UMAをネイチャー路線で描く─前代未聞の天然ビッグフット映画「サスカッチ・サンセット」のリアル
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文=大槻ケンヂ 挿絵=チビル松村

不思議なことが身近にありすぎると、それは風景となる。なにが超日常の現象なのか。それは、あなた次第。
30年くらい前、恋人との喧嘩に悩んでいる女友達がいた。その頃、高円寺に住んでいた彼女は、恋人との大喧嘩が絶えず、裸足のまま家を飛び出ることも何度かあったそうだ。そんな彼女が切々と僕にその憤りを訴えるのであった。
「この間もね、手が出そうになって、私泣きながら部屋を飛び出たのね、でね」
「大変だねぇ。可愛想に」
「裸足だよ。でね、近所の友達のマンションに駆け込もうと思って、友達の部屋の扉を叩いたのよ。ガンガンガンって、でね」
「うんうん」
「そうしたら扉が開いて出て来たのが友達じゃなかったの。森本レオが出て来たのね」
「えっ、森本レオさんが!?」
「私部屋を間違えたのよ。その部屋森本レオが住んでいたのね。ま、それはどうでもいいんだけど。でね、私は友達の部屋に駆け込んだわけ、でね、ね、聞いて」
と彼女は恋人との喧嘩について語り続けた。でも、僕の頭の中はもう「友達じゃなくて森本レオが出て来た」とのインパクト・フレーズでいっぱいになってしまって、申し訳無いが喧嘩エピソードの方がさっぱり入ってこなくなってしまったものである。
彼女にしてみれば森本レオの不意の登場よりも、恋人との喧嘩騒動の方を聞かせたいに決まっている。でも、“裸足で飛び出した高円寺で友達ではなく森本レオさんに遭遇した”という珍事はなんともいえぬ味わいがあるし、トークとして大いにそこは広げるべきポイントではないのか?と思ったんだけど、彼女はその後レオさんについては一言も触れないのであった。
僕としてもさすがに「いやそれよりレオさんなんだけどさ」と言う訳にも言かず、気付けばあれから30年の時が経った。女友達とも疎遠になってしまった。
『ちゃんと痴話喧嘩の話聞いてあげればよかったな』と思う反面、でも今でも『森本レオさんの話はスルーするとこじゃないよなぁ。そこもっと広げようぜ』とも思うのだ。人によって各自それぞれ、体験した出来事の重要なポイントとは異なるものなのだなと感じる。人生いろいろである。
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大槻ケンヂ
1966年生まれ。ロックミュージシャン、筋肉少女帯、特撮、オケミスなどで活動。超常現象ビリーバーの沼からエンタメ派に這い上がり、UFOを愛した過去を抱く。
筋肉少女帯最新アルバム『君だけが憶えている映画』特撮ライブBlu-ray「TOKUSATSUリベンジャーズ」発売中。
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