「モンペをお洒落に着こなす美少女」の絵葉書も超高額に!? 話題の古書店主が集めた戦前・ 戦中の珍奇な絵葉書たち
いま密かに話題の古書店「書肆ゲンシシャ」の店主・藤井慎二氏が、同店の所蔵する珍奇で奇妙なコレクションの数々を紹介!
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いま密かに話題の古書店「書肆ゲンシシャ」の店主・藤井慎二氏が、同店の所蔵する珍奇で奇妙なコレクションの数々を紹介!
「驚異の陳列室」を標榜し、写真集や画集、書籍をはじめ、5000点以上にも及ぶ奇妙なコレクションを所蔵する大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。
まるで、温泉街には似つかない雰囲気だが、SNS投稿などで同店のコレクションが話題を呼んでいる。その奇妙さに惹かれ、九州のみならず全国からサブカルキッズたちが訪れる、別府の新たな観光スポットになった。
知覚の扉を開くと、そこは異次元の世界……。ようこそ、書肆ゲンシシャへ。
――年始にSNSを見ていたら「シティ情報おおいた」で『ジョニーは戦場へ行った』(KADOKAWA)を紹介する藤井さんのポストが流れてきました。
藤井慎二(以下、藤井) 毎月「シティ情報おおいた」で書評を担当していました。2025年2月から別の方に連載を引き継ぐことになったのですが、毎回「ゲンシシャ」らしいカラーを出した本を紹介していて、今回は世相も考慮して、この本を選びました。
――「シティ情報おおいた」というのはタウン誌ですよね? 新年早々、どえらい本を紹介しているなと……。
藤井 『ジョニーは戦場へ行った』は最近、角川新書から復刊されました。5〜6年くらい連載を続けてきましたが、毎月1冊紹介するのはかなり大変なことです。今、発行されている号から、「鯛文庫」という大分市に新しくできた本屋の店主さんに引き継ぎました。
――鯛? 大分には「ゲンシシャ」以外にも個性的な古本屋がいくつかあるんですね。
藤井 別府にも「まわれ虎」という古本屋があり、僕もトークイベントに出させてもらうなど交流があります。
――虎……。個人書店の経営というのは実際どうなのでしょうか? 本好きなら一度は夢見てしまうものです。
藤井 いかに良い本を仕入れられるかに懸かっていますよね。あまり市場に出回らない1万円以上で売れるような本を仕入れ続けられたら経営は安泰ですが、そういう本はなかなか地方では見かけません。
――以前、藤井さんは神保町やネットオークションで書籍を仕入れているというお話も聞きしました。
藤井 そうですね。ほかにも、ゲンシシャではお客様の本を査定して買い取っています。余裕があれば東京まで仕入れに行くこともあります。
――ゲンシシャの場合、藤井さんが営業をひとりで切り盛りしているため、リソース的な限界もありますよね。
藤井 そう考えると、東京の郊外でお店をするのが一番有利だと思います。例えば八王子であれば仕入れもしやすいし、家賃も都心より安いですよね。そこで、ネット通販も駆使して、リアルと両輪でやっていくのが効率的だと思います。
――駅から離れた古書店はどのように生計を立てているのか気になっていましたが、ネット通販などさまざまな方法を使って商売しているのですね。
藤井 Amazonだけではなく、最近はメルカリShopsなどで海外に向けて販売することもできます。
藤井 “衛生博覧会”はご存知ですか?
――聞いたことないですね。
藤井 今年の4月から大阪・関西万博も始まりますし、今回は博覧会に因んだテーマです。これはテレビやラジオが普及していなかった明治時代から昭和中期にかけて、全国で開催されていた展覧会・博覧会です。例えば性病、虫歯といった医学的な知識、衛生思想の啓蒙を目的に、人体模型などが展示されていたんです。
――なんだか今回は真面目なテーマですね。
藤井 あくまでも衛生思想の啓蒙という体裁で催されていたのですが、実は一種の見世物小屋のような側面もありました。
――え?
藤井 江戸川乱歩の小説にも登場するくらい、衛生博覧会というのは猟奇趣味の強いイベントだったんですよ。
――やっぱり、そういう方向性になってしまうのですね……。集客のためでしょうか?
藤井 荒俣宏さんの『衛生博覧会を求めて』(ぶんか社)には、当時の衛生博覧会の様子が写真付きで紹介されています。同書によると、昭和40年代まで、全国各地でたびたび行われていたようです。
――男性器の模型みたいな写真が載っています。
藤井 性病にかかった男性・女性それぞれの性器の“ムラージュ(蝋製模型標本)”です。
――山形や名古屋など全国各地に「巡業」していたようですね。
藤井 衛生博覧会の絵葉書もあります。これは北海道の空知で行われた「空知衛生展覧会」の絵葉書です。空知支庁長や警察署長が写っていますが、よく見るとドクロが描かれた記念スタンプが押されています。
――なぜ……? 今なら炎上案件かもしれません。
藤井 空知衛生展覧会では胎児の人体模型がたくさん飾られていて、妊娠や分娩について紹介しています。あとは虫歯、結核、寄生虫……。
――当時はネットもなく、このような情報に接する機会や手段もないため、みんな衛生博覧会へ行って勉強していたのでしょうね。
藤井 そうですね。生理、妊娠、性病などの話題は、今以上に話しにくい時代でした。そのため、衛生博覧会が知識を得る貴重な機会になっていたのだと思います。
――元祖フェムテック展示会の側面もあったのかもしれませんね。当時の写真を見る限り大盛況ですね。もしかすると、大阪万博よりも盛り上がっているんじゃないですか?
藤井 「衛生大博覧会」では、外国人の死刑囚の生首も展示していたようですね。
――それもムラージュですか?
藤井 いえ、本物です。
――今では絶対に展示できないでしょうね。
藤井 ちなみに、死刑囚の生首は東京慈恵会医科大学の初代学長の所有物だったようです。
書肆ゲンシシャ
大分県別府市にある、古書店・出版社・カルチャーセンター。「驚異の陳列室」を標榜し、店内には珍しい写真集や画集などが数多くコレクションされている。1時間1,000円で、紅茶かジュースを1杯飲みながら、それらを閲覧できる。
所在地:大分県別府市青山町7-58 青山ビル1F/電話:0977-85-7515
http://www.genshisha.jp
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