奇妙なる文字と死と物語 知られざるムー的タイピングゲーム 3選/ムー通

文=藤川Q

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    ゲーム雑誌「ファミ通」とのコラボでムー的ゲームをお届け!

    猿にシェイクスピアは書けるのか『Idle Mo nkey Theorem』

     突然ですが、無限の猿定理(infinite monkey theorem)をご存じでしょうか? この世界のあらゆる書物は、文字の偶然の組み合わせでも再現可能であるという定理。めちゃくちゃかつ偶発的な文字の羅列も、永遠とも思える時間がありさえすれば、一片の美しい詩を生み出すであろうというのです。
     転じて"猿がタイプライターを無作為に叩きつづければ、かのシェイクスピアの文学も完成させることができる"無限の猿定理と呼ばれるようになりました。ちなみに『ハムレット』は約12万から13万文字で構成されているため、宇宙の年齢とされる約137億年かけても難しいと考えられています。

     人間とは何かを探求してきたムー的には、そこに神の計画と、人と猿の理を観想したいところですが、まずはこちらのゲーム『Idle Monkey Theorem』で、文字による物語の生成に挑んでみるのはいかがでしょうか。このゲームは、まさに猿を配置してひたすらランダムな文字列を出力させつづけるというもの。時間には限りがあるものの、猿の数を増やしていくことでシェイクスピアの名作を構成する文字列が出力される瞬間を見届けることができるかもしれません。その瞬間、私たちは物語とは何か考えさせられることになるでしょう。

    ゲーム内にはシェイクスピア作品の書棚も用意されていたりと、なかなかに気が利いています。

    ※Steamにて無料のDemo版が配信中 2026年配信予定 ©ozymandias

    ミスタイプには、死を『Final S entence』

     人間は文字によって情報を伝達し、あらゆる物語を生みだしてきました。また現代ではキーボード入力の技術を競うゲームも多く生まれています。この『Final Sentence』は、あなたの人生を物語だと見立て、その最後の言葉はどのようなものになるのか? というたいへん詞的なテーゼに迫るもの。
     なにしろ、タイプライターに向かったあなたの頭の前には、銃弾が装塡された一丁のリボルバーが狙いを定めていて……タイプをミスしてしまった瞬間、撃鉄が引かれてあなたの命は尽きることになるのですから。そのときにタイプしていた文字列こそが、あなたの人生の最後のセンテンスというわけです。おっと、ご心配は無用です。じつは同じ境遇の人が最大100人までいて、最後までミスタイプしなければ生き残ることができます。

    タイピングの腕に自信のある方は、このバトルロワイヤルに参加して、人生最後の文字をタイプしてみてくださいませ。

    ※Steamにて無料のDemo版が配信中 2026年配信予定 ©2024-2025, Button Mash, MB. All rights reserved

    少女たちを心療タイピングでカウンセリング『Pain P ain Go A way』

     流れてくる言葉を正確にすばやくタイプすることで、心に悩みを抱えた少女たちに言葉を届け、トラウマを打ち消し彼女たちに寄り添っていく物語。あなたはカウンセラーとして、自身が打ち込む言葉で患者と心療コミュニケーションを図ります。そして、その言葉で心と共鳴しながら、より深く彼女たちが抱えた物語に没入していく。そんな、ありそうでなかったタイピング+アドベンチャー『Pain Pain Go Away』。どこか往年のPCで文字を入力してプレイしていたころの名作アドベンチャーゲームに似た佇まいを感じてしまうところですが、本作は数々の大作RPGなどを手掛けてきた物語制作会社ストーリーノートの新プロジェクト"Lorebard"第一弾作品でもあります。
     患者となる少女たちの繊細な心の悩みをタイピングで質問しながら訊き出していくと、やがて彼女たちが抱えたボストラウマが姿を現します。かわいい見た目のゲームなのに、お見せするのがはばかられるほどに異形なクリーチャーの如き心的外傷には、決定打となるファイナルワードを見出して打ち消すことで解放を目指します。陰陽師の憑き物落としのごとく、古より言葉こそが個人が抱えきれないものを祓ってきた呪術であることを思いださせられつつ、人間にしか生みだせない言葉と物語の力が生むカタルシスを堪能できるはずです。

    初心者から腕自慢までタイピングゲームの気持ちよさが味わえるのがうれしいところ。かわいくもちょっぴり不穏な物語展開も気になる。

    ※Steamにて無料のDemo版が配信中 2026年配信予定 ©storynote

    (月刊ムー 2026年04月号)

    藤川Q

    ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。

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