生者による死者の語りを巡る「幽霊」対談! 「日本怪異幽霊事典」×「教養としての最恐怪談」
この夏、時を同じくして世に放たれた『日本怪異幽霊事典』と『教養としての最恐怪談』。幽霊とはなにか? 怪談の核とはなにか? をひもといた両書の著者による、最恐の幽霊対談が実現!
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朝里樹 著
幽霊や怪異、日本史に関心を持つ読者におすすめ
日本および世界の「怪異」を題材として、膨大な情報を蒐集・整理し、大部の「事典」という形式に編み上げるという、気の遠くなるような作業に、真摯に取り組みつづけたことで、斯界に前人未到の地位を築き上げてきた「怪異妖怪愛好家・作家」朝里樹氏。
本書は、そんな朝里氏の手がけた最新の事典である。曰く、「この日本において人々がどのように人の死のその先を記録し、創作してきたかといった事例を集めた事典」。
本書では、項目を古代、中世、近世、近代、現代と時代順に分別。その中でそれぞれを五十音順に収録する形式が採用されている。
収録された幽霊譚は、何と800以上! そのヴォリュームにまずは圧倒される。
古くは『古事記』や『日本霊異記』『今昔物語集』といった定番から、だれも知らないようなマイナーなものまで、膨大な資料を駆使して古今の幽霊譚が淡々と記されている。特に現代篇ともなると、従来の書籍資料に雑誌やネットなども加わり、まさに百花繚乱の様相を呈している。
頭から通読して「幽霊」という観念の歴史的変遷に感嘆するもよし、好きな項目を拾い読みするもよし、格好の幽霊便覧としてともかく書架に確保するもよしという、実に贅沢な読書体験を約束してくれる本事典。朝里ファンはいうに及ばず、広く幽霊や怪異、それに日本史に関心を持つ読者におすすめする次第である。
(月刊ムー 2024年9月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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