四国の剣山にソロモン王の秘宝を求めた男の記録「宝と夢と幻と」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

    宝と夢と幻と

    西田茂雄 写真/古川順弘 文
    写真100点を軸に明かされる剣山発掘秘話

    「探し求めること自体に価値がある。人生、生き様、そして死に様。真っすぐに生きた人間が、かつて剣山にいた」

     本誌「月刊ムー」編集長・三上丈晴氏の言葉である。彼のいう「真っすぐに生きた人間」の名は、宮中要春。明治34年(1901)に徳島県に生まれ、その後、北海道に渡って農業に従事していた彼は、あるとき、ひょんなことから「かつて栄華を極めた古代イスラエルのソロモン王の秘宝が、四国の剣山に埋まっている」という伝説を知り、これに取り憑かれることとなる。やがて彼は、50代の半ばにして何を思ったのか、北海道の家族を放擲して故郷に帰還、以後20年にわたって剣山に籠もり、ソロモンの秘宝を求めてひとり、ひたすら発掘に打ち込むこととなる。
     昭和45(1970)年、この宮中に会うために、剣山を訪ねた男がいた。カメラマン西田茂雄である。このとき、宮中は69歳、そして西田はまだ20歳。親子以上に年の離れたふたりはなぜか互いに惹かれ合い、西田はその後、宮中の死まで、この夢に取り憑かれた男を被写体にし続けることとなる。撮影された写真の数は、何と3276枚にのぼるという。

     本書は、この西田の撮影した何とも味わい深い写真100点を軸に、このほぼ無名の男による、剣山の発掘秘話を明らかにする異色作。「人間、夢をなくしたら、猫や犬と一緒でしょうが……」という宮中の言葉を嚙みしめながら鑑賞したい。

    国書刊行会2640円(税込)

    (月刊ムー 2025年1月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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