崖に向かって、押しつづける者とは…… ヤースー「喜屋武岬の霊史継承」/吉田悠軌・怪談連鎖
今もなお戦争の傷跡を色濃く残す島、沖縄。激戦地跡で、ユタの血を引く霊感芸人が体験した怪異とは。その記憶は世代を超えて受け継がれ、連鎖していく——。
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2019年10月18日、ニューヨークで「世界的なパンデミックを警告する」会議が行われていた。シミュレーションされた疫病禍とその影響をなぞるように、2019年12月から世界はコロナ禍に覆われた。「イベント201」がある種の予言だとすれば、この先に人類を脅かすものについても、そこに秘められているはずだ。
世界中の誰もが、もういい加減うんざりしている。コンサートや演劇などのパフォーミングアーツ、スポーツイベント、そして飲み会はもちろん会食まで、「あるべき形でできない状態」はいつまで続くのか。
日本で新型コロナウイルスの最初の感染例が確認されたのは2020年1月15日。以来状況は加速度的に悪化し、欧米諸国ほどではないものの、何らかの行動制限が日常生活の一部になった。もはや遠い昔の出来事に感じられるダイヤモンドプリンセス号の一件が始まったのが2月初旬。聞き飽きた「正念場」という言葉が政府関係者から出始めたのが3月。目に見えないものに対する緊張感を強いられる日常が始まってすでに1年以上。日本でもワクチン接種が開始されるが、それでコロナ禍完全収束までのロードマップが明らかな形で示されるわけでは決してない。
武漢市で原因不明の肺炎の発生が報告されたのは2019年末だ。その約2か月前の10月18日、ニューヨークで「イベント201」という会議が開催された。
主催者として名を連ねたのはジョンズ・ホプキンス大学、世界経済フォーラム、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団だ。「イベント201」のウェブサイトには、高レベルのパンデミック対策会議というコンセプトがうたわれている。目的は「厳しいパンデミックにおける大規模な経済的・社会的影響を最小限に食い止める」方法を模索することだ。声明文として、以下のような文章が示されている。
“近年、エピデミック事例の発生が世界各地で増加している。具体的な数字を挙げるなら、年平均で200事例に上る。増加傾向にあるエピデミック事例は健康被害だけではなく、経済及び社会インフラに大きな影響をもたらし、パンデミックという表現がまだ当てはまらない現状においても、それぞれのエピデミック事例を抑え切れているとは言えないのが事実である。世界各地で散発的に生じているエピデミック事例が世界規模のパンデミックに発展するのは時間の問題であるとする専門家は多い。パンデミックが発生すれば世界各国に壊滅的な被害が出るだろう。われわれが「イベント201」と呼ぶ壊滅的なパンデミック事例に対処するためには、産業界と各国政府、そして主要国際機関による信頼できる協力体制が不可欠である”
イベント201というのは、壊滅的なパンデミック事例を意味する言葉なのだ。
主な出席者の顔ぶれを見てみよう。ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターのアニタ・シセロ副所長、ジョンソン&ジョンソン社のエイドリアン・トーマス副社長、国連基金の上席副総裁ソフィア・ボルヘス、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団世界発展プログラムの責任者クリス・イライアス、バイデン政権の国家情報長官に就任したアブリル・ヘインズ、アメリカ保健指標評価研究所のジェーン・ホルトン、アメリカCDCのスティーブン・レッド、中国CDCのジョージ・ガオ、アメリカの放送局NBCユニバーサルの重役ハスティ・タギなど、政府機構から製薬会社、国連、そしてメディアを網羅する形で16人のメンバーが揃っていた。
「イベント201」のシナリオはウェブ上でも公開されている。大切な情報なので、内容を見ておきたい。
“イベント201は、コウモリから豚、そして人間へと伝染し、やがて人間同士で感染が蔓延していく人畜共通新型コロナウイルスのパンデミックのシミュレーションである。このウイルスによってもたらされる病原体と症状はSARSによく似ているが、軽度症状の感染者に起因する市中感染力はより強い。
ブラジルの養豚場から始まる感染はやがて低所得者が多く住む密集住環境で広がり、まず南米でエピデミックが発生し、それがあっという間にポルトガルからアメリカ合衆国、そして中国へと広がる。媒体となるのは旅客機の乗客たちである。蔓延の初期段階では何とか抑え込みに成功する国家もあるだろうが、その後も感染者数が増え続け、最終的には蔓延を抑え込むことができる国家はなくなる。
蔓延最初の年におけるワクチンの開発は不可能で、抗ウイルス薬が開発されるという話もあるが、それだけで感染拡大を抑えるまでの実効性は期待できない。蔓延の初期から感染者数と死者数は加速度的に増加し続ける中、社会的・経済的影響も大きく、厳しくなっていく。
このシナリオはパンデミック発生の18カ月後、死者数が6500万人に達した時点で終わる。この頃になると、感染する可能性がある人口の絶対数が徐々に減少し、感染のスピードも落ち始める。パンデミックは有効なワクチンが開発されるまで、あるいは世界人口の80~90パーセントが耐性を得るまで続くだろう。その後は小児性の風土病に変化すると思われる”
あらためてことわっておくが、この文章が公表されたのは2019年10月半ばだ。
日本の主流派マスコミではほとんど触れられることがなかった「イベント201」だが、2020年6月16日にNHKBSで『予期されていたパンデミック』という番組が放送されている。「イベント201」を立体的に紹介したこの番組の中で強調されたのは、パンデミックのさなかでの経済活動持続の重要性と難しさだ。まさに現在の状況を如実に示していたと言わざるを得ない。
減少傾向を見せない感染者数、ロックダウンによる経済活動の停滞がもたらす失業とそれに伴う生活苦で人々のストレスレベルは頂点に達する。こうした状態が1年以上続くと、経済インフラが脆弱な国家の機能は停止してしまう。悪影響は周辺諸国にも広がり、地域的に国家の連鎖倒産のような事態まで起きかねない。
ウイルスの発生源こそ違うものの、リアリティも会議で語られた通りに進んでいると言って差し支えないだろう。ただ、発生から2年目に入った現時点で実際に起きていないことがひとつある。それは、前回の記事で詳しく紹介した「デジタル・パンデミック」だ。ざっと見直しておこう。
デジタル・パンデミックは、コロナ禍のさなかに起きる世界規模でのコンピューターネットワークのダウンを意味する。かなり前から大きな懸念として認識され、議論が深められてきた。2020年7月に開催された世界経済フォーラムでも正式な議題として取り上げられ、究極的にはコロナ禍よりも深刻な現象になるというコンセンサスが構築された。世界経済フォーラム創設者のクラウス・シュワブ氏は次のように述べている。
「ここにいる人間すべてが理解していることだろうが、大規模なサイバー攻撃が各国の電力供給や交通網、医療サービス、そして社会全体の動きを止めるという恐ろしいシナリオが存在する。しかしどうだろう。理解はしているが十分な意識を向けていないというのが実情ではないだろうか。大規模サイバー攻撃は、新型コロナウイルスがかすむような甚大な影響をもたらすだろう」
この発表からさかのぼること約9か月。イベント201においても、『パンデミックにおけるコミュニケーション』というタイトルが付けられた次のような内容の声明が発表されている。
“公衆衛生関連情報に虚偽のメッセージが盛り込まれ、真実が歪められる状態が散見される。こうした虚偽のメッセージはさまざまなチャンネルを通じて拡散し、現在ではテレビを始めとして、各種のウェブソースも含まれる。特にソーシャルメディアの影響力は強いと言える。世界的傾向として、若年層のSNSに対する依存が極端に高いという事実も示しておかなければならない”
核となる部分はここからだ。
“いわゆるディスインフォメーション工作は、政治の世界においては広く認識されている。それは公衆衛生の世界でも何ら変わらない。2018年の秋には、ワクチンの安全性に関する偽情報が組織的な方法で流布された。この種のディスインフォメーション工作は、エボラ出血熱のアウトブレイク時に起きた事例が好例となるだろう。公衆衛生に関する危機の中で、偽情報は大きな脅威となる。現時点では、ディスインフォメーション工作に対する効果的な対策はきわめて限られていると言わざるを得ない。各種ソーシャルメディア・プラットフォームはアルゴリズムを変化させて偽情報の拡散を止めようと試みたようだが、抜本的な解決までには至らなかった”
声明の文章は、次のような文言で締められている。
“ミスインフォメーションおよびディスインフォメーションは、公衆衛生の緊急事態において深刻な脅威となる。しかし残念ながら、偽情報の流布に対抗する有効的な手法は限られている”
中国のように政府の権限で既存のSNSの使用禁止が決定されたり、国内外からインターネットのアクセスを不可能にしたりといった強権的な手法が許されるなら、有効な手段を考えることもできるだろう。しかし世界の大多数の国家では事実上不可能だ。
前述の通り「イベント201」の席上で語られたひとつひとつの議題は、デジタル・パンデミックを除いて精緻なシナリオのようにリアルな形で進行している。ならば、現時点でひとつだけ現実化していないネットワークのダウンもいずれは起きるということなのだろうか。
イベント201はシミュレーションという体裁で討議されたものだが、実際はむしろ“警告”というニュアンスが色濃く出されていたのかもしれない。ならば、警告を発しているのは誰なのか。そしてその意図は何なのか。すべては、たとえばイルミナティカードを媒体として示される予言のようなものなのか。
言葉を変えよう。イベント201の本質的な性格がシミュレーション以上の「ものごとを筋書き通りに実行していくため」に提示されたものだったとしたら…。より具体的に言うなら、ネットインフラのあるべき姿を止めながら偽情報を意図的に流そうと画策する者/グループが存在しているとしたら…。
その目的を探るためのキーワードのひとつとして、“グレート・リセット”というコンセプトが挙げられる。ヒントは、2020年6月3日に行われた世界経済フォーラムに見出すことができる。
2020年6月3日、スイスのジュネーブで行われた世界経済フォーラム席上で、2021年1月に行われる年次総会のテーマが「グレート・リセット」になることが発表された。しかし8月26日になって、会議の開催そのものが初夏に延期されることになっている。
イギリスのチャールズ皇太子をはじめとする世界各国のリーダーたちのコンセンサスとなっているグレート・リセットとは何か。
ごく簡単に定義するなら、「資本主義をリセットして持続可能な社会・経済体制を構築する」プロセスということになる。
世界経済フォーラムの設立者クラウス・シュワブはグレート・リセットを議題にする理由を述べたビデオを公開した。内容は、地球温暖化問題およびCO2削減問題をフックにして、世界経済の再構築を訴えるというものだった。さらには、世界経済フォーラムという機構の立ち位置を端的に示す意見として、コロナ禍をグレート・リセットの最大のチャンスにするというニュアンスの声明が発表されたのだ。文脈から見る限り、コロナ禍とそれがもたらす経済崩壊は含み済みだったように感じられる。
こう考えると、イベント201はシミュレーションではなく警告だったという可能性がより高まるのではないだろうか。
世界経済フォーラムがすべてのシナリオを書き、それに従って計画を着々と進めているとは言わない。ただ、世界的なトレンドの方向性を決定づけていくものの存在が見え隠れしてはいないだろうか。ある人はそれをイルミナティと呼ぶかもしれない。別の人はビルダーバーグ会議と呼ぶかもしれない。さらには、国連のダークサイドと主張する人もいるだろう。一方、そういう見方に冷ややかな視線を向ける人たちも少なくない。いや、そういう人たちこそが大部分と言うほうが事実に近い。
この原稿の目的は、実際に起きている事象をリストすることにある。だから、結論めいたものを押し付けて終わろうとは思っていない。ただ、少なくとも日本国内でイベント201について十分な報道がされていなかったのは事実だ。それに意図的な何かを感じ取るか、それともそのまま流すか。判断に必要な要素は、すでにすべてが示されているのかもしれない。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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