霊に憑依された兄弟がテレポーテーションを連発!バチカンも調査した「パンシーニ兄弟」事件の謎
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
記事を読む
「現代の“魔女狩り”フォークホラー」と銘打った話題の映画『ナイトサイレン/呪縛』。本作に秘められた“恐怖の深層”について、スロヴァキアの新星映画監督がムーに語った!
8月2日(金)より全国公開中の映画『ナイトサイレン/呪縛』が“怖すぎる”と話題だ。日本人にとっては馴染みの薄いスロヴァキアとチェコの合作映画だが、2022年のロカルノ映画祭(スイス)で金豹賞<最高賞>を受賞するなど、業界での評価も極めて高い。
本作のストーリーは、遺産相続のためスロヴァキアの人里離れた故郷の村に帰ってきた女性、シャロータを中心に展開する。20年前、母親の虐待から逃れるために村を飛び出した彼女だが、その際に妹のタマラを誤って崖から突き落としてしまったトラウマを抱えている。シャロータはかつて魔女が住んでいたとされる山小屋に滞在し、ミラという謎の女性と心を通わせるが、今なお中世の民間伝承や迷信の中で生きる地元住民から異端視され、やがて事態は思わぬ方向へ――という、全編を通して不穏な空気と閉塞感に包まれた「現代の“魔女狩り”フォークホラー」を標榜する。
しかし、本作の高評価の背景にはホラー作品としての完成度や映像の美しさもさることながら、そこに秘められたメッセージ性も強く影響しているようだ。そこで今回、編集部は本作が長編2作目となるテレザ・ヌヴォトヴァ監督に緊急インタビューを敢行。1988年、チェコスロヴァキア生まれの新星が作品に込めた“本当の意味”について、存分に語ってもらった!
――『ナイトサイレン/呪縛』を見て、かつてヨーロッパで横行した魔女狩りが、形を変えながら、今も存在しているのだと訴えている気がしました。
テレザ・ヌヴォトヴァ監督(以下、ヌヴォトヴァ) その通りです。女性に対する抑圧は、間違いなく現代にもあります。日本の状況はわかりませんが、例えば欧米では中絶のように女性が自分の体について自ら決める権利や、離婚の自由さえ奪おうとする主張が幅を利かせつつあります。私の映画はもちろんメタファーなのですが、実は映画よりもずっと悲惨なケースがあって、問題提起する必要性を感じたことが本作の誕生につながったのです。
――直接的にインスピレーションとなった出来事があるのでしょうか?
ヌヴォトヴァ 私自身も、そして皆さんも、自分の人生を考えた時に「こうしなければ」と思うことがあると思います。でも、よく考えると、それは自分が本当にやりたいことではなくて、社会から押し付けられたことに過ぎない場合も多い。そして世界には、自分の希望や、本当の自分らしさに気づくことさえできない環境に置かれた女性がいるのです。
しかも、社会がこういった抑圧を見て見ぬふりをしている面がある。本作の舞台になったような田舎の村では、理不尽な慣習に従うことが暗に強制されてしまう場合も多いのです。抑圧されている人々に、臆することなく正直に自分と向き合い、自らに本当の気持ちを問いかけてほしい。そして、閉塞した状態から抜け出すためには、同じ想いを抱いている人と繋がることも大事だと、作品を通して伝えたいと思いました。
――日本人にとっても決して無縁ではない、むしろ自分事として見て、考えるべき作品だと感じます。
ヌヴォトヴァ この映画を単なるフィクション、ファンタジー、ホラーと見てほしくありません。それらの要素は、あくまでも物語を力強く伝えるための手段で、本作の核にあるのはリアルで普遍的なトピックなのです。観客の皆さん一人ひとりに問いかけているのだと感じてほしいです。
――本作の舞台となった村は、住民全員がクレイジーというか、驚きの描写がたくさんありました。それらはもちろんメタファーで、あんな村はさすがにスロヴァキアに実在しませんよね?
ヌヴォトヴァ その答えは「はい」とも言えるし、「いいえ」とも言えます。誇張している部分はもちろんありますが、とある人類学の本によると、スロヴァキアの人里離れた村では、現代でも宗教的背景から魔女を信じている人が一定数いるそうです。私自身びっくりしたのですが、そういった人たちは初対面の人に本心を明かすことはありませんし、普段は現代的な暮らしを送っています。つまり、完全なファンタジーとも言い切れないのです。
――劇中で描かれるイースターの風習にも仰天しました。あれに近い風習がスロヴァキアには残っているのですか?
ヌヴォトヴァ 女性をムチで叩いて、頭から水をぶっかける行事ですが、今でも毎年スロヴァキアで行われています。ハッピーなお祝いごとのはずが、なぜか女性が叩かれ、びしょ濡れにされるのです。
――伝統的な行事で、文化なのだと言われても、なかなか納得することが難しいショッキングな光景ですね。
ヌヴォトヴァ しかし、その環境に当事者として身を置いてしまうと、女性の方も叩かれたり水をかけられたりしないと、「私は嫌われているのかも」と思ってしまうんですね。
女性が男性に叩かれて、全身水浸しにされて、「ありがとう」と言う――よく考えれば不条理な話ですが、子どもの頃からその行為が当たり前になっているので、誰も目の前で起きていることに疑問を抱かない。私も実際、本作を撮るまで深くは考えていませんでした。
もはやキリスト教ともまったく関係のないはずの風習ですが、今回なぜこういった行事が残っているのか考えてみました。おそらく、その狙いは(当事者たちが意識しているかどうかにかかわらず)男性と女性のポジションを固定化し、家父長的な仕組みを維持することにあるのだと思います。ですから、これが当然ではないのだと気づいてほしいという期待も込めて、物語に組み込んだのです。
――それを聞いて、腑に落ちました。この映画から鑑賞者が感じる本当の恐ろしさとは、まさに、物事の異常性に誰も気づいていない点なのだと思います。物事を客観的に見たり、その意味について考えることを放棄して、ただ「そういうものだから」「昔からこうだから」と続けてしまう、そんな人間の状態こそが本当に無気味なものなんですね。
ヌヴォトヴァ 本作の鑑賞者は、はじめ魔女は極めて邪悪で、怖ろしい存在なのだと感じるかもしれません。でも、物語が進んでいくうちに、実は魔女こそが(登場人物の中で)一番まともな存在で、本当に怖いのは集団心理や社会の側だと感じはじめると思います。
誰もが、未知のものに対しては恐れを抱くものです。でも、それを理解しようと思わなければ、恐怖だけがどんどん増幅されて凶暴な行為に走ったり、他人の自由を奪ってしまうことにつながりかねない。ですから、一番恐ろしいものとは自分たちと違う存在ではなく、自分たちの内にある恐怖心そのものだと、そんなメッセージを作品に込めました。
――物語の要所要所で、鹿や白蛇といった動物が印象的に登場しますが、どんな意図が込められているのでしょうか?
ヌヴォトヴァ あれは何の象徴だったのか、ここで私が答えないほうがいい気がします。正解や不正解はありませんので、個々の鑑賞者に作品のテーマと向き合っていただき、イマジネーションを拡げて意味を考えていただけましたら幸いです。
――監督から鑑賞者に投げられた問題というわけですね! 議論が盛り上がることにこそ大きな意味がありそうです。
ヌヴォトヴァ はい! みなさんからお寄せいただくご見解を楽しみにしています。
――最後に、映像やストーリーから醸し出される神秘性や幻想性も『ナイトサイレン/呪縛』の大きな特徴だと思いますが、監督ご自身は理屈で説明できない不思議な現象を体験したことがあるのでしょうか?
ヌヴォトヴァ UFOや幽霊は見たことがないのですが、広い宇宙のどこかに人類以外の知的生命体がいても当然だと思いますよ。ただ、もしも彼らがオフィシャルに地球にやって来たとしたら、(先ほどもお話したように)未知の物事に対してことさら恐怖を増幅させて思わぬ行動に出てしまうのが人間ですから、危機的状況を自ら悪化させてしまうかもしれませんね。
――本作を見て、未知なる物事と対峙した際に自らの内側に湧き起こってくる恐怖をどう克服するべきか、心構えを新たにすることが重要ですね。ありがとうございました。
* * *
【作品情報】
『ナイトサイレン/呪縛』
https://nightsiren.jp
監督:テレザ・ヌヴォトヴァ
出演:ナタリア・ジェルマーニ、エヴァ・モーレス、ノエル・ツツォル、ジュリアナ・ブルトフスカほか
2022 年/スロヴァキア、チェコ共和国/スロヴァキア語/109 分/カラー/スコープ/5.1ch/PG12
配給:OSOREZONE、エクストリーム
©︎BFILM s.r.o., moloko film s.r.o., Rozhlas a televízia Slovenska 2022
webムー編集部
関連記事
霊に憑依された兄弟がテレポーテーションを連発!バチカンも調査した「パンシーニ兄弟」事件の謎
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
記事を読む
悲劇の怪物「メロンヘッド」の正体は!? 政府の人体実験疑惑も囁かれる悪夢の都市伝説/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
記事を読む
謎の儀式か悪魔の憑依か? シカの亡骸を囲んで奇妙な振る舞いを見せる男女をトレイルカメラが撮影
カナダの大自然に設置されたトレイルカメラが映していたのは、シカの死骸に起きた恐ろしい出来事だった――!
記事を読む
君は同級生に「おまえの隣に霊が見える」と宣告されたことはあるか?/大槻ケンヂ・医者にオカルトを止められた男(9)
学校のクラスにいた「見える」同級生が賑わせた、ひと時の悪魔騒動。ほんのイタズラだったのか、それとも…?
記事を読む
おすすめ記事