“事故物件住みます芸人”松原タニシが語る、映画「事故物件ゾク 恐い間取り」の絶妙な現実感
ムーでもおなじみ、芸人・松原タニシ氏が原作の“事故物件映画”「事故物件ゾク 恐い間取り」がいよいよ公開! 原作者自らがその魅力を語るインタビュー。
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映画「近畿地方のある場所について」がついに公開! “その場所”にまつわる怪異は、ネット小説から書籍化を経て、いよいよ映画へと伝播した……。
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映画「近畿地方のある場所について」(監督:白石晃士)が、2025年8月8日(金)から全国ロードショーだ。
原作は、インターネット小説投稿サイト「カクヨム」に投稿されていた同名のホラー小説。「これは本当にあったことなのではないか……?」と読者を不安に陥れる巧みなストーリーテリングがSNSで話題を呼び、累計2,300万PVを超える大ヒットを記録したフェイクドキュメンタリー(=モキュメンタリー)である。単行本化もされ、発行部数は70万部を突破している。
おそらく、ムー民にも原作のファンは多いであろう。なかには原作愛があるゆえ、実写映画化に複雑な思いを抱く人もいることと思う。しかし、まずは皆さんに「心配しないで」と伝えたい。
なぜなら、今回の映画「近畿地方のある場所について」は、視聴後に思わず「映画化してくださって、ありがとうございます」と言ってしまいたくなる一作に仕上がっているからだ。
本記事ではそんな映画版の魅力に迫りつつ、後半では白石監督と原作者・背筋氏のインタビューをお届けしたい。内容のネタバレはないのでご安心を。
物語は、フリーランス記者の瀬野千紘(菅野美穂)が、「行方不明の友人を探しています」と訴える1本の動画から始まる――。
ある日突然、オカルト雑誌の編集長が行方不明になった。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々だった。
オカルト雑誌の編集部員・小沢悠生(赤楚衛二)は、編集長が直前まで調べていた事件や怪現象について千紘と共に取材を進めていくが、やがて恐るべき事実に気付く。行方不明になった彼が追っていた謎は、なぜか全て“近畿地方のある場所”へとつながっていたのだ……。未知の土地にまつわる抗えない“ナニカ”に巻き込まれていく千紘と小沢。その先に、衝撃の結末が待ち受ける。
本作のメガホンを取った白石晃士氏は、映画「ノロイ」などで有名なフェイクドキュメンタリーの第一人者。そんな白石監督が旬のフェイクドキュメンタリー小説を映像化するという胸アツ展開に、ワクワクしているホラーファンも多かろう。
映画では、原作の持ち味だった“ネット小説ならではの匿名性”や、“文章の記録性”をどう映像化するかが注目点だったが、主演の菅野美穂と赤楚衛二による熱演で、“実写ならではの演出”に再構成されていて見応え抜群だ。
フェイクドキュメンタリーチックな演出が入りつつ、全体はフィクションとして成り立つ絶妙なバランスに引き込まれる。
そんな本編の見どころを、このたび白石監督と原作者・背筋氏に直接伺うことができた。以下、貴重な2ショットインタビューをお届けしよう。
―― まず白石監督にお聞きします。「近畿地方のある場所について」の映画化オファーを受けたときの率直な思いを教えてください。
白石晃士氏(以下、白石監督):これはもう、「やっぱり」と思いました。
―― やっぱり?
白石監督:やっぱり、この作品を映画化するなら監督は私でしょと。
―― 間違いなく、全国のホラーファンもドンピシャの人選だと思ったはずです(笑)
白石監督:実は私、背筋さんの原作が「カクヨム」に投稿されていたときから読んでいたんです。これまでの都市伝説や怪談が自然に散りばめられていて、今の時代のホラー的要素も取り込んだ現代的な書き方が印象的でした。
読み手は、最初はバラバラの情報に翻弄されるけど、「きっと最終的に一本の線に収束していくんだろうな」と期待しながら読みました。自分がかつて手がけた映画「ノロイ」とも感触が近かったんですよね。で、やっぱり、これの映画化は自分がやるべきだと思いましたね。
―― 原作は、文章ならではのフェイクドキュメンタリー演出が特徴でもあります。そんな原作の構造や文体を映像化するうえで、大変だった点・こだわった点はありますか?
白石監督:自分がやるべきと言っておいて何ですが、正直、「映像化するの難しいな〜」と思いました(笑)。全編をフェイクドキュメンタリーの演出にするという選択肢もあったんですけど、最終的にはあらかじめフィクションとして成立させる方向に振りました。そもそもが単行本として出版されているものを映像化するわけですから、映画はフィクションの前提になりますしね。
あと、モンド映画的な作りでリアリティを持たせすぎると、見る人が変な方向に引っかかってしまう可能性もある。今のご時世的にも、この映画を見た人が変なスピリチュアルにハマるような、そういう入口になってはいけないなと思ってて。
なので、これまで自分が培ってきたフェイクドキュメンタリー的な要素やPOV(主観視点)はあくまでも演出のひとつとして入れつつ、明確に“これは映画です”という線を保ちました。表現としては、原作のドキュメント性にPOV要素を入れるというリアリティを追求してみた感じですね。
―― 本作には「超・不思議マガジン」というオカルト雑誌が登場します。実はこの“オカルト雑誌の編集部”を描くにあたって、監督は事前にムー編集部を取材されているんですよね。
白石監督:そうなんです。実際のオカルト雑誌編集部の、リアルな1日の行動を教えてもらいました。編集者や記者が取材に行くときの動き方や、編集部から外部ライターへどうやって仕事を発注するか、雑誌作りの進行をどういうスケジュールでやっているかなど。そういう背景事情を正確に把握しないと、リアルな内容が作れないので。
あと編集部の中も見学させてもらって、編集者のデスク周りのリアルな雰囲気を見てきました。本編で、小沢の机の上に宇宙人の人形が置いてありますが、これは実際のムー編集部でもそういうデスクがあったんで、そのまま真似させてもらいました。
―― 実はオカルトメディア側の人間からしても、その辺の演出は絶妙なリアリティがありまして。編集部の先輩(編集長)が行方不明になったせいで、若手がいきなり大きな企画を任される状況には「マジかよ、ヤバいな」と思いましたし、そんな彼が取材を進めるうちにひとりで暴走してしまう様子を見て、「ああ、この状況になったら突っ走っちゃうのもちょっとわかるかも……」って思いました。
白石監督:なるほど(笑)
―― また、作中で映る資料ビデオにあった「5号棟」という表示を見た千紘が、「5はオカルト的に⚪︎⚪︎な意味があるからそれも原稿に書いておくわ」と、オカルトライターとして冷静に仕事を進めていく様子もリアルでした。特に感動もなさそうに「使えそうだから入れる」という、ベテランオカルト記者の姿なんですよね。そういう、ムー目線でリアリティのあるストーリー描写も見どころかと思います。
白石監督:あ、それ、私が後から書き足したセリフなんですよ。そう言っていただけるのは嬉しいですね。 今回、千紘のライターっぽさが表現できるシーンがあまり作れなかったので、ここで入れとこうと思ってそのセリフを加えたんです。「5にまつわるもの何かないか⁉︎」って調べました(笑)。
―― 原作者の背筋さんは、本編をご覧になってどのような感想を持たれましたか?
背筋さん(以下、背筋):もう「最高」の一言に尽きます。私はもともと白石監督のファンだったので、自分の作品を監督に映画化していただけると聞いたときは本当に嬉しかったですね。
―― 今回の映画では背筋さんが「脚本協力」とクレジットされていますが、具体的にはどのように制作に関わられたのでしょう?
背筋:そんな大それたことはしていないのですが……、原作の構成や設定がわりと複雑なので、映像化するにあたって、怪異のルールや構造に齟齬がないかをチェックする役目が主でした。そこで変なところがあれば調整したり、新しく必要な要素があれば追加したり。その辺は制作さんと細かく確認しながら進めました。
白石監督:そうそう。私の立場としては映像演出を第一に考えながら脚本を進めるわけですが、そんな中で「これ、呪いの仕組み的に合ってる?」みたいなことが出てくるんですよ。やっぱり原作が複雑なんで、映像化の中でたまに怪異の法則がずれそうになるというか。そういう時に背筋さんに相談して、ちゃんと筋が通るように調整のアドバイスをもらってました。
―― なるほど、かなり本質的な部分で携わっているんですね。単純に「脚本のこのシーンは背筋さんが書きました」とかではなく、ストーリーを成り立たせる骨組みの部分を、原作者自ら徹底チェックしているという。
白石監督:もちろん背筋さんのアイデアを採用したシーンもありますよ。例えば、作中の怪異を解き明かすフックのひとつとして、“日本昔ばなし風のアニメ”が出てきます。このアニメーション演出は原作にはなくて、今回の映画用に背筋さんが新しく生み出した部分です。
背筋:私はアイデアを出したくらいの感じですが……、ただその話が、実は入場者プレゼントの書き下ろし短編小説にも活かされていたりします。ぜひそこもチェックしてほしいですね。
―― 原作ファンには見逃せない情報ですね。
―― それでは最後に、お二人から見た今作のアピールポイントを伺いたいです。まずは背筋さん、原作者目線で「これは映画でしかできない」と思った見どころはありますか?
背筋:2つあります。まずは、俳優さんの演技です。文章の心情描写とは違い、映像では表情や口調の微妙な変化で登場人物の内面がにじんでくる。いったんストーリーを知ったうえでもう一度最初から見返すと、最初のシーンの意味が変わって見えてくるような深みがありますが、これは俳優さんの演技あってこそ味わえるものなんですよね。
もうひとつは、怪異の生々しさや禍々しさを、“観ている全員が同じ映像体験として共有できる”こと。これぞ映像作品ならではの恐怖体験だと思います。
―― まさに、映画では文章とは異なる恐怖体験が叶っていますよね。では続いて、監督ご自身が思う見どころをぜひ教えてください。
白石監督:私も2つあるんですが、ひとつは、先ほども話に出た“日本昔ばなし風のアニメ”です。制作はアニメーション作家さんにやってもらったんですが、実は私にとって初めてのアニメーション制作だったんですよ。すごく楽しかったし、アニメーションを使うという演出は映像だからできたことだと思うんですね。背筋さんのアイデアが形になったシーンでもあり、出来栄えも良く、古さも良い具合に出たなと思ってるので、ぜひ注目してほしいです。
そして、やはり映画全体としての構成を楽しんでほしい。映画が始まった時点では思ってもみなかった“場所”に、最終的に皆さんを連れていけると思います。ラストで楽しいかゾッとするかは人によると思いますが、ぜひ多くの人に“その場所”に行ってほしいですね。
「近畿地方のある場所について」
https://wwws.warnerbros.co.jp/kinkimovie/
2025年8月8日(金)全国ロードショー
原作:背筋「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA)
出演:菅野美穂、赤楚衛二
監督:白石晃士
脚本:大石哲也 白石晃士
脚本協力:背筋
音楽:ゲイリー芦屋 重盛康平
主題歌:椎名林檎「白日のもと」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式X:@kinki_movie
©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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