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「史上最も恐ろしい映画」「本能的な恐怖を思い出す」とネット上で賛否両論を呼んだカナダのホラー映画がいよいよ日本上陸!
2022年にカナダで制作され話題を呼んだホラー映画「SKINAMARINK/スキナマリンク」が、2025年2月21日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷・新宿シネマカリテ・池袋 HUMAX シネマズほか全国で公開中だ。
本作は、人々の悪夢を再現した短編映像をYouTubeチャンネルに投稿し、新鋭の映像作家としてキャリアを重ねるカイル・エドワード・ボールの長編監督デビュー作。
制作費はわずか15,000ドルにもかかわらず、北米で692館という異例の規模で公開され、最終興行収入約200万ドルという驚異の数字を叩き出した。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「パラノーマル・アクティビティ」に代表される、超低予算ホラー映画の新星だ。
まずは作品公式のあらすじをご覧いただこう。
<あらすじ>
真夜中に目が覚めた二人の子供、ケヴィンとケイリーは、家族の姿と家の窓やドアがすべて消えていることに気づく。取り残された二人は、歪んだ時間と空間に混乱しながら、暗闇に潜む蠢く影と悪夢のような恐ろしい光景に飲み込まれていく―。
先に言うと、おそらく本作を観た人は「すごく怖いと思う人」と「全く怖いと思わない人」に二分されるであろう。ただ後述の通り、この手が“刺さる人”には異様に怖い作品だ。
本編は、恐怖ムービー特有のレトロでざらついた映像と、視聴者に解釈を委ねるシーンの連続で構成されており、いわば”実験的”と呼べるタイプのホラー。
真夜中に家の中を忍び歩く二人の子供たちの顔はほとんど映らず、幼い彼らの会話が途切れ途切れに聞こえるだけ。視聴者は、どちらかといえばこの子供たちと近い目線で、異空間に切り取られてしまった真夜中の家を彷徨うことになる。
そこで視聴者が目にするのは、VHSテープやおもちゃなどのノスタルジーなアイテムが暗い部屋に散らばっている光景。1930年代の古いカートゥーンアニメを繰り返し流しているブラウン管テレビの光源が、それらをどこか異様なものとして照らす。
監督は本作について「70年代映画へのオマージュではなく、その時代を感じさせる作品にしたかった」とも語っているが、ブルーライトフィルター付きのUVガンを使用することにより漂う一種ネオリアリズムのような雰囲気も、恐怖感を伴う見応えに直結している。
簡単に言うとこの「SKINAMARINK/スキナマリンク」、子供時代に1人で留守番をしている時なんかに感じた、“家の中に何かがいる”感覚を思い出させてくる映画なのだ。
頭のどこかでこの感覚を覚えている人にとっては、まさに最恐。“幼少期の解決していなかったあの恐怖”が煽られる。記憶に蓋をして、忘れようとしていたのに……と。
はっきり言って、作中にわかりやすく怖いものはほとんど映らない。ただ、明らかに違和感のある構図で何もない白い壁が映ったりして、「どうして今“そこ”を映しているの?」という恐怖感が湧き上がってくるのだ。
また、恐怖感をより高めてくるのがサウンド演出。大きな音が使われる衝撃的な瞬間もあれば、音は最小限で字幕が表示されるシーンもある。これらの組み合わせにより、「今、何か起こったのか……?」と視聴者は想像力を膨らませてしまい、どんどん恐怖の渦に飲まれてしまう感じだ。
なお本作は、監督が実際に幼少期に住んでいた家で撮影されたという。現実と夢の間を彷徨うようなストーリーから漂う不思議な生々しさは、この辺のリアリティから来るものかもしれない。
総じて、先行して本作が公開された海外で、多くの媒体が「2023 年のベストホラー映画ランキング」に本作を選出したというのも納得。
実験的なビジュアル表現は元より、上述の通り「音の演出」も本作の視聴感を左右するポイントで、劇場のリッチな音響でこそ真の恐怖が味わえると思うので、ぜひ映画館で体験してほしい。
「SKINAMARINK/スキナマリンク」
監督・脚本:カイル・エドワード・ボール
出演:ルーカス・ポール/ダリ・ローズ・テトロー
2022年/カナダ/英語/100 分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/原題:SKINAMARINK
日本語字幕:高橋彩/配給:ショウゲート/G
© MMXXII Kyle Edward Ball All Rights Reserved
公式 HP:skinamarink.jp
公式 X:@skinamarink_JP
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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