異星人発見の鍵は“核融合の痕跡”にある! 科学者が提唱する地球外文明の探査法
太陽系外で繁栄している文明をどうやって見つければよいのか――。その鍵を握るのが、大気中の水蒸気の重水素の量であることが最新の研究で報告されている。
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核融合は実現できるのか? 日本発のマグネシウム球殻核融合が世界を変える?
高市自民党総裁がメガソーラーのこれ以上の建設を中止、原子炉の新型へのリプレイスと核融合炉の実装を公約とした(参考)。
では福島での事故処理も遅々として進んでいない原子力発電所は今後も使い続けることができるのか? 正直なところ、核廃棄物の処理技術がないまま、これ以上の運転を続けることは極めて不道徳だ。
核廃棄物を高速増殖炉で処理できればいいが、難しい。現在の原子炉は廃炉の向けての作業工程に入りつつ、出来る限り寿命を延ばし、電力の不足分は次世代の、極力、核廃棄物が出にくいタイプの原子炉で補うしかないだろう。現在、世界中で実用化が研究されているのが小型モジュール炉(SMR、Small Modular Reactor)だ。
SMRは30万キロワット以下(通常の原子炉の発電量は100万キロワット以上)で小型であることから構造がシンプルで冷却も簡単。従来型のように海水を使って冷却する必要がなく、冷却材には軽水や液体金属、ガスなど多様な選択肢がある。つまり内陸部に設置できるのだ。
またこれまでワンオフで作られてきた原子炉と違い、量産が前提で、各機能はモジュール化される。これにより価格を下げ、部品点数を減らすことができる。部品が減ればそれだけ解体時の核廃棄物も減る。
AIの登場で爆発的に電力需要が高まっており、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2030年には世界のAI関連データセンターの電力消費量が現在の2倍以上に膨らみ、日本の総電力消費量を上回るという。
そのためSMRの実用化は世界中で進んでいるが、今のところ実用化されたSMRはない(最速で2028年にカナダで1号炉が稼働予定)。また小型になるとはいえ原子炉の根本的な問題である核廃棄物の排出がなくなるわけではない。
本命は核融合炉だ。核反応後に核廃棄物は出ず(ただし炉自体は汚染される)、発電量も桁違いで燃料は海からほぼ無限に回収可能。すべてのエネルギー事情が一変するが、いまだに実用化の目途が立たない。
現在、日本・アメリカ・中国・韓国・ロシア・インド・EUによる世界プロジェクトで進めている核融合実用炉開発のITER計画も、コロナの影響で建設予算が増加、起動も当初の2030年から2034年と延期された。現在のトカマク型(ドーナツ状の電磁石の中でプラズマを回転させ、そのエネルギーで水を沸騰させる)はプラズマの制御が非常に難しく、いまだに投入エネルギーを出力エネルギーが超えるところまでも達していない。
そもそも論で現在の核融合炉の考え方では立ち行かないとしたら、核融合に未来はないのか?
実は核融合炉を小型化する研究が民間ベースで進んでいる。そのカギを握るのが日本。高温超電導技術だ。
ITERもそうだが、現行の核融合炉が設計されたのは90年代。当時は超伝導は超低温で起きるのが常識で、中核となる電磁石の磁力を高めるには液体窒素で冷やす必要があり、それだけ筐体は大型化した。
しかし近年の技術革新は革命的だ。これまで液体ヘリウム(マイナス269度)で冷却しないと起こらなかった超伝導現象を液体窒素(マイナス194度)で起きる素材開発に成功したのだ。
アメリカのコモンウェルス・フュージョン・システムズはMIT出身のエンジニアのスタートアップで、20億ドル以上の資金を調達、なんと2026年から核融合実証炉「スパーク(SPARC)」の運転を始めるという。スパークに使われている高温超伝導材は日本のメーカーのフジクラが開発したもので、リニア中央新幹線にも同社は参加している。
スパークの核融合炉はITERの核融合炉に比べ、ITERの40分の1のサイズと大幅に小型化されている。
同様の研究は日本でも行われている。株式会社Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)ではトカマク型ではなくヘリカル型核融合炉の開発を行っている。ヘリカル型核融合炉は日本で開発され、長年研究されてきた、いわば枯れた技術だ。長年、核融合科学研究所でヘリカル型核融合炉の研究を行ってきたエンジニアと東大・京大の若手が組んで立ち上げた同社も高温超電導素材を使い、磁石部分の小型化を行っている。
さらに日本から新しい核融合技術が現れた。マグネシウム球殻核融合という新技術だ。
三菱重工で原子力発電所の設計などに関わっていた森重晴雄の発明したマグネシウム球殻核融合は、非常にシンプル。大規模な電磁石やレーザー光を必要とせず、マグネシウムの殻の中に水とホウ素を入れて二酸化炭素を封入したボイラーに放り込むだけ。表面温度が1万度を超えるとマグネシウムの殻とm二酸化炭素が爆縮を起こし、球殻内部のホウ素と水が圧縮される。1万5000度を超えると爆縮反応が停止、内圧により球殻が膨張、冷却され、また爆縮が起きる。この爆縮の連鎖反応により、衝撃波加熱が起きて内部温度が上昇、3億度に達すると水と放送が核融合反応を起こす。
まだ理論値の域を出ていないが、きわめて安価に核融合炉を作ることができる技術だ。このマグネシウム球殻を燃料として発電を行えばいい。
マグネシウム球殻核融合のメリットはとにかく超小型化で運用できることだ。森重氏の考えるマグネシウム殻はわずか外径15ミリ/内径2ミリしかない。つまり超小型の核融合炉という新しいジャンルの発電システムができるのだ。
こうした小型核融合炉が一般化すると電力事情は大きく変わる。現在のように巨大発電所から電力を送る必要がなくなり、電力の地産地消が可能になる。
核融合炉は原子炉と違って、異常時には核反応は即座に止まり、核汚染は起こらない。汚染されている筐体の安全性さえ担保できれば、家に置くこともできるだろう。深夜湯沸かし器の感覚で一家に一台の核融合炉である。10年後は無理でも30年後はひょっとしたらその先鞭はついているかもしれない。
すべての車が核融合炉を積み、すべてのビルに核融合炉がある未来。けして夢ではない。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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