最新科学が可能にするテレパシー! 感情や思考が統制されるディストピアな未来へ……
考えるだけで、モニターに頭の中の文章が次々と表示される――そんな機械を使ったテレパシーのような技術を「Brain-to-Text」という。米カルフォルリア大学などの研究チームが、AIの深層学習を使って
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金(ゴールド)をめぐる状況が、近い将来一変する可能性があるという! 最新研究が導き出した金の新事実と、今後の展開とは!?
いつの時代も人間は金(ゴールド)に憑りつかれる。
19世紀半ば、アメリカ大陸に大陸の食い詰め者が押し寄せたのは、西海岸で金が見つかったからだ。ゴールドラッシュだ。オーストラリアも金が見つかってから、流刑地から開拓地へとポジションを変えた。
西洋諸国は金を探して海を渡り、鉱脈を奪い、採掘の邪魔になる民族や国を滅ぼした。アメリカではインディアンが殺され、オーストラリアではアポリジニが殺された。南米では巨石文明を持つマヤやアステカといった国家がスペインやポルトガルに破壊された。
金をめぐる人間の業の深さにため息が出るが、21世紀になったからと言って人間から金への執着がなくなったわけではない。
独ゲッティンゲン大学の研究で、地球の核の中に大量にある金が、火山活動で地表に流れ出ていることがわかった。地下には大量の金が埋まっているのだ。
地球に手つかずの鉱物資源があることは、およそ想像がつく。山の中を掘り起こすと金が見つかるのだから、地球の中に大量の金が埋まっていてもおかしくない。問題はそれがどのくらいの量で、採掘は可能なのか? ということだ。
金はもともと地球にあったわけではなく、恐らくは超新星爆発で誕生した。核融合の超高温・超高圧がもたらす錬金術的な元素転換によって生み出されたというのが定説だ。鉛から金をつくろうとした錬金術の目の付けどころは間違ってはいなかったのだ。金はまさに出自からして錬金術的だった。
英ブリストル大学のマシアス・ウィルボールドらは、そんな金が隕石によって地球に大量落下したと考えている。およそ39億年前、言い換えれば地球ができておよそ6憶5000万年後に、金は宇宙から飛来した。まだ固まっていない大地に突入した隕石は融解し、比重の重い金は地球の中心へと引きずり込まれた。
グリーンランドには、おそらく地球の中心に消えた隕石と同じ物質が溶けて地表に噴き出したと考えられる地層が露出している。その地層の岩石を分析したところ、金の含有量が高く、大量の金が隕石によって核に運ばれたことがわかった。
「ナショナルジオグラフィック」誌の解説によると、核に運ばれた隕石の量はマントル内物質の約0.5%で、質量にすると約2000京トン(2000兆トンの1万倍)だそうだ。このうち金の成分を取り出すと、地球全体を高さ4メートルの金で覆うことができるらしい。
しかし、残念ながら地球の核にいくら金があっても。それを掘り出すことは、現在の技術ではまったくの不可能だ。人間は地球の一番外側の層、地殻を掘り抜いたこともない。地殻の厚さは30~60キロ、人間が掘った一番深い穴は、旧ソビエトがコラ半島で堀った深さ約12キロメートルの穴である。地殻の半分にも届いていない。
そこで考え方を変えた人たちがいる。金を地球に運んだ隕石が、まだ宇宙にはあるのではないか? 地球から掘り出すのではなく、宇宙から金をとってくることはできないのか?
2023年10月に打ち上げられた探査機「プシケ(Psyche、サイキとも読む)」は、同名の小惑星を探査するために作られた。
小惑星プシケは全長232キロメートル、直径280キロメートルの巨大な隕石だ。その質量の最大6割は金属であり、金属資源としての価値は貨幣換算で約1000京ドルに達する。
地球全体の経済規模が105兆ドルなので、プシケ1個を手に入れれば、地球経済の1000万倍もの値段がつく。地球を丸ごと買うことができるのだ。
金の魔力は未知のフロンティアを目指す強い動機にもなる。大航海時代、西洋の船乗りはマルコポーロが『東方見聞録』で伝えたジパング、「黄金の国」を夢見て海を渡った。そして21世紀、人類が目指すは黄金の国ではなく、黄金の隕石というわけだ。
地球をキャッシュで買える金が手に入るとなると、夢物語にも箔がつく。小惑星探査という、実務家には現実的なメリットが見えない基礎科学の領域に金を絡めるだけで、急に損益が可視化されるのが面白い。
宇宙研究の予算獲得に黄金の隕石は魅力的な口実となるが、小惑星を採掘基地にする技術がいつできるのか、100年後なのか10年後なのかわからない。欲の皮の突っ張った投資家を言いくるめる方便にはなっても、現実に金が手に入るわけではない。
地球の核にある金を掘り出すことは不可能だが、マントルに溶け込んだ金を地上で回収することは不可能ではない。
日本の海洋研究開発機構やIHIなどが進めているのが、海底熱水鉱床の海水から貴金属を取り出そうという計画だ。海底熱水鉱床では、マントルで加熱された熱水が海底から噴き出すため、海水に大量の金が含まれている。その金をIHIが開発した藻を使ったシートで回収する。藻の表面には金属を吸着する性質があり、藻を加工した後もその機能は失われないのだという。
秋田県・玉川温泉の温泉水に金が含まれていることはわかっていたので、藻のシートによる金の吸着実験が行われた。温泉水に含まれる金はppt(1兆分の1)レベルと非常に濃度が薄いのだが、7か月設置したシートには、なんと1トン当たり最大30グラムの金が吸着していたという。
日本近海には、比較的浅い場所に海底熱水鉱床があるため、藻のシートを設置しやすい。青ヶ島の海底熱水鉱床で2023年6月に行われた実証実験では、熱水1トンあたり20グラムの金を回収できたという。うまくコスト問題が解決できれば、日本経済は金で復活するかもしれない。
現在、地表で採掘できる金の総量は5万トン程度で、それを掘り終えたら金は終わりなのだそうだ。これまで掘り出された金の総量は約18万トン。半導体等の工業製品にも使われることを考えれば、大して残っていない。将来の金不足を考えると、金を回収する技術は、国家戦略としても重要だ。
とはいえ人間は想像を絶するほど欲深い。金のためならテレポーテーションのようなありえない技術も発明しかねない。マッドなサイエンスで、地球の核から金を取り出した結果、地球を金メッキするようなことにならなきゃいいのだが。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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