「道教文化と日本 陰陽道・神道・修験道」/ムー民のためのブックガイド

文=羽仁 礼

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    道教文化と日本 陰陽道・神道・修験道

    日本道教学会 編集

    日本における道教文化を詳細解説

     道教は、仏教や儒教と並ぶ中国三大宗教のひとつである。道術を極めた仙人たちの秘術については、日本でも小説や漫画などでおなじみだが、ではつまるところ道教は何かというと、明確な回答が難しいようだ。
     基本的には、老子の思想を根本に、不老長生を求める神仙術や、符術、方術などの魔術的要素が加わり、やがて、教団や教典が、次第に整備されたようだ。
     日本と道教との関わりは、開元23(735)年、遣唐使として唐に滞在していた中臣名代が、日本に持ち帰るため『道徳経』と天尊の像を、玄宗皇帝に願い出たことに始まる。
     その後、天宝12(753)年、遣唐大使藤原清河が鑑真の日本渡航を願い出た際、玄宗皇帝は道士を同行させることを提案したが、日本側はこれを断ったという。
     そのため仏教や儒教と違って、日本では道教が体系的に受容されないままとなった。
     ところが、道教における星辰崇拝や神仙思想などさまざまな要素は、日本の陰陽道や神道、修験道などに取り入れられ、いろいろと影響を残しているようだ。
     本書は、そうした事例を詳細に取り上げ、検討を加えている専門書である。
     ただ、仙童寅吉や島田幸安、宮地常磐・堅盤(水位)親子など、民間の日本の神仙についての記述が一切ないのは、評者として寂しい限りである。

    勉誠社 4180円(税込)

    (月刊ムー 2025年8月号掲載)

    羽仁 礼

    ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
    ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。

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