銭の蛇を拾って死亡、怪人・山黒様が突如訪問…荒木家妖怪絵巻は江戸のUMA実録本だ!(前編)
昨夏放送のお宝鑑定番組で大注目された、みんな大好き(?)荒木家所蔵の妖怪絵巻。そこには、妖怪というよりもUMAでは……?と思われるような、あまりに具体的な目撃談が多数記されていた!
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近藤瑞木 編/京極夏彦 序文
まったく知られていなかった妖怪や怪異の姿が克明に描かれた好事家垂涎の珍奇絵巻物
元来は不可視の存在である、いわゆる「妖怪」の姿形といえば、現代の日本において、そのイメージの流布に大きな役割を果たしたのは、水木しげるの妖怪画・漫画であるが、そういった水木妖怪のデザインの淵源には、室町時代以来の『百鬼夜行絵巻』や、江戸時代の鳥山石燕・河鍋暁斎らの妖怪画など、脈々たる伝統があった。
そしてその系譜は、現在においても、主として児童向けの書籍やゲーム、映画などに、広範に受け継がれている。その意味で日本は(西洋にもボッスやブリューゲル、ショーンガウアーなどの悪魔画の伝統はあるとはいえ)世界に冠たる妖怪大国である。
先般の全世界的なコロナ禍においても、疫病に対抗するための「妖怪」が全国津々浦々に流行したような国は、おそらく日本をおいて他には存在し得ぬであろう。
もともとそのような土壌があったこの国に、何と突如として、好事家の嗜好的にも学術的にも、この上なく興味深い書物が出現した。それが本書『筑前化物絵巻』である。
本書の原物は、福岡で代々続く医家・荒木家に長く受け継がれてきたもので、それが2023年7月、TVの人気番組『開運!なんでも鑑定団』に持ち込まれ、貴重極まりない正真正銘の珍本として、300万円の鑑定額をつけられたのだ。
その翌年には、本誌月刊「ムー」にも、特集記事が掲載された。そして、ついにこのたび、そんな珍奇な絵巻物(厳密にはその一伝本の『荒木家本』)が、待望の書籍版として、刊行されるに至ったのである。
この絵巻物の成立は安政4~6(1857~59)年ごろ、作者は詳細は不明ながら、福岡・黒田藩の武士で、二日市温泉在住であった人物であるという。
これまでにまったく知られていなかった妖怪や怪異の姿が克明に描かれ、愛好家ならずとも興味の尽きぬ逸品である。
本書に序文を提供している京極夏彦氏によれば、本書は「近隣諸国で起きた奇異なるものごとを聞き集め書き記したという体裁」であり、「過去に類例を見ない姿形の異形」が満載されている。
ともかく、あらゆる意味でこれまでになかった画期的な書籍であることは間違いない。
こういうものと対面できる幸運が待ち受けているのなら、長生きもしてみるものだ。

(月刊ムー 2025年11月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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