フェアリーやノームが誘う幻惑の異世界~入り口は全国区/平成UMAみやげ

文・写真=山下メロ

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    バブルをまたいだ平成は、いわゆるオカルト事象がやんわりと世に受け入れられていた時代でもある。「ファンシー絵みやげ」研究家の山下メロが、当時を彩った”UMAみやげ”の世界をご案内。今回は小さな「妖精」を捕獲する!

    「光るアンテナ」は平成レトロの必須アイテム

     私は、以前に放送された『マツコの知らない世界』で平成レトログッズについて紹介しましたが、その中で個人的に思い入れが強いのが「光るアンテナ」です。90年代末期、携帯電話が低価格化して普及していく中で、まだアンテナを引っぱって伸ばしていた時代に、個性を出すために生まれた商品でした。

     光るアンテナの商品名も「カクテル」「スパークリング」など、その光り方の差をどう言語化するのかという問題に対し色々と工夫されております。光り方以外の特徴を使った「段々くん」など面白いものは多いのですが、膨大な量がありますのでそれは別の機会にどこかで書くとして、今回私が気になったのは「フェアリーステップ」です。次々と光り方が変わるさまを伝えるのに、妖精の足どりにたとえている……なんという詩的表現でしょうか。パッケージにも王冠をかぶり、蝶の羽をはやした妖精が描かれています。

     昆虫の羽を背負っているといえば、トンボの羽を背負っていた「玉姫様」の頃の戸川純さんを思い出してしまいますが、いわゆる妖精の特徴のひとつです。

     妖精もまた、目撃談などがありUMAの一種ととらえることができます。ピーターパンのティンカーベルなどが有名ですが、寓話などにたびたび登場する妖精やドワーフなどは幼少期から触れる機会のある伝統的なモチーフでした。また、スタジオジブリの『かりぐらしのアリエッティ』もまた小人の生活を描いたアニメ映画です。

    1917年の「コティングリー妖精写真」でも、いわゆる妖精らしい姿が撮影されたことで話題になった。

     普遍的なモチーフである妖精などの小さき者たちは、ファンシー絵みやげにおいて商品化されていたのでしょうか。

    ファンシー絵みやげの中の小さき者たち

     私がこれまで紹介してきたUMAの「ファンシー絵みやげ」は、目撃された場所に由来し、そのエリアの観光地などで販売されていました。それに対して妖精は、観光地との結びつきが希薄です。それゆえ、特に観光地とは関係のないキャラクターとして商品化されています。

     まずは女の子向けの観光地みやげとして人気だった「ファンシー絵はがき」では、風景のイラストによく妖精が登場します。

     この上の方に描かれているのは、おそらく妖精でしょう。イラストに華を添える存在として重宝されているのです。

     さらに、妖精がメインとなっている「ファンシー絵しおり」があります。

     その名も「花の妖精」。
     こういった妖精は男の子向けのイラストにはあまり登場しませんが、ファンシー絵みやげにおいて意外な形で描かれているものがあります。それがこちらです。

     群馬県・谷川岳のファンシー絵みやげキーホルダー「THE SMALL MAN STORY」。SMALL MAN……つまり小人ですね。葉っぱをかついだ小人よりもさらに小さく妖精が描かれています。
     背景は放射状ホログラムかつステンドグラス調。まるでディスコティックのダンスフロアーのようです。これも小人から放たれる人知を超えた神秘性やオーラといったものの表現なのでしょう。

     同じシリーズで、もっと牧歌的に描かれているものもあります。それがこちら。

     背景の塗り分けの感じもまた、異世界感なのかもしれません。

     とってつけたような「氷見海岸」ですが、特に地域に由来しない小人については、このようにあとから地名のタグをつけるようなパターンが多いのです。しかし樹木が描かれ、どちらかというと山や森のイメージが強い小人、ノームにも関わらず富山県の氷見海岸なのはなぜなのでしょうか……。

     こちらは東京都の奥多摩湖で発見されたノームのマグカップ。
    「ぐりとぐら」がタマゴを運ぶように「スーパーマリオブラザーズ」のスーパーキノコのような毒々しくカラフルなキノコを運んでいます。
     こちらは「GNOME?」と書かれています。おそらく本人たちが自分を「ノーム?」と思うこともないでしょうし、これは目撃者側の視点ですね。目撃した人間が「ノームじゃないか!?」と思っている、まさにUMAです。

     そして下に書かれた「OASOBI DAISUKI ITSUDEMO HAPPY HAPPY」
     和文表記に直すと「お遊び 大好き いつでも ハッピー ハッピー」と書かれています。しかも間にやはりカラフルなキノコ。

     お遊び、そして、いつもハッピーハッピー。

     これはもうマジックマッシュルームで間違いないでしょう。

     一応、子ども向けのお土産品なんですけどもね……。

     そう考えると、さきほどの葉っぱもハッパ……いや、形が違いますか。なにしろ森の小人やキノコは、サイケデリックムーブメントやドラッグカルチャーとも密接です。

     これらのUMAの目撃証言も、単なる幻覚状態だったのか、それとも……。

    (2020年8月27日記事を再編集)

    山下メロ

    平成レトロの提唱者。ファンシー絵みやげなどバブル時代周辺の懐かし文化を紹介する。著書に「平成レトロの世界 山下メロ・コレクション」(東京キララ社)など。

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