日本生まれの「台湾独立の祖」を祀った寺院・開元殿の圧倒的迫力! そびえ立つ巨像3体の秘密/小嶋独観
珍スポ巡って25年、すべてを知る男による台湾屈指の珍寺・奇祭紹介!
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取材・文・写真=小嶋独観
珍スポ巡って25年の古参マニアによる全国屈指の“珍寺”紹介! 今回は静岡県菊川市の菊川観音をレポート。映えスポット満載の新感覚寺院で衝撃のお地蔵さんに遭遇!
静岡県菊川市に子宝、安産、縁結びに特化したチョット変わったお寺がある。
その名は西福寺(通称:菊川観音)という曹洞宗の寺院だ。
茶畑が広がり、目の前には東海道線が走る、そんな場所にある菊川観音は入口からしてピンクの幟が並び、紅白の提灯が連なり、とても賑やかな雰囲気だ。
さらに山門の両側と天井には格子に合わせて色鮮やかな布が貼られている。いわゆる「映える」寺なのだ。
比較的新しい本堂。中もファンシーな仕上がりになっている。子宝、安産、縁結び…… このお寺のメインターゲットは確実に若い女性だ。その若い女性向けの工夫があちこちに感じられる。
住職に挨拶して本堂に入る。写真とかどんどん撮ってSNSとかに上げちゃって下さいねー、との事。やれありがたや。撮影禁止の事も多い仏教寺院において、積極的に撮影や拡散を進める新しい考えのお寺なのだ。
本堂正面には子安観音が金色に輝いている。お腹に赤子が寝ているのがキュートだ。
本尊左手には無数の絵馬が壁を埋め尽くしている。皆、フェルトで出来たお地蔵さんが付いた絵馬だ。そこに地蔵洞窟という案内が。
その先には確かに地蔵洞窟の入口があった。洞窟とはいえ、もちろん人工の洞窟だ。本堂を新築した際に一緒に造ったのだろう。ご自由にどうぞとあったので遠慮なく入らせていただきますよ。
入り口脇にはモニターがあり、そこで参拝方法を説明している。ここにも撮影OK、インスタ上等の案内が。
一通り、参拝方法が動画で説明されている。
とても判りやすい説明だ。考えてみれば若い人の中にはお寺に参拝する習慣がない人も多いだろう。そういった人達にまで気を配った細やかなサービスだ。
で、いよいよ入洞、階段を数段下りていく。人工と判っていても少しドキドキするぞ。
洞窟はそれほど広くはない。中央に柱があり、その周りをぐるりと一回りしたら終わり、という規模だ。
柱の真ん中には穴が空いており、そこに金の玉が二つ並んでいた。
ええと…… これは…… 子宝のもと、という解釈で宜しいのでしょうか?金箔がびっしり貼られていた。
壁面には所々穴が空いていて、神仏が祀られていた。
こちらはお稲荷さん。五穀豊穣が転じて子孫繁栄の神として祀られている。
続いて大国、愛染明王、鬼子母神の三体の神仏。
そしてこの洞窟のラスボスとも言える子授麻羅地蔵菩薩。コレがお地蔵さん? と思われるだろう。実はこれ、石棒といい、縄文時代に祭祀に使われていた呪物なのだ。もちろん男性器を象徴しており、子宝を祈願したものなのだろう。縄文時代には祭祀の際に焼いたり割ったりしていたという。従って完全体で残っているケースは珍しいのだ。
ここの麻羅地蔵もそうした縄文時代の遺物だったが、いつの頃からか近隣の人々が子宝を祈願するようになって、お地蔵さんにカテゴライズされてしまったようである。
この地蔵の珍しいところは祈願の際に荒縄を巻く、ということ。これも由来は不明だが、地蔵に縄を巻くという習俗はごくたまに散見される。特に有名なのは東京のしばられ地蔵で、ここも縁結びに御利益があるとされている。地蔵を縛るなんて罰当たりな、と思われるかもしれないが、実は地蔵に苦痛を与えることで自分の願いを叶えさせるという考え方は古くから存在するのだ。日本中を見渡せば火を付けたり、塩や味噌を塗ったり、川に落としたりして地蔵を痛めつけるケースが多々ある。それだけ地蔵という存在が庶民にとって身近な存在だったのであろう。
麻羅地蔵みくじ。要するに男性器の形のおみくじである。ちゃんと縄が巻かれている。この後、ひとつの石にたくさんの仏が彫られている一石多尊石仏を拝んで地蔵洞窟参拝は終了となる。狭いけど思いのほか、見ごたえがあった。
洞窟を出て本尊の右サイドを見る。まず目につくのは、たくさんの袋が奉納されているコーナー。
これは安産祈願で、底の抜けた袋が奉納されている。スポッと産まれるように、ということか。それぞれの袋には母親の願いが込められている。
ハート型の窓。これは猪目窓といい、日本伝統の窓の様式なのだが、近年は「映える」ということで猪目窓のあるお寺には若い人が大勢訪れるようになったそうな。
巨大おみくじ。なぜ巨大なのかは不明。でも面白ければそれで良いじゃない。
本堂を出て庭にある狛犬を発見。これまた縁結びの狛犬だとか。映えスポット満載の寺だったが、個人的にはこの狛犬が一番映えていたような気がする。それにしても隅から隅まで御利益と「映え」に満ちたお寺であった。新しい時代に即したきめ細やかなサービスを提供する寺院として、ひとつのロールモデルとなるのではないだろうか。
帰りがけに門を潜ろうとしたら目の前を東海道線の車両が横切っていった。鉄道ファンにとっても映えスポットかも知れないですね。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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