アメリカ大統領選挙で見えた救世主待望のSNS的リアリティ/シークエンスはやとも 噂のホウダン 第1回
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。分断が争点となった段階で、既得権益をぶっ壊すという復活のレールは敷かれていた!?
記事を読む
文=シークエンスはやとも 構成=倉本菜生 イラスト=ネルノダイスキ
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。今回は「選挙」。そもそも指導者になりがたる人を信用しがたい気持ち、ありませんか?
都市伝説を愛してやまない吉本興業所属の霊能者、シークエンスはやともです。今回は選挙と絡めながら、「リーダーの選び方」について語っていきます。
皆さんは選挙で投票するとき、何を基準にしていますか? シンプルに突き詰めると「この人なら現状をよくしてくれそう」「あいつが勝つのは嫌だから、こっちに入れる」といった気持ちで決めているのではないでしょうか。
選挙というシステムは、いい換えれば「自分の願望や感情をだれに託すかを決める儀式」です。でも、僕らはだれかに未来や希望を託したいと思っている反面、「選挙に出る人」を信用していない節がある。人前に立ちたがる人に対し、「承認欲求が強そう」「目立ちたいだけではないのか?」と感じたことはありませんか?
逆に、推薦されて仕方なくリーダーになる人のほうが信頼されやすい。人に選ばれるのと、自分から名乗り出るのとでは、印象がまったく違います。でも承認欲求や野心を持ってないと、選挙に出ようなんて思わない。
自分から目立ちにいく人間には、どこか裏があるんじゃないか。そう疑う一方で、僕たちは心のどこかで「理想のリーダー像」を求めている。
その観点で見ると、トランプ大統領はとても面白い人物です。
彼って、考え方も行動もまったく政治家ではない。完全に経営者としての目線で国を動かそうとしている。ビジネスで結果を出してきた人間が、実績を武器に政界に乗り込んできた。
だから「いいたいことをいってくれる」とか、「あのぐらいの強引さがなきゃ世界は動かせない」とか、トランプ氏の持つ強さに惹かれる人が多いんだと思います。
トランプのようなカリスマ性のある政治家が日本にいるかというと……正直、あまり見当たらない。政治家たちの言動から「突破力」や「決断力」が伝わってこないですよね。そこには、今の政治が「予算と前例」に縛られすぎていることと、意思決定層の高齢化が関係しています。
国を動かす立場にいる人の平均年齢が高すぎて、現場のスピード感とズレてしまっている。技術開発者が新しいアイデアを持ち込んでも、対応するのが70代の官僚や議員だったりして、話が通じない感覚すらあるかもしれません。
知識や経験がある年長者の存在はもちろん大切です。しかしトップの高齢化により、若手の人たちまでが新しいことをやる精神力を失っている。
かつての日本は、ウォークマンや家庭用ゲーム機など、世界を驚かせるような発明を生み出してきた。でも今は、クリエイティブな分野に投資する判断や余裕が、政治家からもなくなっています。
判断力のない政治家が増える背景には、社会全体の「考える力の衰え」があると思います。ネットが発達したことで、情報に触れるスピードは格段に上がりました。でもその分、何を信じるべきか、どう受け止めるか、自分の頭で考える能力が、どんどん低下している。
その結果、「なんとなくそれっぽいことをいってくれる人」の意見に、つい流されるようになってきたんです。
たとえば、コンサルタントやマーケターと呼ばれる人たち。社会のあちこちで、彼らの声が大きくなっている気がします。存在自体を否定するつもりはありません。でも、あまりにも影響力を持ちすぎている。
コンサルやマーケターは「ウケる正解」を提示し、物事の方向性を決めようとします。けれど、その答えは大衆の反応を意識したものであって、僕たちひとりひとりが本当に求めているものとはズレていることが多いんです。
こうしたマーケティング的な考え方が、政治の世界にも浸透してきている。リーダー像さえも「何をいうか」より「どう演出するか」で語られるようになった。本音や信念よりも、「ウケ」ばかりが重視されるようになってきているんです。
エンタメの世界でも同じ現象が起こっています。作品の思想や熱量より、「バズる構成」や「映える演出」が優先されてしまう。本来、エンターテインメントは人間らしさの表現だったはず。
今は、作り手の葛藤や、完成までの過程で抱える迷いのような部分が、「テンポが悪い」「わかりにくい」といった理由で、どんどん削られてしまっています。
政治でもエンタメでも、人間らしい深みや迷い、本質的な情熱が削り取られているんです。その先で行きつくのは「見た目が整っていれば、内容まで正しく思えてしまう」という、ルッキズムに支配された空気感でしょう。
SNSやマッチングアプリの普及によって、僕たちは「加工された理想像」に慣れすぎてしまった。知らず知らずのうちに、僕らの感覚は「美しさ=信頼」というバイアスに影響されている。
一方で、最近話題となったカトリックにおける教皇選挙(コンクラーベ)。この儀式、制度としてはめちゃくちゃ〝きれい〞なんですよ。選ばれる側も、選ぶ側も、表に出てアピールしない。祈りを通じて「神の代理人」を探っていくという……。
都市伝説的には、ちょっとできすぎているとも思えますけどね。実際には水面下であやしい動きはあるでしょうけど、表向きは他薦によるきれいなリーダー選びに見えます。
教皇選挙は憑依儀式だと考えています。カトリック信者たちの集合意識が、「次の時代に必要とされる器」を選んでいる。
僕らがやっている民主主義の選挙も、形こそ違えど「あの人を通じて私を表現したい」という欲望で動いているのかもしれません。
リーダーに求められるのは、中身や覚悟じゃなく、「映える」「叩かれにくい」「推してる自分が恥ずかしくない」かどうか。そんな次元にまで選挙は変質している。
つまり今の政治は「人気投票」を超えて、憑依のシステムに近づいているんじゃないかな。だれかに期待を託す行為は、その人に自分の感情を宿らせること。でも願望が強すぎれば、選ばれたリーダー自身をも乗っ取ってしまう。
そんな現代の選挙は、ある意味、現代に生きる僕たち全員が加担する憑依合戦なのかもしれません。
(2025年 月刊ムー7月号)
シークエンスはやとも
1991年7月8日、東京生まれ。吉本興業所属の〝霊が視えすぎる〞芸人。芸能界から実業界、政財界にも通じる交友があり、世相の表も都市伝説も覗いている。主な著書に『近づいてはいけない いい人』(ヨシモトブックス)、『霊視ができるようになる本』(サンマーク出版)など。
関連記事
アメリカ大統領選挙で見えた救世主待望のSNS的リアリティ/シークエンスはやとも 噂のホウダン 第1回
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。分断が争点となった段階で、既得権益をぶっ壊すという復活のレールは敷かれていた!?
記事を読む
アルゼンチンの選挙で“幽霊有権者”が投票!? 選挙制度と民主主義を揺るがす事態か、大ニュースに
アルゼンチンで行われた選挙で、幽霊が1票を投じていた可能性が急浮上。多くのメディアで大騒ぎになっている。前代未聞の事件の顛末とは――!?
記事を読む
2020年大統領選挙にも影響が!? アメリカ大統領と”テカムセ”の呪い/ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、アメリカの大統領選挙にまつわる不可解な「呪い」の存在を取りあげる。
記事を読む
VR体験で生身の肉体が変化する! 「身体融合」で技術習得や視力向上、自己変革までできる研究最前線
バーチャルリアリティ=VRというと、ヘッドセットでコケた思い出が脳裏に浮かぶが、あれは使い方が間違っていたらしい。VRに最適なコンテンツがゲームであることに違いはないが、わざわざヘッドセットを被ってま
記事を読む
おすすめ記事