「馬人間」怪談:ナイジェリアで目撃された半人半獣のUMA/西浦和也・UMA怪談

文・イラスト=西浦和也 協力:吉田猛々(ナナフシギ)

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    無気味な姿形の正体不明の謎の生き物UMA。UMAと遭遇し、恐怖の体験をした人は多い。忘れようにも忘れられない、そんな恐怖体験の数々を紹介しよう。

    工場で何かが視界の端を横切った

     ナイジェリア出身のAさんはすでに30年以上日本に住んでいる。最近はナイジェリア料理の店を開いていて、慣れた日本語で接客をしている。 
     以前そのお店を訪ねたとき、Aさんが来日する前の子供のころ、叔父さんに聞いた不思議な話があるといって、こんな話をしてくれた。

     当時Aさんの叔父さんは、知り合いの工場を手伝っていた。急激な工業化もあって、工場の人手が足りないらしく、昼間だけの操業ではとても商品の供給が追いつかない。そこでAさんが頼まれたのは工場での夜の仕事だった。
     当然、夜の仕事は割がいいのだが、夕方昼間の人間から仕事を引き継ぎ、明るくなるまで工場の機械を回す。そして明け方自宅に帰って睡眠をとり、また夜に工場で働く、という繰り返しで、それまで気ままに生きていた叔父さんにとっては、けっこう苦痛だったそうだ。
     ある夜、いつものように工場で働いていると、材料が足りないので少し離れた場所にある倉庫から材料を持ってきてほしいと同僚から頼まれた。
     叔父さんは近くにあった懐中電灯を手に取ると、すぐに工場を出て倉庫へ向かった。工場の敷地は広く、建物の外は夜になると真っ暗になり足元も暗くておぼつかない。

    「足元に気をつけないと……」
     このあたりには蛇も多く、時折蛇の被害も報告されている。暗闇でうっかり蛇を踏んでしまえば大事になってしまう。懐中電灯で足元を照らしながら歩いていると、突然何かが視界の端を横切った。こんな夜中に工場の敷地にいるのはわずか数人。きっと知り合いのだれかだろうと思い、そちらの方向に懐中電灯を向けたがだれもいない。

     気のせいだと思った叔父さんはそのまま倉庫へと向かった。

    泥棒の正体は下半身が馬になった男だった!

     頼まれた部品を倉庫の中で捜していると、突然倉庫の周りで何かの気配を感じた。
    「おい、だれかいるのか?」
     外に向かって声をかけたが、返事が返ってくる様子がない。念のためもう一度声をかけたが、やはり同様に返事はない。
    「もしかして泥棒か?」
     真夜中、材料を狙って工場の中に忍び込んでくる者も時折いる。叔父さんは身構えると倉庫の周りに聞き耳を立てた。

     ジャリジャリジャリジャリ……。
     確かに何かが倉庫の周りを歩いている。それも人間の足音ではなく、四足の生き物のようだ。おそらくだれかが馬にでもまたがっているのだろう。 
     叔父さんは近くにあったパイプを手に取ると、窓に近づきそっと外を覗いた。

     ジャリジャリジャリジャリ……。
     足音は相変わらず倉庫の周りを回っている。きっと自分が倉庫から出たら、中の材料を持って逃げようとタイミングを計っているに違いない。 
     そう思った叔父さんは意を決すると、「泥棒め! やるならやるぞ!」と叫びながらドアから外へ飛びだした。

     次の瞬間見えたのは、月明かりに照らされた一頭の馬にまたがる男の姿だった。ところが目を凝らしてみると、馬にまたがっているように見えたのは、上半身が男で下半身が馬の見たこともない生き物。それが叔父さんを見つめていた。

     バカバカバカッ。
     大きく音を立て、生き物は前足を蹴り上げると、踵を返して叔父さんの前から走り去った。
     突然のことにびっくりした叔父さんは全身から力が抜け、その場にへたり込んでしまったという。

     後日、Aさんが調べてみたところ、叔父さんが見たのはナイジェリアで目撃される「馬男」というもので、夕方や夜中、明け方に現れ、女性を見つけると執拗に追いかけるとされている。
     そのため現地の行政局によって、夜間の女性の外出が禁止される条例が発布されたこともあったという。
    「叔父さんは小さくて小柄だったから、暗い中だと女性に見えたのかもしれないね……」 
     この話をしてくれたAさんはそういって笑った。

    西浦和也

    不思議&怪談蒐集家。実話怪談の調査・考察を各種メディアを通じて発信。心霊番組「北野誠のおまえら行くな。」や怪談トークライブ、自身のYouTubeなどで活動する。

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