名作は進化して輪廻する! 『ファイナルファンタジーVII リバース』から連想されるムー的ワード/卯月鮎・ゲームー案内

文=卯月鮎

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    書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎が話題のゲームから連想されるオカルト、超常現象、不思議をピックアップ。これらを知っておけばゲームがもっと楽しくなるかも!?

    壮大な物語が美麗に再誕

     1997年にPS1で発売され、シリーズ屈指の人気作となった『ファイナルファンタジーVII』。その壮大な物語世界を最新の技術で蘇らせるリメイクプロジェクト第2作目『ファイナルファンタジーVII リバース』が、2月29日に発売されました。

     神羅カンパニーとの壮絶な戦いを経て、魔晄都市ミッドガルを脱出した主人公のクラウドと仲間たち。未知なる荒野へ足を踏み出し、各地を巡る旅が始まります……。

     いくつかのワールドエリアに分かれた世界で、自由な冒険が楽しめる本作。人工娯楽施設「ゴールドソーサー」や星命学の聖地「コスモキャニオン」、幻想的な「忘らるる都」など、おなじみの場所も美麗なグラフィックで再構築されています。ゲーム史に残る”あの名場面”がどうなっているかも楽しみです。

    「空チョコボ」「山チョコボ」「バギー」など多彩な移動手段で世界の隅々まで探索できる © SQUARE ENIX

     では、『ファイナルファンタジーVII リバース』から連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。

    ムー的キーワード1:妖精猫のいたずら

     ゴールドソーサーで出会い、仲間となるネコ型ぬいぐるみ占いロボットのケット・シー。憎めない姿と軽妙なトークで、『ファイナルファンタジーVII』のマスコット的存在です。

     ケット・シーといえば、思い浮かぶのがケルト文化圏に伝わる妖精猫ケット・シー(ゲール語で「Cait(猫) Sith(妖精)」)。こちらのケット・シーは大型犬を思わせる大きさで、黒い体、胸に白い斑点があり、毛が逆立ち、背が弓のように曲がっている姿で語られます。スコットランドの人々はこの邪悪な生き物を「魔女の変身した姿」と信じていたそうです。

     妖精猫ケット・シーのイメージの元になったといわれているのが「ケラスの猫」。ケラスとはこの種の猫が最初に見つかった村の名前。1980年代にスコットランドで死骸の発見や目撃例が相次いで報告されました。毛色は黒で、のどや胸に白い箇所があることが多く、鼻から尾までは約43インチ(約110cm)という個体も確認され、猫としては大型。新種ではと騒がれましたが、遺伝子分析の結果スコットランドヤマネコとイエネコの交雑種であることが判明しています。

     もうひとつ、ケルト文化圏で猫というと巨大な怪猫キャス・パリーグが有名。ウェールズの伝承やヨーロッパのアーサー王伝説に登場しています。ヘンウェンという不思議な豚から生まれたキャス・パリーグは、ブリテン島に危機をもたらすと予言されたため捨てられますが、アングルシーという島で拾われて大きくなり、予言を果たすかのように怪物と化して暴れ回ります。それを退治したのがアーサー王(伝承によってはアーサー王の忠臣サー・ケイ)。今ではペットとして可愛がられる猫ですが、かつては羊など家畜を狩る獰猛な大型のヤマネコが恐れられていました。そうした時代の名残りをこれらの猫たちは伝えているのでしょう。

    ケット・シーはデブモーグリの背に乗り、メガホンを武器に戦う © SQUARE ENIX

    ムー的キーワード2:砂漠にそびえ立つ遊技場の伝説

     砂漠のなかにある人工娯楽施設ゴールドソーサー。現実で近いのはラスベガスでしょうか。

     ラスベガスからマフィアを排除し、開かれた娯楽の殿堂に仕立てた伝説的人物がハワード・ヒューズ(1905〜1976)です。映画産業と航空産業で巨万の富を築いた彼は、20世紀を代表する富豪であり、同時に奇行と秘密に満ちた”謎の人”でもありました。映画『アビエイター』でレオナルド・ディカプリオがその波乱に満ちた青年期を演じています。

     1966年、61歳のヒューズはラスベガスのカジノホテル「デザート・イン」に滞在し始め、最上階のペントハウスを改造して秘密の小部屋を作りました。そして、そこから一歩も出ず電話でラスベガスのカジノホテルを片っ端から買収したのです。極度の潔癖症だったヒューズはティッシュペーパーを「絶縁体」と呼び、寝椅子に敷き詰めて暮らしていたそうです。そして地元テレビ局を買収し、こよなく愛する映画を一晩中放映させていたという逸話も……。そんな彼を一目でいいから拝みたいという観光客も多かったとか。

     そのヒューズは、亡き後に幽霊として目撃されています。過去にオフィスにしていたハリウッドの歴史ある映画館パンテージ・シアター内を、仕事を探して今でも歩き回っているというヒューズ。ハリウッドのゴーストツアーにも組み込まれています。

    ゴールドソーサーには多数のアトラクションのほか、デートスポットとして人気の観覧車ゴンドラもある © SQUARE ENIX

    ムー的キーワード3:世界を変えるエネルギー

    『ファイナルファンタジーVII』に登場する「魔晄炉」は、星の命「ライフストリーム」を構成する精神エネルギーを電力や燃料などに変える施設。

     同じように、人類はさまざまなエネルギーを利用し、文明を発展させてきました。

     宇宙エネルギーを用いた発電所だったという説が囁かれているのが古代エジプトのピラミッド。1930年、ギザの大ピラミッドで発見された猫の死体が腐敗せず乾燥していたことに疑問を抱いたフランス人Antoine Bovisがピラミッド型模型で実験したことで、「ピラミッドパワー」が発見されたと言われています。ピラミッドパワーが何かは意見が分かれるところですが、大ピラミッドは電磁波を集め増幅するデザインとなっているとの研究もあります。

     時は流れ現代では、人間そのものを利用した人体発電の研究も進んでいます。2021年には汗で発電するウェアラブルな「バイオ燃料電池」を東京理科大学の研究グループが発表しています。汗に含まれる乳酸を燃料にした電池を用い、Bluetooth通信で乳酸濃度をモニタリングする。電池切れの心配がなく、健康管理用デバイスとして常時身につけられるメリットがあります。

     音楽や環境音など、音の振動で発電する「音力発電」も注目を集めています。昨年9月には東京大学の研究チームが世界最高電力密度の超薄型音力発電素子を開発したと発表。たとえばマスクに貼り付けることで、会話や周囲の音楽を電力に変換し、発光ダイオードを光らせることができるといいます。もし、おしゃべりしているだけでスマホが充電されれば便利ですよね。エネルギー独占のために、人体や音を牛耳るカンパニーが世界を支配する日も近い!?

    【参考文献】
    キャロル・ローズ『世界の怪物・神獣事典』原書房
    キャサリン・ブリッグズ編著『妖精事典』冨山房
    ジェームズ・フェラン『謎の大富豪 ハワード・ヒューズの最期』プレジデント社

    © SQUARE ENIX
    CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI
    LOGO ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO

    卯月鮎

    ゲームコラムニスト・書評家。雑誌、Web等でゲームの紹介、書評を中心に活動する。著書に、ゲーム実況のはしりとも言われる『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)がある。

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