道院紅卍字会の扶乩と岡本天明ーー「日月神示」誕生の謎/不二龍彦
戦前から戦後の初期、日本の秘教的宗教団体に大きな影響を与えた結社―—それが、道院紅卍字(こうまんじ)会であった。 この結社はさまざまな霊的巨人たちを引き寄せ、結果、日本における霊界の革命が起こったとも
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地球は頭蓋骨だった! 頭蓋骨は大小の骨が組み合わさってできているが、地球もまたプレートが組み合わさってできている。その結合が類似しているというのだが……。
10月某日、フェイスブックのタイムラインに地球のプレート図と頭蓋骨の各部名称とともに流れてきたのが以下の投稿である。引用する。
「地球の地殻についてのページで目が止まりました。…(中略)…頭蓋骨の配置と同じなんです。凄く似ています。配置がほぼ同じです。
んなばかな…と思いますよね、でもよかったらご自身でも確認してみてさいね。ユーラシアプレートが、前頭骨。北アメリカプレートが、頭頂骨。太平洋プレートが、側頭骨。フィリピンプレートが、蝶形骨。…(中略)…いくつもの大きなプレートに挟まれている場所、それがここ日本です。仮に同じ配置に見える頭蓋骨ならば、その場
所はどこか? と確認してみると、蝶形骨のところです。蝶形骨は『こめかみ』のところですね。確かに『こめかみ』は押すと気持ちがいい、ツボがある場所です。え……ツボ同じ、リンクしてる。でもねぇ、、頭蓋骨には蝶形骨が左右に2カ所あります。…(中略)…中東です。すごい、ユダヤの土地だよ、イスラエルがある場所になっちゃいました」
なんだそれは?
頭蓋骨の構造が地球の地殻と同じ! こんなことは今までだれひとり考えたことがなかっただろう。
そんなバカなと地球儀を取り出すと、たしかに似ている。人間の頭の骨は28個だが、脳を支えるのは後頭骨、頭頂骨(左右)、側頭骨(左右)、前頭骨、蝶形骨(2個あるように見えるが、顔の奥でつながっているので1個)および篩骨の8個(鼻から下のあごの部分は顔面骨になる)。顔の上半分までを頭と考えれば、そこに上顎骨と鼻骨(左右)と涙骨(左右)が加わり、計13個。
地球上の大きなプレートは12〜15種あり、ユーラシアプレート、北アメリカプレート、南アメリカプレート、太平洋プレート、ココスプレート、ナスカプレート、カリブプレート、アフリカプレート、南極プレート、アラビアプレート、インド・オーストラリアプレート(インドプレートとオーストラリアプレートに分けて考えることも)、フィリピン海プレートの12種。これにスコシアプレートとファンデフカプレートを加えることも。
互いの数もかなり近い。
これは大発見だとフェイスブックのいいねの数はみるみる伸びて1000を超えた。フェイスブックでいいねが1000を超えるのは非常事態である。ツイッターと違い、200〜300以上でバズったことになる。それが1000越えだ。フェイスブックをやっている整体師や思想家、歴史マニアがどっと集まり、祭り状態になった。
書き込んだ島田さんに話を聞いた。
島田さんは農家を営むごく普通の主婦。普通でないとすれば、建築関係の仕事をしていたのが、夫婦で脱サラして農家へ転職したことぐらいか。もう1点はフォッサマグナが好きで地球の構造を知るのが趣味だったこと。
「フォッサマグナって不思議じゃないですか? なんであんなところで曲がって段差ができているんだろうと思って、それで地殻のことにも興味があったんです」
あるとき、子どもがテスト勉強で地理の教科書を広げていた。
「あれ? と思ったんですね。フォッサマグナを調べるのに日本近海のプレートはよく見ていたんですが、世界地図でプレートを見たことがなかったんですね」
教科書に色分けして載っていたプレートに目が寄せられた。
「地球全体ではプレートはこういう配置になっているんだなと思ったんですが、何か引っかかったんです。何かわからなかったんですが、すごく気になった」
ずっと考えているうちにふと島田さんは思ったそうだ。
(どこかで同じものを見たことがある)
「ピンときたのがツボ。接骨院に行ったときに頭のツボを教えてもらったことがあって、頭蓋骨にツボがあるなら地球にもツボがあって、それがフォッサマグナのようなプレートのぶつかったところじゃないか? と気がついたんですね」
発想の飛躍ではあるが、ときとして飛躍が正解にたどり着くことがある。
島田さんは頭蓋骨を検索、骨の位置と地球のプレートの位置を見比べてみた。
「どの図を開いても、世界地図で見たプレートの位置と頭蓋骨の位置がよく似ているんです。もちろんまったく同じではありませんが、プレートの重なり合った感じが頭蓋骨の組み合わせとそっくりなんです」
嘘でしょ!
島田さんは何回も頭蓋骨の図とプレートの載った地図とを見比べ、地球儀まで引っぱり出した。
いっしょじゃん!
当然だが、まるっきりいっしょであるわけがない。いっしょではないが、違うとはとてもいえない。非常によく似ている。きちんとプレートと骨が対応している。
「それでフォッサマグナも見てみました。フォッサマグナはプレートがいくつもぶつかっている場所なので、もし地球が頭蓋骨なら、ちょうどこめかみのあたりになります。地球儀で見ると日本の上にユーラシアプレートがあり、日本をこめかみとすると、側頭部にあたる部分に太平洋プレートがあり、後頭部に北アメリカプレートが当てはまります」
こめかみは左右にある。地球は丸いので同じ緯度で地球の反対側に日本のようにプレートがいくつも重なっている場所があるはずだ。
ユーラシア大陸の反対側、やや緯度が下がる場所にアラビアプレートを中心にアフリカプレート、ユーラシアプレート、インドプレートがひしめき合っていた。
「サウジアラビア近辺だったので、面白いなあと思って地球儀を見て、ゾクッとしました」
イスラエルだ。
インドプレートを顔の中心=鼻として見立てれば、ユーラシア大陸の左右(=東西)に、日本とイスラエルがある!
骨でいえば、蝶形骨、蝶の羽根のように目の裏側からこめかみへと伸びた骨だ。
「日本人とユダヤの人たちがつながっているという話は知っていました。それぞれの国が地球の左右でほぼ同じ位置にある」
骨までつながっているとは。日ユ同祖論もビックリである。
「もともとフォッサマグナをツボだと思ったところから見つけたことなので、ツボの名前を見たら、頭の有名なツボで『太陽』という名前だったんです」
こめかみにあるツボの名前は「太陽」。メソポタミア文明を築いたシュメール人は太陽信仰の一種であるミトラ教を信仰していた。神紋は菊紋。天皇家と同じである。ヤハウェを絶対神とするユダヤ教も、原型はミトラ教ではないかとも考えられている。日本も神道は太陽信仰の地だ。
東西の太陽信仰の地が人間のこめかみにある!
偶然? もっとある。
「インドプレートを上顎骨だとすると鼻、鼻骨にあたるのがヒマラヤ山脈でエベレストですよね」
地図を見るとたしかにそうなっている。
ヒマラヤ山脈がちょうど眉の真下あたりを東西に延びる格好だ。ということは眉間のツボ、松果体の延長上にあって第三の目といわれる場所がチベット! ツボの名前を調べたら、「印堂」! そんなバカなことがあるのか? チベットの地下にあるとされる地底王国シャンバラが松果体に相当するのか?
後頭部に相当する北アメリカプレートは南アメリカとつながるメキシコ半島あたりでカリブプレートやナスカプレート、南アメリカプレートがぶつかっている。まさにツボ。頭蓋骨ならちょうど盆の窪、延髄の上のへこみの部分だ。瘂門というツボになる。こめかみの太陽と後頭部の瘂門は頭痛を治すツボとして知られている。地球の健康をこの3か所が守っている?
もしツボの働きまで地球とリンクするのであれば、この3か所は非常に重要な土地ということだ。
北極には百会、頭頂のツボが相当する。百会の真下は松果体であり、漢方医学では全身の気が循環する出入り口とされる。頭蓋骨が地球と対応するなら、バード少将の体験した北極の下にある異界は本当にあるのか。
「どういうことなんでしょう? 粗を見つけようとしたらたくさん見つかりますし、でも妄想が止まらなくなって仕事になりません」
それにしてもこれは……大発見だ
頭蓋骨と地球のプレートが似ているという話で、すぐに頭に浮かぶのは大本教の出口王仁三郎(幕末から明治にかけての国学者、大石凝真素美という説も)の唱えた日本雛形論だ。
出口王仁三郎は『いろは神歌』において、
「日出る国の日ひの本もとは、全く世界の雛形ぞ。神倭磐余の君が大和なる、火々真の岡に登り坐、蜻蛉の臀甞せる国と、詔せ給ふも理や。我九州は亜弗利加に、北海道は北米に。台湾島は南米に四国の島は濠州に、我本州は広くして、欧亜大陸其儘の、地形を止むるも千早振、神代の古き昔より、深き神誓の在すなり」(『神霊界』大正7年1月号)
と書いている。
北海道は北アメリカ、本州はユーラシア大陸、四国はオーストラリア、九州は北アメリカ、南米は台湾(日清戦争後、台湾が日本領となったのは明治28年のこと。『いろは神歌』が書かれた大正時代には台湾は日本領として扱われていた)。頭蓋骨と同じく、粗を見つけようと思えばいくらでも見つけられるが、これは日本が4つの大きな島からなる特殊な形をしているから成り立つ話であり、他の国にこうした見立てがあるのかは寡聞にして知らない。
では日本が世界の雛形だったらどうだというのか? 日本を世界と見立てれば、日本で起きることは世界へ影響する。すなわち日本が乱れれば世界が乱れ、日本が厄災に見舞われれば世界を厄災が見舞う。だからこそ日本人は身を正し、日々の穢れを祓いながら神ながらの道(神の決めた生き方)を生きよというのだ。
なぜそのような人体と世界のつながりが起きるのかといえば、この世界の裏には霊的な仕組みがあって万物はつながり、影響し合うからだ。
これは古神道の見方であり、現在まで脈々として陰に日なたに伝えられている。
神道では、神も私たちも産むす霊ひという生命の源から生まれたとする。国家神道以降、古神道の世界観まで否定されてしまい、私たちは忘れているが、天皇家が天照大神の直系である一方で、私たち一般庶民も世界を作った造化三神の血を引いているのだ。人間は神々の末裔であり、すべては内に神性を宿している。
古神道では
「頭の円きは天の象なり 天に七星有が故に頭に七穴の霊有り(中略)天人唯一なることを悟らば 天神地祇八百万の神は皆悉く身体に充満し玉ふ」
と『出雲神伝邪気五臓六腑加持神秘伝』にあるそうだ(参考:大宮司朗著『古神道の身体秘伝』ビイング・ネット・プレス)。
神社のしめ縄は蛇の交接に見立てられ、生命力で邪気を祓うとした。縄の結び=むすびは産霊=むすひの見立てだ。
同様に古神道の感覚でいえば、頭蓋骨とプレートの類似は見立てである。頭蓋骨の接合はプレートのぶつかり合う場所=ツボだ。
人間は宇宙の雛形であるとともに地球の雛形でもあるわけだ。
宇宙と人間は本質において同じであり、万物もまた等しい。これは日本に限らず、古代人に共通する世界観だ。
古代ギリシアにはプラトンの『パルメニデス』に説かれた「一なるもの」(ト・ヘン=to hen)、万物は一なるものから分かれたとする考え方がある。これは古神道の産霊や分け御霊の考え方に近い。
手相も占星術も人間と宇宙が対応関係にある前提で体系づけられている。
手相占いで手のひらの各部名称に金星や土星など太陽系の惑星名がつけられているのは、手のひらを宇宙と見立てているからだ。隠された神のメッセージを読み解き、神から授かった自分の命の行く末を知るのが手相占いの本質だろう。同様に占星術も、人間は生まれたときの星の運行に従って禍福を受け取ると考える。科学の常識で考えれば、星の運行が何の力で人間に影響するのかと問い詰められるが、オカルトのように人間の中に小さな宇宙が宿り、人間を通じて神がよき世界を実現すると考えれば、星の運行と人間の運命は霊的な仕組みで合致する。
錬金術で秘伝として扱われるエメラルド・タブレットには錬金術の世界観が書かれている。自ら錬金術師を名乗った物理学者のニュートンもエメラルド・タブレットを翻訳していたという。
そこにはこう書かれていた。
「(前略)下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとくであり、それは唯一のものの奇蹟を果たすためである。万象は一者の観照によって一者に由って起こり来たれるのであるから、万象は一つのものから適応によって生じたのである(以下略)」(ウィキペディア「エメラルド・タブレット」の項目より引用)
すべてが同じ原理で動いているからこそ、水銀は金に変わると考えられたのだ。同じ一なるものがある条件では水銀として表出し、別の条件で金となるなら、その条件さえわかれば水銀は金に変えられるだろう。
シュタイナー教育で知られるルドルフ・シュタイナーは人智学を興し、古代の叡智を現代に復興しようとした。人間の意識の奥底には霊的な意識があり、瞑想を通じて得る超感覚によって、霊的世界と一体化し、世界を進化させるとした。ユダヤ教の有名なシンボル、生命の樹=セフィロトの樹は万物のエネルギーの流れをシンボライズしたもので、アダム・カドモン(聖書に出てくる最初の人間アダムを、ユダヤ教ではアダム・カドモンと呼ぶ)はセフィロトの樹と同一視される。
このような魔術的世界観に日本の一個人が直感的にたどり着いたことは驚嘆すべきことだ。まさにセレンディピティ(幸運をもたらす直感)である。
開業医や古武道をされている方からもメールが来ました、と島田さん。
「興味を持たれる方がとても多いんだと思いました。それぞれの各分野の方に響いたみたいです」
島田さんの発見は日本人の心のツボを押してしまったようだ。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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