ハロウィンの起源は「古代ケルトの大晦日」! その日は妖精たちが現れやすい!?/魔女が教えるハロウィン 第1回

文=ヘイズ中村

    日本を代表する魔女にして魔術師・ヘイズ中村氏が、ハロウィンについて指南する集中連載! 第1回は、「そもそもハロウィンとは何か」がテーマです。

    10月31日は「古代ケルトの大晦日」

    「お菓子くれなきゃ、イタズラするぞ!」の掛け声とともに、可愛らしい仮装をした子供たちがご近所を練り歩く。そんなハロウィンの風景は、日本でもすっかりおなじみになった。日本では、主役が子供たちというより、流行に敏感な若者たちへシフトしていることから、お菓子云々よりは年に一度、奇抜な仮装でパーティー気分を楽しむ日、というイメージが強いかもしれない。
    思い思いの仮装をして「お菓子くれなきゃ、イタズラするぞ!」と近隣の家を回る子供たち。
     欧米ではどこもハロウィンが実践されているという思い込みもあるが、本来はイギリス、アイルランド、カナダ、アメリカあたりの習慣である。実際、筆者もハロウィン当日のアメリカに滞在したことがあるが、ホテルで一緒になったスウェーデンからのご夫妻に「街ではいったい何が起きているのですか? もしかしたら、これがハロウィンっていうもの?」と、質問されたことがあるほどだ。
     ハロウィンとは、そもそも何のイベントなのだろうか?
     その起源は古代ケルトのドルイド教にある、という説が一般的だが、ドルイド教が実際にどんな教えをしていたのかは、いまだにはっきりとわかってはいない。確かなのは、古代ケルトの文化では、10月31日が一年の終わりで、新年は11月1日の「サーウィン」から始まっていた、ということである。
    ドルイド教の男性を描いた18世紀の版画。ハロウィンの起源はドルイド教との説がある。

     なぜ、こんな半端な日付で一年が切り替わるかというと、当時の農耕や家畜のサイクルが原因である。さまざまな穀物や果実の取り入れは、ほぼ10月中旬で終わる。その後は、貴重な飼料を冬中もたせるために、種牛や種豚などほんの数頭だけを残して、残りの家畜をすべて殺し、塩漬肉として保管する作業が始まる。そうした一連の収穫が終わるのが10月末、というわけだ。  現代とは異なり、古代の冬にできる活動などたかがしれている。この収穫で冬を越せるのか?という不安を抱えながら新年を迎える大晦日だったはずだ。
     そこでせめて今日だけは……ということか、肉をしっかり食べて祝う日でもあったようだ。

    境目の日に、妖精たちが現れる

    ジョン・ダンカン作「妖精の乗り物」。ハロウィンの日には、こうした存在が現れやすくなるという。
     大晦日は、季節を分ける大きな節目の日だ。「境目の日」というのはオカルト的にはさまざまな霊的潮流が切り替わる日でもある。日本人ならば、大晦日にNHKで「ゆく年、くる年」が流れて除夜の鐘が響きだすときの、あの何ともいえず厳粛で神秘的なムードを思い浮かべればわかりやすいだろう。
     こうした時期には霊界とこの世の境目が通過しやすくなり、エース・シーアと呼ばれる妖精が現世に現れやすいとされている。これはもともと「塚人」という意味の言葉で、塚=墓でもあるので、要はご先祖様ともいえるだろう。機嫌を損なうと怖い存在とされていたので、供物を捧げて機嫌を取っていたらしい。
     これこそ「イタズラかお菓子か」の源流かもしれない。そう考えれば、奇抜な仮装も「毒を持って毒を制す」といった解釈ができるだろう。怖い存在と同化することで害をなされないようにするわけだ。
     こうした前キリスト教的イベント「サーウィン」がハロウィンと呼ばれるようになったのは18世紀ごろらしい。カトリックでは11月1日がすべての聖人のための日、と指定されている。その前夜祭という呼び名が訛ってハロウィンとして定着したのである。キリスト教の祝祭に、古代異教のこだまが感じられる典型的な逸話でもある。
    
     現代の魔女たちはハロウィンを、元来の呼び名であるサーウィンの大サバトとして大いに祝っている。複数のグループで合同儀式を行ったり、歌やダンスを披露したりして、開放的に楽しむことが多いようだ。
     筆者もこの日は、日頃のファンの方々への感謝として、気軽なパーティーを催すことが多い。古代の冬ほどの厳しさはないかもしれないが、現代はまた別の意味で辛く苦しい、という人が多いだろう。その苦しみを一瞬でも忘れ、新たな日々に向かっていくために、である。
    

    ヘイズ中村

    魔女・魔術師・占い師・翻訳家。中学生頃から本格的に西洋密儀思想の研究を開始。その後、複数の欧米魔術団体に参入し、学習と修行の道に入る。現在はタロットを使った魔術的技法に関する本を執筆しながら、講座などでの身近な人との触れあいを大切に活動中。

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