霊能者ごとに見えるものは違う? 霊は時が止まった状態である!/シークエンスはやとも 噂のホウダン 第4回
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。今回は「霊が見える」能力の話から、そもそも「霊」がどんなものかを考える。
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心霊が見えるようになってしまった女子高生の姿を描く映画「見える子ちゃん」。「ほん呪」「残穢」の中村監督と“2人の霊能者”のトリプルインタビューを通して、新しい”見える人”映画の裏側に迫る。
目次
ある日突然、日常に潜む“霊”が見えた時、あなたはどうする……?
そんな風に、期せずして“見える人”になってしまった女子高生の苦悩を描く映画「見える子ちゃん」が、2025年6月6日(金)から全国で公開中だ。
脚本・監督を務めたのは、「ほんとにあった! 呪いのビデオ」シリーズや「残穢―住んではいけない部屋―」などで有名な中村義洋氏。ホラー好きにとっては、「おわかりいただけただろうか」のセリフでおなじみだろう。
「見える子ちゃん」は、そんな中村監督ならではの恐怖表現と、女子高生が主人公ならではの青春映画的な爽やかさが交わった、新感覚の全力無反応系エンターテイメント。しかも本編には、何気なく“有名な霊能者”が2人も登場しており、オカルト民も注目の一作となっている。
ムー的にも「この映画は見逃せないな」と思っていたところ、ちょうどその“2人の霊能者”と中村監督の豪華トリプルインタビューが実現した。というわけで今回は、“見えること”に徹底的に向き合った本作の裏側に、ムー目線で迫っていきたい。
まずは、映画のあらすじからご覧いただこう。
<あらすじ>
ある日突然、霊が見えるようになってしまった女子高生・四谷みこ。家でも、学校の教室や体育館でも、そして通学路でも、いたるところで霊に遭遇するようになる。
恐怖に怯えるみこは、日常風景の中に次々と現れる霊たちを、“ひたすら無視する”という手段でなんとかやり過ごしていく。もし彼らに見えていることを悟られれば、何が起こるかわからないから……。
しかし文化祭の準備を行うみこの周辺で、いくつかの異変が発生し始める。果たしてみこは、文化祭を無事に迎えることができるのか?
原作はウェブ発の同名人気漫画で、テレビアニメ化を経て、待望の実写映画化を果たした形。若手実力派俳優・原菜乃華が、主人公みこを演じる。
本作の魅力は、主人公が持つ「見えてしまうけれど、誰にも言えない」という葛藤の中で展開される、絶妙なバランスの恐怖と笑い。とにかく、心霊が出てきても徹底的に無視を決め込もうと努力する姿が健気だ。
ホラーが苦手な人でも楽しめるような“ちょうどいい怖さ”の中で、見えることで孤独や葛藤を抱えるリアルな女子高生像が丁寧に描き出されている。
そしてムー的に見逃せないのが、上述の通り、有名な霊能者が2人も登場していること。
その2人とは……、月刊ムー本誌の連載でもおなじみの“霊がよく視える”芸人・シークエンスはやともさんと、タレントで、幼少の頃から心霊体験を経験し自身の経験から得た実体験を色んなメディアで語る松嶋初音さんだ。
どちらも、いわゆる“霊が見える人”である。
そして“見える人”を代表するおふたりによれば、映画「見える子ちゃん」は驚くほどリアルだというのだ。
中村監督は、いかにしてそのリアリティを実現したのか?
以下、三者のインタビューでその核心に迫っていこう。
――まずは中村監督に、この映画を手がけたお気持ちからお聞きします。というのも、「見える子ちゃん」の実写化にあたって、数々のホラー映画を手がけてきた中村監督が “霊を無視する”というストーリーをどう描くのか。原作ファンもホラー映画ファンも、期待が大きいと思うんですよ。
中村義洋氏(以下、中村監督):実は、この「霊が見えるけど無視する」という設定、自分が20代の頃に考えていたホラー映画のプロットにすごく近かったんです。なので、オファーを受けてすぐ快諾しました。
――え! 同じような話を中村監督も考えていた?
中村監督:そうなんです。僕が考えていたのは、不動産屋で働く中年男性が、ある日突然“見える人”になってしまって、事故物件を回るたびに色々見てしまうんだけど、それを無視しながら物件の良さをお客さんにアピールしていく……という話でした。でも、そのアイデアは採用されず、制作できなかったんです。
今回の「見える子ちゃん」実写化のオファーをいただいて、「まさにあの時考えていた映画と設定が同じだ」と。それでお引き受けしました。「そうか、主人公が女子高生だったら良かったのか!」ってようやく気づきましたね(笑)。
――中年男性が主人公では難しかったと(笑)。続いては、そんな女子高生が見てしまう霊の見た目について伺いたいです。原作漫画では、主人公・みこに見える異形は「エイリアン」のようなクリーチャーとして描かれています。それが、実写ではJホラーの流れを汲む人型の心霊として描かれているのが印象的でした。これにより、原作以上に恐怖感が増していたと思います。
中村監督:エイリアン的な見た目は漫画だと映える表現なんですが、そのまま実写映像にしてしまうと、ホラーとしては画が持たないんです。ホラー映画ではなく、クリーチャー映画になってしまうというか。それによって、恐怖感も薄れてしまう恐れがある。そこで、霊として描く方向に切り替えました。
というのも、「見える子ちゃん」という漫画は、ホラーでありながらコメディとしても成立しているのが魅力で、その要素は実写でも絶対に引き継ぎたかったんです。そこで大事なのが恐怖感。基本のストーリーがちゃんと怖くなければ、笑いも生まれないんですよ。なので、“ホラーとしての恐怖”と“コメディとしての笑い”を両立させるバランスにはすごく気をつけましたね。
――“霊が見えても、見えないフリをする”という主人公の心の動きがすごく自然で、まさに恐怖と笑いを生んでいました。
中村監督:脚本を書くにあたり、知人の若手俳優や近所の高校生たちにヒアリングしたら、多くの若者に共通して「周囲から浮きたくない」という感情が見えてきたんです。だから主人公のみこが、“自分だけが見えていて変に思われたくない”という心情になるのは普通で、周囲にバレないように心霊を無視する選択をするのも自然だなって。
主演の原さんは現在20代前半の俳優ですが、子役から活躍していてキャリアが長く、そういうディレクション意図をすぐに理解してくれましたね。心霊を無視する演技の際は、“周囲にはバレないように配慮した怖がり方”という、絶妙なバランスを意識してもらったんです。結果、「見えている」「怖い」だけでなく、「それが周囲にバレるのも怖い」という、三重構造の感情をしっかり引き出してくれました。
――なるほど。そんな“見えないフリ”という対処のヒントを主人公にもたらすのが、シークエンスはやともさんと松嶋初音さんなんですよね。本編にお二人が出ていることで、“見える人”の映画として、かなり説得力が増していると感じます。
中村監督:脚本を考えていた時、「霊 見える 対処法」とかで色々検索して調べてたんですよ(笑)。そんな中で、お二人の動画に出会ったんです。「心霊が見えた時の対処法として、無視するのが良い」と語っていて、まさに同じこと言ってるぞと。
それなら、主人公みこも、お二人の動画をキッカケに心霊を無視し始めるのが良いんじゃないかと、ご出演を依頼しました。お二人の動画からは他にも様々な描写のヒントや裏付けみたいなものを得ていて、僕にとってはこの映画を作る上で欠かせないメンターのような存在でした。
――では……はやともさんと松嶋さんのような実際に“見える人”からすると、今回の「見える子ちゃん」はどういう作品ですか??
シークエンスはやとも氏(以下、はやとも):正直、リアルすぎて驚きました。はっきり言って、監督が“見える人”だとしか思えない内容です。特にすごいのが、一本の映画の中で心霊の描き方のレイヤーが異なること。例えば背後霊、不成仏霊、地縛霊とか色々いますけど、僕からすると、それぞれ見え方や質感がちょっとずつ異なっているんですよ。それがちゃんと描き分けられている映画なんです。心霊の“動き”とか、とにかく僕が見てきたものとすごく近かった。
松嶋初音氏(以下、松嶋):まさにそうです。私も「あの人、なんかずっとボケて見えてるな」って思ってたら霊だったってことがあるんですけど、そういう“何か変な感じ”も含めて表現されているんです。あと今まで見てきた中で、一番自分の体験に近いことが描かれている作品でした。“見えているけど、それを周囲に言えない感じ”が本当にリアルで、「わかるわかる、それ私も辿った道だよ」って(笑)。主人公が葛藤する姿が、まさに昔の自分を見ているみたいでした。
――ここまでお二人が口を揃えて「リアリティがある」というのはすごいですね! ちなみに、中村監督は実際に“見える人”ではないんですか?
中村監督:僕は全然見えないですね。なので今回の映画は、これまで様々なホラーを手がけてきた経験とか、膨大なリサーチの蓄積で作り上げた表現です。それをこうやって、霊能者の方にリアルだと言ってもらえるのはすごく嬉しいです。……まあ、実は一度だけ、見えたっぽい体験をしたことはあるんですけどね。でも疲れてたし酔っ払ってたから、そのせいかなと(笑)。
松嶋:私はそれを聞いて、監督は“見える人”なんじゃないかと思ってますよ。疲れているとか、酔っ払っている時って、見えやすいんです。
はやとも:僕もそう思いますね。というか、基本的に誰しもが“見える人”だと思うので。実はみんな見えているけど、普段は理性で“見えないモノ”としてスルーしているだけ。それが、疲れてたり酔っ払ってたりすると、理性が緩んで見えるようになるんじゃないかと。
松嶋:そう、特に大人になるにつれて、理性がどんどん働いてくるのはあると思うんです。でも大人になっても、“何かにピンと来る”とか“なんかこの場所が気になる”とか、そういう直感て残ってたりしませんか? 実は誰しも、そういう感覚は持っているんだと思いますよ。
――なるほど……! そう考えると「見える子ちゃん」は、誰しもが元々持っている“見える感覚”を思い起こすヒントになる映画とも言えるかもしれません。
松嶋:そうですね。ぜひ「自分は見えない」と思っている人は、この映画を見てほしいです。そういう感覚をすぐに体験できるので。すでに“見える人”を自覚している人は、「ようやく自分を理解してくれる作品が出てきた」と感じるはずです。あと、素直に映画として謎解き要素があって面白い! 私は原作も読んでいたんですが、原作を知っている人ほど驚く仕掛けもあります。
はやとも:主人公が途中から“見える人”になるという設定なので、見えない人も身近に感じられる映画ですよね。「もし自分が見えるようになったらこんな感じで葛藤するのかな」って想像できるし。松嶋さんの仰るように、“見える人”は色々と共感できますね。でも何より、普通に映画として面白いんですよ。なので、純粋に楽しみに映画館に行ってほしいなって思います。
映画「見える子ちゃん」
https://movie-mierukochan.jp/
出演:原菜乃華 久間田琳加 なえなの 山下幸輝 堀田茜 吉井怜 / 高岡早紀 京本大我 滝藤賢一ほか
原作:泉朝樹『見える子ちゃん』(MFC/KADOKAWA刊)
脚本・監督:中村義洋
音楽:堤博明
主題歌:BABYMONSTER「Ghost」(Sony Music Labels Inc.)
製作:遠藤徹哉 山本大樹 鶴丸智康 小林克彦 中村浩子 下田淳行 荒井ジョースケ 渡辺章仁 五十嵐淳之 企画:二木大介
プロデューサー:天馬少京 星野秀樹 ミュージックスーパーバイザー:溝口大悟 ラインプロデューサー:及川義幸
撮影:川島周 照明:本間大海 録音:小川武 美術:久渡明日香 装飾:大熊雄己 編集:松竹利郎
VFXスーパーバイザー:齋藤大輔 スクリプター:小林加苗 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:田中マリ子 梅原さとこ
キャスティング:神林理央子 アシスタントプロデューサー:原田浩行 助監督:猪腰弘之 制作担当:壁井優太朗
協力プロデューサー:岡本圭三 プロデューサー補:張楠 宣伝プロデューサー:黒澤佳奈
製作幹事・配給:KADOKAWA 制作プロダクション:ツインズジャパン
©2025『見える子ちゃん』製作委員会
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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