお地蔵さんがズラリと並んで先程の墓の墓を見下ろしている。
実にいい見晴らしだ。すぐ近くに電波の中継用のタワーが林立しているのも頷ける。
後日調べてみると、ここの寺にあったコンクリ像の作者は高見彰七という豊田市在住の人物で、豊田市周辺に数多くの作品を残していることが判明した。その多くは観音像と神馬で、それらの作品もやはり離れたタレ目でゆる~い感じが作風となっている。しかし、これだけ大量に揃っているのはここ妙楽寺だけである。
さらに再訪して御住職に話を伺うと、このコンクリ像群、かつては交通安全を願う地元の篤志家が高見氏に依頼して、付近の道路沿いにズラリと設置したものだとか。ところが道路の拡張によって撤去することになり、地元の別のお寺が全部引き取ったのだが、今度はそのお寺自体が「墓じまい」どころか「寺じまい」することになってしまい、この寺に移されたらしい。
個人の墓を維持できないばかりか、お寺すら維持できないのだから、本当に故人にとっては受難の時代と言うほかない。
墓地の片隅にはペット墓地があった。人間の墓は棄てられ、ペットの墓は建立される。現代ニッポンは何とも複雑怪奇な社会だ。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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