量子もつれがわかる!「量子テレポーテーションのゆくえ」/ムー民のためのブックガイド
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ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 【そうはちぼん】に続く〝宇宙3部作〟の第二弾! 〝UFO感のある〟【かっと石】と黄金の鶏の伝承から補遺々々します。
前回は石川県の羽咋周辺に伝わる【そうはちぼん】をご紹介いたしました。近年、UFOではないかと話題になった怪火です。怪火は正体不明の火。それが飛んでいるところを目撃されていたのならば、未確認飛行物体――UFOという認識で間違ってはいないでしょう。
石川県には【そうはちぼん】の他にも、UFO感のある伝説があります。鹿島郡熊木の二の谷にあった【かっと石】など、まさに「地球外から来た乗り物」といってよいでしょう。これは高さ1丈、幅7尺ばかりの巨石で、実に奇妙ないい伝えがあるのです。
その昔、清三郎というお爺さんがおりました。この清三郎のもとに毎夜、神様から次のようなお告げがありました。
「二の谷の、かっと石までひとりでこい」
二の谷は山の奥。お年寄りひとりで真夜中に行くのは、たいへん心細いです。しかし、神様から「ひとりでこい」といわれていますので、だれかを誘うわけにもいきません。
しかたがなく、マサカリを持って、ひとりで向かいます。
二の谷へやってきた清三郎。山を分け入って、【かっと石】を見つけます。近づこうとしますと突然、石から黄金の鶏が飛びだしました。石の上に飛び立って、ケケッコと鳴きます。
すると、「カッ」と音がし、石は閉じてしまったそうです。
【かっと石】は『石川県鹿島郡誌』にあるお話です。
「カッと音がして石が閉じた」ということは、石が開いて、その中から黄金の鶏が出てきたということでしょう。
黄金に輝く生物を中に閉じ込めた、開いて閉まる石。
この【かっと石】、本当にただの「石」だったのでしょうか?
石に見せかけた、黄金の鶏の乗り物だったのでは? もしそうであれば、黄金の鶏は異星からやってきた未知の生物――と、いくらでもSF的な想像をふくらませることができますが、「異星からきた生物」という点は、あながち間違ってもいないのです。
黄金の鶏――いわゆる【金鶏(きんけい)】について、中国の字典『祖庭事苑』五巻「懐禅師前録」に数行の短い説明があります。それによると、これは天上の「金鶏星」に住む生き物で、この鶏が鳴いて夜明けを告げると、それに応じて多くの鶏が鳴くのだといいます。朝の「コケコッコー」は、この金鶏の合図により、全国で一斉に発されているものなのです。
また、財宝を埋めた場所で金鶏が鳴き声を発するという伝説も日本の各地にあります。これについてはいずれ、金鶏伝説だけでまとめたいと思います。
この奇妙な【かっと石】伝説は、「日本の民話」シリーズ『加賀・能登の民話』で、次のように再話されております。
昔、熊木の横田に清三郎という臆病な性格の爺さんがおりました。
彼は毎晩、不思議な夢を見ました。真夜中、枕元に神様が現れ、こう促してくるのです。
「今のうちに早く、二の谷の、かっと石までひとりで来なさい」
こんな夜中にひとりでこいとは、臆病な清三郎にはあまりに酷な話です。ですが、神様はしきりに清三郎を急き立てるのです。
ある晩、清三郎は神様に尋ねてみました。
「かっと石とは、どんな石なのでしょうか」
「二の谷までくればわかる」
「ひとりで行かなければダメなのですか?」
「そうだ」
翌日、清三郎は立派なマサカリを用意し、その晩、二の谷へと出かけました。真っ暗な山の中、一の谷を越え、二の谷の川のせせらぎが聞こえる所までやってきます。どこに石はあるのだろうと見まわすと、大木のそばに大きな白い石があります。
あれが「かっと石」とやらに違いないと近づいた、そのときでした。
石が「ポックリ」と大きく口を開け、その中から1羽の黄金の鶏が飛びだしました。あたり一面がまるで、真昼のように明るくなります。
(これは、神様からの贈り物かもしれん)
清三郎は黄金の鶏にそっと忍び寄ると、マサカリを振り上げました。すると――
「マサカリだめだ、ケケッコ」
黄金の鶏は急に人の言葉を発し、その場から飛び去っていきました。
それと同時に、開いていた石の口が「カッ」と音を立てて閉じてしまいました。
この石を人々は【かっと石】と呼び、名残惜しんだということです。
この「日本の民話」版の「かっと石」で注目したいところは、黄金の鶏が飛びだした瞬間に山中が昼間のように明るくなった場面と、鶏が人語を話した場面です。これらは『石川県鹿島郡誌』にはない場面なので、読みやすくするために脚色されたものだと思われます。
「日本の民話」版の【かっと石】の話は、平成5年にアニメ『まんが日本昔ばなし』で放映されています。こちらはさらにSF的な表現が使われています。
主人公は清作という妻帯者です。ひどく臆病な性格のため、畑仕事もろくにできず、夫婦で貧しい暮らしを送っていました。
ある晩、無気味な音を立てながら、山から奇妙な形の石が浮上します。
石は清作の家の真上まで飛んでくるとまばゆく輝き、光に包まれた「神様」が寝室に降り立ちます。そして清作に、こんなお告げをするのです。
「二の谷の、かっと石まできなさい」
臆病者の清作が、こんな夜中にひとりで山へ行くことなどできません。すると神様は翌晩も現れ、二の谷へ来いと繰り返します。
(ここまでいうのだから、きっと行けば神様は自分に何かを授けてくれるのだ。夜中に行くのは怖いが……そうだ、マサカリを持っていこう。マサカリさえあれば、こわいもんなどない)
その夜、じゅうぶんに研いだマサカリを持って、清作は二の谷へと向かいました。
暗い山道で怖い思いをしながら、やっとのことで奇妙な形の石を見つけます。
清作が石に近づくと、石はぶよぶよと奇妙な動きを見せ、「かっ」と大きく口を開くと、そこから黄金の鶏がふわりふわりと浮かびながら現れました。
「これは神様からのご褒美だ」と、清作は持ってきたマサカリで鶏をしとめようとします。
「マサカリはだめよ、マサカリはだめよ」
鶏が繰り返し訴えますが、清作は構わず、じりじりと迫ります。
すると、黄金の鶏は再び石の中へと戻っていき、石の口は「ぱく」と閉じてしまいました。
「せっかく、ここまで怖い思いをしてひとりでやってきたというのに……」
ならば石を割って、中から鶏を引きずり出してしまおうとマサカリを振り上げた、そのときでした。
激しい光が、石から発されたのです。
清作は目をくらまされ、マサカリはなんと、燃やされてしまいました。
――この日から清作は、いつかマサカリを持たずに【かっと石】のところまで行けるようにと、日々、臆病な性格を直す努力したそうです。
臆病な清作を鍛えてやろうという神様の親切心――だったのかはわかりません。清作の前に現れた神様は、石の中の黄金の鶏が姿を変えたものだったのでしょうか。
使われている効果音は、まるでSFアニメのようです。制作会社の人たちも【かっと石】の話を読んだときに「遠い宇宙から来たもの」のイメージを抱いたのかもしれません。
【かっと石】のある付近には、次のような金鶏伝説もあります。
昔、羽咋の四柳という場所に古寺がありました。天平のころ、戦によって燃やされ、跡形もなくなったとされています。この寺の跡には巨石があり、地中深くに金銀珠玉が埋もれているといわれていました。
これを掘ろうとすると、火の雨、あるいは氷の雨が降るという恐ろしいいい伝えがありましたが、信じていなかったのでしょう、村人たちは試しにと、これを掘ってみたのです。
すると、にわかに火の雨が降ったので、慌てて中止したということです。
この謎の石の付近では、元旦になると鶏の鳴き声を聞いたといいます。
寺の焼けた跡に現れた巨石。その下に埋められた宝物。
とても、気になるお話ではありませんか。
土中の宝物は、人々に掘り出されては都合の悪いものだったのでしょうか。
異星に住む金鶏にわざわざ見張らせ、宝を暴く者たちに「火の雨」で空から攻撃をする。
宝物を守っていた存在とは、何者なのでしょう。
そういえば、【そうはちぼん】を騙した権現様も、鶏の鳴き声を発しました。
これも金鶏伝説と関係があるのでしょうか。
参考資料
『石川県鹿島郡誌』上巻
清酒時男編『加賀・能登の民話』
(2020年7月記事を再掲載)
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