香川の首切峠と山形の座敷童子で”霊にモテモテ”!?/松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎の怪談行脚

文=松原タニシ・田中俊行・恐怖新聞健太郎

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    異色ユニットが、行く先々での怪奇体験を公開する。今回は香川の心霊スポット「首切峠」と山形の「座敷童子の宿」。霊的なタフガイの体験に震える!

    2021年1月27日記事を再編集

    健太郎、攻めの四国怪談を誓う

    タニシは生駒山で初日の出を拝んだ。

    タニシ 事故物件住みます芸人・松原タニシです。
    田中 どうも、オカルトコレクター、田中俊行です。
    健太郎 四国の怪談は俺が守る、恐怖新聞健太郎です。

    タニシ 2021年になりました。
    田中 もうだいぶ経つけどね。
    タニシ 皆さん今年の抱負とかありますか?
    健太郎 今年も“攻めの四国”で行きたいと思います。
    田中 去年から“攻めの四国”やったんや、知らんかった。
    健太郎 はい、誰にも言ってなかったですけど一応そうだったんです。今年は公言しようかなと。

    「四国の怪談は俺が守る!」と宣言しつつ「攻めの四国」を豊富とする恐怖新聞健太郎。所ジョージ以来の「まもるもせめるも」状態へ。

    タニシ 健太郎さんは去年から怪談に対する意識が変わりましたもんね。
    健太郎 そうなんです。なので早速攻めの姿勢で、最近高松で知り合ったTさんから聞いた体験談を話してもいいですか?
    田中 はや! 攻めの四国! まさに初陣で鬼若子と呼ばれた長宗我部元親の如く!
    タニシ いや、香川県なので勇猛果敢に槍を振るった鬼十河、十河一存(そごうかずまさ)か!
    健太郎 すみません、喋ってもいいですか?
    タニシ・田中 はい。

    香川の「首切峠」で憑いた霊

    健太郎 Tさんが大学生の時、友人のAくんとAくんの彼女の三人でよく遊んでいたそうです。
    いつもみんなバイトが終わる23時くらいから集まってたそうなんですが、その頃は心霊番組が流行っていて、三人もそれに影響されてよく心霊スポットに行ってたそうです。
    ある日、また心霊スポットに行こうということになって香川県でも有名な心霊スポット「首切り峠」に向かったそうです。
    首切り峠とは、まんのう町造田と綾歌町西分を結ぶ途中にある峠です。名前の由来は、造田備中守宗俊の守る造田城が長宗我部元親に攻められ、造田側は軍勢の差が大きく守りきれず、ほとんどの家来は討死し、造田備中守は城に火をかけ自害しました。生き延びた者も酷く、傷つき苦しみながら死ぬのは哀れとひと思いに首を切って楽にした事から「首切峠」と呼ばれるようになったそうです。

    なんとGoogleMapにも掲載されている。みなさん、現地に行く際は重々にお気をつけて。

    田中 エグい名前ついた場所多いよな、四国って。

    健太郎 車一台でAくんが運転、彼女が助手席、Tさんは後部座席に乗り、行きは割と賑やかに楽しく向かったんですが、いざその首切峠に到着すると、背の高い木が何百本もそびえたって外灯もない夜中の山中なので、やはり気味が悪いわけです。メインの首切峠には山道を脇道に入ってしばらく行くと祠のようなものと地蔵があるんですが、その脇道へは歩いて行く事にしたそうです。
    車を止めてTさんが持って来た懐中電灯を持って三人とも降りて歩き出した瞬間、Aくんの彼女が急に「バタン!」と倒れました。二人が驚愕していると彼女が「誰か足を引っ張った……」とだけ言ったんです。
    Tさんが持っていた懐中電灯をAくんの彼女に向けると、足首に誰かが強く握ったような手形がついていました。
    結局三人ともすっかり落ち込んでしまい、現場へは行かず車に乗ってその場を後にしたんですが、車で引き返している最中、彼女がブルブル震えているのに二人とも気付きました。
    Tさんは「今さっきのことがよほど怖かったんやろなぁ」と思っていたんですがどうも様子がおかしい。何やら苦しそうに呻きながら何かを喋ってるんです。
    急いで帰ろうとAくんがスピードを上げようとした瞬間、突然彼女がドアを開けて飛び出そうとしました。
    ビックリしたAくんが急ブレーキをかけて何とかなりましたが、彼女は相変わらず震えながら苦しそうにしていました。
    「何考えとんや! お前!」
    Aくんが怒鳴っても彼女は何も答えてはくれない。
    何とかAくんのアパートまで辿り着き、2階にある部屋まで階段を上がって行きました。部屋へ入るなりみんな意気消沈して座り込んでいましたが、Aくんの彼女は相変わらず苦しそうにしていました。
    Aくんが心配して「大丈夫か?」と何度も声をかけましたが、相変わらず全く答えてはくれません。
    とりあえずコーヒーでも飲むかとAくんが準備していると、居間にTさんと座っていた彼女がスっと立ち上がり、自分が座っていた後ろの窓を開けて飛び降りようとしたんです。
    あまりの事にビックリして動けなかったTさんでしたが、気がつくとギリギリのところで彼女を必死で羽交い締めにしているAくんの姿が目に飛び込んできたそうです。
    止められて暴れ回る彼女に
    「お前おかしいぞ! ええ加減にせぇよ!」
    Aくんが彼女を羽交い締めにしながら怒鳴ると、彼女がピタっと動きを止めてゆっくりとAくんの方に顔を向け、
    「自分、守護霊強すぎ……」
    と、確実に男の声で一言喋ってまた黙り込んだそうです。

    タニシ こわ!

    健太郎 そのあと自分たちが通っていた大学の教授にコトの顛末を話し、その教授の紹介でTさんを含めた三人は人生初のお祓いを受けに行ったそうです。
    彼女は首切峠からの記憶は全くなかったそうで、やはりというか何かに取り憑かれていたのだろうという結論でAくんとTさんは納得しました。
    しかし二人の中で、取り憑かれた彼女が発した一言「自分、守護霊強すぎ……」がどういう意味なんだろうという話になり、Tさんの考えでは、おそらくAくんの守護霊がめちゃくちゃ強くて、彼女に取り憑いた霊がボコボコにされていたんではないか、でも取り憑いた人から出たくないのか出られないのかはわからないけどとにかく霊が取り憑いた相手と一緒に逃げようとしたんではないか。それが震えながら苦しみ出したり走る車から飛び出そうとしたりアパートの二階の窓から飛び降りようとした奇行、そしてあの「自分、守護霊強すぎ……」発言につながったのではないか、と。
    それを証拠にTさんとAくんの彼女はお祓いを受けたのですが、実はAくんだけはお祓いを受けなかったそうです。

    山形の座敷童子にモテモテ!?

    田中 Aくんは無意識に守護霊が祓われないようにしてたんやね。
    タニシ いやあ、攻めたね健太郎さん。じゃあ続いて田中さん、今年の抱負は?
    田中 今年は“遅刻しない”、でした。
    タニシ いや、新年早々30時間遅刻しましたよね。
    田中 そやねん。だから過去形。
    タニシ 1月6日のお昼に僕ら山形で合流するはずが、田中さんが来たのは1月7日の夕方でした。
    田中 そうそう。だからタニシくんとは会えんかってんな。
    タニシ 僕はその日夕方には大阪行きの飛行機に乗らなあかんかったので。
    田中 というわけでタニシくんが帰ってから、ニコニコ生放送のディレクター・木村さんとYouTuberの悠遠かなたさんと三人で山形にある座敷童子の宿に行ってきましてね。
    この宿は明治時代の古民家をそのまま利用した宿泊施設なんやけど、完全貸切の一日一件の予約しかとっていなくて、予約は一年後までいっぱい。でもたまたまキャンセル待ちが出て、行けることになりました。

    健太郎 座敷童子の宿いいですねー。

    座敷童子の宿を満喫する田中。迷惑系YouTuberのようである。

    田中 この宿には母屋と蔵があり、それぞれ母屋には少女が二人、蔵には男の子が一人いると言われてる。
    豪雪の中現場には夕方に到着して、オーナーさんに案内されて母屋に通されるんだけど、中は雰囲気ありまくりで、囲炉裏など古いものと泊まり客が料理もできるようにと大きなキッチンもあって。一通りの説明を受けた後オーナーさんが出て行って……そこからの僕は、42歳にして子供のようにはしゃぎ出してしまいましてね。

    タニシ 生配信観てましたけど、あれは酷かった。

    田中 お酒も飲んでいることもあったやろうけど、後から考えたらあんなにはしゃいだのは自分でもおかしく思うなあ。もう夜中なんてフルチンで母屋を走ってたからね、まるで子供に取り憑かれたように。

    健太郎 それは確かに酷いですね。

    田中 その時の様子やねんけど、まずご飯を食べて夜になって、女の子二人がいる部屋に一人で神秘体験をするべく、入ります。
    雰囲気を作るために怪談をして、さらに呼び水となるよう呪いの人形チャーミーも連れて行きます。
    その部屋は100体ぐらいの人形が祀られてある異様な部屋。
    入るなり右の押し入れが気になった。後でオーナーさんに聞くと、泊まった人はよくそこが気になるって言うらしいねんけど。
    早い時間帯は特に何もなかったけど、深夜3時4時を回った頃、明らかに家鳴りではない音が何度も鳴り出した。僕は座敷童子が来てると思い、コンタクトをとった。「もしおられるなら音を鳴らしてください」と。
    すると、声を掛けたタイミングで二回ほどラップ音で答えてくれた。
    その後も朝5時6時まではしゃぎまくって、祀ってる人形を触り、チャーミーとともに人形劇を始めたりと、後から考えると無意識のうちに子供達と遊んでたんちゃうかなあと。

    子供部屋おじさん、子供の人形だらけの部屋で眠る。

    田中 日が昇り始めて疲れたので、部屋を出てみんながいる場所に戻り布団に入った。
    少しするとバーン!と木の扉を叩きつける音がしたんやけど、疲れてたので無視した。
    朝確認するとその場所だけ飾ってる折り鶴が落ちていた。もっと遊んで欲しかったのかもしれへんね。

    田中が就寝中、異音とともに、折り鶴が叩き落された……?

    健太郎 おお、ちゃんといろいろ起きてますね。

    田中 そうやろ。でもさらにその数日あと、Mさんという知らない方からメールをもらうねんけど、その内容がすごくて。

    「私は昔からオカルトなモノに興味があったり、心霊体験をしたりするのですが、昨日『この人に思いを伝えてくれ』という夢を見ました。
    その相手が、田中さんなのです。
    夢の内容は祭壇の置かれたような真四角の部屋で、黒髪ボブ、切れ長奥二重な可愛らしい十代後半女性と田中さんが性交する、しないで揉めていました。
    私はそれを俯瞰で見ていました。
    田中さんが『無理。駄目』と言うのに対して、女性が『好きだから一緒になりたいんだ』と。
    二人ともほぼ全裸に近い状態で、田中さんが否定しても、下半身が反応しかけたのを見て、埒が明かなくなった女性がそれを急に咥え愛撫を始めました。
    しかし、田中さんが『やっても無理。実体が無いから』と断ったところ、女性は急に私を見上げ、『体貸して』と言うんです。
    私は断りましたが、『じゃあ、私が本気だと伝えて。連れてってって伝えて』と言ったところで目が覚めました。
    変な夢を見たと思い二度寝すると、今度は私の日常を同僚がビデオカメラを撮っていて、それを夢の中で確認します。
    そこには私が映っていましたが、その顔は私ではあるのですが、先ほどの女性の特徴的な目になっていたんです。
    私は『あの女性は本気だ』と思いながら目覚めました。
    私は予知夢ではないのですが、昔から伝言を依頼される夢をよく見てて、それを話すと皆さん心当たりはあるようなんです。
    ちなみに夢の中で田中さんがいた部屋は、古びた和室で、何体ものお人形が囲んでいました。心当たりはないですか?」

    ……というもので。

    健太郎 すごい!
    タニシ また卑猥な夢ですね…

    田中 最後の言葉でゾッとしてんけど、まさに山形の座敷童子の宿の母屋の部屋だと。すぐ写真を送って確認してもらうと、「まさにその部屋です」って返ってきて。さらに「夢の女性は写真の風車の下の子だと思います」と。
    これを聞いてさらに怖いと思ってんけど、というのは、僕が人形劇をするとき、部屋に祀られている人形を選んでたんだけど、この人形だけ何故か異様に生気を感じられて、少し気味が悪かったから触るのをやめていたのよね。
    これを考えるとどうやら座敷童子に田中は好かれてしまったようで、もしかしたら今もついて来てるんちゃうかなあと。
    新年早々モテ話ですみません。

    健太郎 田中さん、人間以外によくモテますね。
    タニシ じゃあそれを踏まえて今年の抱負は……
    田中 “人に優しく”かな。
    タニシ 実体のある方にもモテますように。

    霊にモテるなら、”死なない”程度で。

    松原タニシ

    心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。

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