「カッパを探しています」 遠野でモンタージュカッパのグッズが話題に

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    岩手県遠野市の観光施設で、謎のグッズが注目を集めている。なんともいえない独特のフォルムのイラストは、50年前に目撃されたカッパを描いたものだった!

    「民話のふるさと」で謎のグッズが大人気!

    「民話のふるさと」として知られる、岩手県遠野。

    『遠野物語』といえばザシキワラシやオシラサマなどが思い浮かびますが、忘れてはいけないのがカッパ。全国各地に伝承があるカッパですが、遠野も例外ではなく、『遠野物語』にはいくつものカッパの話が採録されています。遠野のカッパは顔が赤いという特徴を持っているそうで、遠野市土淵にあるカッパ淵は観光名所としてもおなじみです。

     そのカッパ淵の近くには同じく観光名所の遠野伝承園がありますが、今ここでユニークな商品が発売されて話題になっています。それがこちら。

    (遠野伝承園公式アカウントより)

     サルのような爬虫類のような、なんともいえない独特のフォルムのなにかが描かれた商品の数々……。実はこの絵、遠野で目撃されたカッパの姿だというのです。カッパってこういう(下図)のじゃないの? と思ってしまいますが、江戸時代に描かれたカッパをみるとその形状はかなりさまざまで、けむくじゃらなものも少なくありません。遠野のカッパは有毛型だったのか? その真相は?

    いわゆるカッパ(いらすとやより)

    50年前に描かれたカッパのモンタージュ画像

     今回、カッパイラストとそのグッズ発売の経緯ついて、遠野伝承園の支配人にお話を聞くことができました。

     そもそもこのイラストが描かれたのは、今から半世紀も前、1975年のこと。当時世の中はミステリー・オカルトブームのまっさなか、東京神田には「カッパ村」という団体が設立され、同年8月カッパ捜索のための遠野遠征というイベントが開催されました。

     このとき参加者が現地で調査をおこなったところ、なんと地元住民のひとりから「2週間前にカッパをみた」という生々しい目撃情報がとびだします。その証言をもとに捜索に同行していた画家が描き出したのが、このカッパイラストだったのです。いわばモンタージュカッパ。

     目撃がたった2週間前ならば記憶もかなり鮮明だったはずで、それを絵のプロが描いたというのだから信憑性も高まります。カッパの大きさは60センチほどだったそうで、サイズ的にはニホンザルを見間違えたのでは? と考えられなくもないですが、しかしその顔はどうみてもサルではなく、クチバシのような形状はやはりカッパを思わせます。毛むくじゃらでクチバシのあるハイブリッドタイプだったのでしょうか。

     当時の新聞記事には、目撃されたカッパは頭に皿がない、丸顔、赤茶けた体だった、といった特徴も記されています。赤が強調される独特の外見は『遠野物語』とも通じる部分があり、気になるところです。

    江戸時代に描かれたカッパの図。モンタージュと共通する部分がありそうだ(国立公文書館蔵)

     しかし残念なことに、遠野でのカッパ目撃情報として大きく報じられたものは、今のところ50年前のこれが最後に。伝承園の支配人にも目撃経験がないか伺ってみたのですが、残念ながらスタッフ含め「今のところはない」とのことでした。

    グッズ誕生のきっかけは施設のリニューアル

     さて、伝承園では数年前からこのモンタージュカッパの画像をポスターに使用していたのですが、グッズ化のきっかけは園のリニューアル計画でした。

     伝承園では今年の4月からカッパと遠野物語の展示コーナーが開設されたのですが、この展示内容を充実させるため白羽の矢がたったのがモンタージュカッパ。50年前にイラストを描いたご本人からポスター使用にくわえて商用化の許諾を得ることができ、グッズの実現に至ったのだそうです。

     販売をスタートすると売り場での反応も上々で、インパクトのありすぎるビジュアルに思わず目をとめるお客さんが続出。売り上げも好調で、今ではモンタージュカッパグッズの売り上げが売店全体の1割を占めるほどに成長しているそう。

     購買層は男性女性問わず年齢も幅広く、なかでも現在一番人気なのが、サイズもお値段も手頃なステッカー。Tシャツも好調な売れ行きとのことですが、そんな勢力図を書き換えそうな新商品がこの7月に発売された「ガーゼタオル」です。目撃情報の等身大(60センチ)にひきのばされたカッパがプリントされているのですが、カッパにせよツチノコにせよ、事前におおよその大きさのイメージができることは、捜索時に大きなアドバンテージになるはず。カッパを見つけようと考えている人にとってはマストアイテムになるかもしれません。
    *ちなみに遠野ではカッパを捕獲すると1000万円の謝礼金がもらえるのですが、事前に捕獲許可証の購入が必要だったりといくつか条件があるので、興味のある方はチェックしてみてください。

    売れ筋商品のステッカーとTシャツ(伝承園公式アカウントより)
    新商品のガーゼタオルには等身大プリントのイラストが!(伝承園公式アカウントより)

     ところで、50年前にカッパが目撃された場所は、観光名所のカッパ淵ではなく、遠野市の西部を流れる猿ヶ石川でした。ただ『遠野物語』には、伝承園のすぐそばを流れる小烏瀬川(こがらせがわ)でも馬がカッパに引き込まれたという話があるので、付近で目撃できる可能性もないとはいえません。

     また現在、伝承園では目安箱を設置してカッパの目撃情報を募集中。モンタージュカッパグッズの充実により、今後は情報がふえることも予想されます。最近は遠野の夏もかなり暑いそうで避暑にはやや厳しそうですが、夏休みを利用して遠野のカッパ捜索に出動するのもありかもしれません。

     最後に『遠野物語』から、小烏瀬川のカッパ伝承の部分を引用します。調査に訪れる際にはぜひご参考に。

    五八 小烏瀬川の姥子淵の辺に、新屋の家という家あり。ある日淵へ馬を冷しに行き、馬曳の子は外へ遊びに行きし間に、川童出でてその馬を引き込まんとし、かえりて馬に引きずられて厩の前に来たり、馬槽に覆われてありき。家のもの馬槽の伏せてあるを怪しみて少しあけて見れば川童の手出でたり。村中のもの集まりて殺さんか宥さんかと評議せしが、結局今後は村中の馬に悪戯をせぬという堅き約束をさせてこれを放したり。その川童今は村を去りて相沢の滝の淵に住めりという。
    ○この話などは類型全国に充満せり。いやしくも川童のおるという国には必ずこの話あり。何の故にか。

    五九 外の地にては川童の顔は青しというようなれど、遠野の川童は面の色赭(あか)きなり。佐々木氏の曾祖母、穉(おさな)かりしころ友だちと庭にて遊びてありしに、三本ばかりある胡桃の木の間より、真赤なる顔したる男の子の顔見えたり。これは川童なりしとなり。今もその胡桃大木にてあり。この家の屋敷のめぐりはすべて胡桃の樹なり。
    (『遠野物語』柳田國男、テキストは青空文庫より)

    リニューアルされた展示ブースに鎮座する、等身大のカッパぬい。残念ながら非売品。(伝承園公式アカウントより)

    カッパモンタージュイラストグッズ
    ステッカー(600円)ほか、遠野伝承園にて発売中。
    詳細は公式サイト、公式SNSから
    https://www.densyoen.jp
    https://x.com/tono_densyoen/status/1943853578080465166

    さまざまなフォルムが伝えられるカッパたち。遠野にいるのはどのタイプなのか?(国立国会図書館デジタルアーカイブ)

    webムー編集部

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