不死者にしてタイムトラベラー! 社交界の怪人サン・ジェルマン伯爵の謎/羽仁礼・ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、18世紀のフランスで“社交界の花形”としてもてはやされ、「不死の人」と噂された怪人物を取
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今、ある男性のタイムトラベラーが話題だ。 1957年から2006年、そして2050年へ2度にわたって時空を超越した彼はなんと、UFOによって未来へやってきたという。 信憑性の高い関係者の証言とともに、謎に包まれたタイムリープ・ストーリーを紹介しよう。 (初出:月刊『ムー』2023年9月号)
『ある日どこかで』という1980年のハリウッド映画をご存じだろうか? アメリカの複数の映画専門ソーシャルメディアでカルトムービーとしての認知度が高く、「タイムトラベル」をテーマにした作品だ。
最近はTikTokを中心に、タイムトラベラーを自称する多くの人たちがさまざまな種類の映像をアップしている。しかし、どの“作品”を見ても詳細不明であったり、詳細が記されていても詰めが甘かったりと、筆者としては信用に値するものはほぼ存在しないと思っている。
しかし、本稿で紹介する「セルゲイ・ポノマレンコ」という男性は、派手な動画で再生回数を稼ごうとする多くの自称タイムトラベラーとは、いろいろな意味で一線を画す存在であるようだ。なぜなら、彼が少なくとも2回にわたってタイムリープしている可能性があるからにほかならない。
彼は、1957年から2006年、さらには2050年へ飛んだという。一連の逸話の中で確認されているのは、ある人にとっては1950年代の終わり、またあるグループの人々にとっては2006年に突然、完全に姿を消していることだ。もしかしたら、彼は2023年の今も2050年の世界で生きているかもしれない。現在、判明している関係者の証言を、順を追って確認していこう。
2006年4月23日、突如、ウクライナの首都キーウにポノマレンコは現れた。彼の姿を見た人々は、かなりの違和感を覚えたに違いない。2006年にしてはあまりにもトラディショナル、いやクラシックな服装をしていたからだ。首から下げているカメラはだれが見ても古い形式のものだったが、新品が持つ独特な輝きを放っているのが奇妙だった。
ポノマレンコは、珍しい出で立ちの自分を取り囲む人々に、こう話を繰り返した。1932年6月16日にキエフ(現キーウ)で生まれたこと、趣味が写真であること、年齢は25歳であること。さらには、買ったばかりのカメラを持って、散歩しながら写真を撮っていたら、突然、意識を失っていつの間にかこの場にいたことを。
やがて、通報を受けた警官が現場へやってきた。警官から促され、彼は身分証明書を取りだした。確認すると、発行年月日はまだ旧ソ連が存在していた50年以上前のものだった。結局、ポノマレンコはその場で身柄を拘束。警察の施設に連行され、パブロ・クトリコフという医師によって問診と事情聴取が行われたのである。
当初は動揺していたポノマレンコだったが、次第に環境に慣れはじめると、饒舌にクトリコフ医師にさまざまな話をした。改めて、1932年6月16日キエフ生まれであることを伝えられたクトリコフ医師は、2006年であれば彼は73歳になっているはずだが、とても30歳以上には見えなかった。“あくまで満25歳だ”という主張は、あながちウソではないと受け取った。
どうやって2005年の世界に現れたのかを訊ねられると、ポノマレンコは「写真を撮りに家を出ただけだ」と繰り返した。しかし、ここで奇妙な話が出る。“ベルのような形状の物体”が空を飛んでいるのを見つけ、写真に撮ろうとしてシャッターを押した瞬間に意識が飛び、気がつくと2006年のキーウにいたというのだ。
そんな夢のような話だけではどうにもならない。警察はカメラに着目した。さらに詳しく話を聞くと同時にカメラを預かり、中のフィルムも現像することにした。
問診と事情聴取が続く中、警察はカメラとフィルムを徹底的に調べはじめた。ヴァディム・ポイズナーという写真の専門家とコンタクトを取り、現像した写真を見てもらいながら意見を聞くと、興味深い事実が明らかになった。ポノマレンコのカメラは、1970年代に製造中止になっており、2006年当時まで所有している人がいるとは考えにくく、しかも現在では、一般の流通経路では入手が困難な日本製のモデルであることも確認された。
フィルムには、身柄を拘束された当日と同じ服装のポノマレンコと、美しい女性が一緒に写っている写真があった。さらには、件のベル形の飛行物体の写真も含まれていた。
一連の事情聴取や写真を見るかぎり、ポノマレンコがウソをついているとは思えない。写真についてさまざまな質問をされても、ポノマレンコにとってはごく普通のスナップ写真でしかなく、それ以上話せることはない、との一点ばりだったという。
問診と事情聴取が終わると、ポノマレンコは収容されている部屋に戻った。廊下を歩く姿は、監視カメラの映像にも残っている。しかし、後になって看守が確認しにいくと姿が消えてしまっていたという。はたして、彼はこのときに一度過去に戻ってしまった、またはさらに未来に向けてタイムリープし
てしまったというのだろうか……。
実は、警察に1960年代のキーウで“セルゲイ”という名の男性が行方不明になったという記録が残っていた。だが、記録が見つかった時点で、ポノマレンコはすでに姿を消しており、同一人物かどうか確認が取れない。そこで警察は、ポノマレンコのスナップ写真に写っていた女性の捜索に当たった。
あらゆる手段を使って写真の女性とコンタクトをとることに成功した警察だったが、ここで新たな周辺情報が明らかになる。
彼女は写真に写っているのは自分であることを認め、ポノマレンコと恋仲であったことを認めた。証言によれば、1957年当時、交際期間中に数日間行方不明になったことがあったという。後に会ったときに理由を尋ねると、「留置所にいた」と話していたらしい。
その後、ポノマレンコは再び姿を消し、交際はそのまま自然消滅になってしまったという。しかし、しばらくたったある日、ポノマレンコから彼女のもとにサイン入りの写真が届いたという。写真にはキーウ中心部の高層ビル群が写っていて、裏に書かれたメッセージには彼が2050年の世界にいることが記されていたという。彼女の証言が事実であるなら、ポノマレンコは2050年の世界にタイムリープし、そこで写真を撮って彼女に送ったことになるのだ。
原稿を執筆中の今、この写真に対して絶対的な真贋判定はまだつけられていない。ただ、背景にエンパイアステートビルにそっくりな建物が含まれているため、加工された写真ではないかという見立てもある。そう主張しているのはジョー・スコットというYouTuberだ。だが、ガールフレンドがウソをつく必要性がまったくないため、真実を話しているに違いないと指摘する者もいる。
もうひとつ気になるのは「ベル形の飛行物体」だ。ポノマレンコは、この物体をファインダーに収めてシャッターを切った瞬間、すべてが変わったと語っている。この物体を見て、何を思い浮かべるだろうか? 第2次世界大戦中、ナチスドイツが開発していたUFO「ディグロッケ」ではないだろうか。ならば、ポノマレンコが複数回にわたってタイムリープした可能性を説明するための手がかりとなるかもしれない。
ここで改めてポノマレンコの動きをまとめてみよう。ポノマレンコは1957年に姿を消し、2006年のキーウを訪れ、その後1957年に戻ってガールフレンドに会い、しばらくして2050年にタイムリープし、ガールフレンドに写真を送った。
現在もタイムリープを繰り返しているのであれば、ポノマレンコは今も生きつづけている可能性もある。だが、事件には絶対的な裏づけとなる物証が存在しない。本人は1957年からも2006年からも姿を消してしまった。カメラに入っていたフィルムの写真もコピーこそ存在するが、これまでオリジナルが見つかったこともない。クトリコフ医師も、さらには画像解析を行ったヴァディム・ポイズナーの所在も確認できないままだ。だが、ガールフレンドの所在は明らかになっており、2020年に行われたとされるインタビュー映像が存在している。
戦乱状態にある今のウクライナには、行方不明者が数えきれないほどいる。絶え間ないミサイル攻撃により、公的な記録も大部分が破壊されている。ポノマレンコの話を論破しようと試みる者も少なくないだろうが、そのための論拠を捜しだすのはきわめて困難な状態が続いている。しばらくの間、こうした試みは不可能だろう。
さて、ここで脱稿直前に気になる情報を見つけた。「INews」というサイトに、「セルゲイ事件はウクライナだけで認識されている事例なのか」という記事が掲載されている。
この記事によれば、ポノマレンコ事件のストーリーラインは地元の制作会社が作った『エイリアンズ』というタイトルのSFドラマシリーズに酷似していると、多くの人々が指摘している。このシリーズの「タイムトラベラー」というドキュメンタリータッチのエピソードのストーリー展開がそっくりだというのだ。
筆者としては、まったく予期していなかった情報としかいいようがない。説得力が感じられ、しかも結果的に過去から未来に2回もタイムリープするというきわめて珍しいパターンのタイムトラベラー事例だ。この事件の真相は、テレビシリーズのエピソードがクリエイターの手を離れて拡散し、抑え込めないほど増殖してしまったということなのだろうか。
いや、ポノマレンコ事件をもとにテレビシリーズが作られたという可能性も否定はできないだろう。まさに都市伝説めいた展開を見せている。
世界中で知られる事例なので、筆者が存在を知らないデータもまだあるだろう。よって筆者は、この原稿においては事件に対するいっさいの判断を控えたい。
まずは、本当に存在するのなら「タイムトラベラー」の映像を確認し、その内容をネット上で紹介されている情報と照らし合わせることから始めたいと思っている。
彼が生きているのなら、今、自分が主役の騒動を2050年の世界から傍観しているだろう。再び現代にタイムリープし、真実を語ってくれる日が来ることを願いたい。
(初出:月刊「ムー」2023年9月号)
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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