日本古代史を自由に語るエッセイ集「聖なる国 日本」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    聖なる国 日本

    ジェロニモ 著

    教科書では教えない、ダイナミックかつ深遠な日本の歴史

     標題を一見すると、何やら右翼的な内容を想像するが、実際に本書に目を通してみると、右だ左だという政治的観点が、いかに狭小なものであるかが痛感される。

     本書において展開されるのは、教科書では教えない、ダイナミックかつ深遠な日本の歴史である。
     何しろ本書によれば、この日本という国は古代以来、西アジアから中国大陸に至る広大な領域の、さまざまな国の王族たちの、最後の亡命地であったのだ。
     そんなわけで、古代史の偉人たちは、本書によると、ほとんどが海外からの渡来組ということになる。たとえば、聖徳太子は元来は西突厥の大王だった人物だし、天智天皇は百済の王子キョギで、継体天皇はエフタル族の男大迹王であるという。また邪馬台国の卑弥呼の一族も、「中国江南の巫術者である許氏の一族の出自」であるらしい。

     本書は、このようなまったく新しい観点から、日本の古代史にまつわる多彩な謎を、自由闊達に語るエッセイ集である。
     話は古代の母系社会から、宗教の本質、『古事記』成立の裏話、卑弥呼の正体から日猶同祖論、北方からの渡来人であるスサノオの真実、「出雲連邦王国」と諏訪学、徐福伝説から日本のピラミッドまで、実に広範囲に及び、最終的には縄文の「文化」に辿り着く。
     著者によれば「文明とは、繁栄と滅亡を繰り返すもので縄文文化の様に長く続いたものが無い」。ではなぜ、縄文文化は1万年以上にわたって持続し得たのか? その理由は、ぜひ本書で感得していただきたい。

     著者のジェロニモ氏は、精神保健福祉士/ヒプノセラピスト。古い歴史や神社が好きで、好奇心の赴くまま全国各地を巡りながら、「聖なる国 日本」というブログを書き綴ってきた。本書は、このブログの書籍化である。
     元はブログであったということで、各章はそれぞれ独立した内容になっており、順序など気にすることなく、どこからでも読める。
     このブログは現在も更新中であるから、まずは気軽にブログを閲覧し、気に入れば本書を購入するという形でもよいのではないか。

    幻冬舎/1650円(税込)

    (月刊ムー 2024年2月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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