魔王の血を引く王子の復讐旅『ドラゴンクエストモンスターズ3』から連想されるムー的ワード!/卯月鮎・ゲームー案内

文=卯月鮎

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    書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎が話題のゲームから連想されるオカルト、超常現象、不思議をピックアップ。これらを知っておけばゲームがもっと楽しくなるかも!?

    モンスターの魅力が詰まったRPG

     おなじみのモンスターたちを集め、育成・配合して戦う『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズ。その最新作となる『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』が12月1日に発売されました。

     今作の特徴は、時間経過でフィールドの季節が替わり、出現モンスターが変化すること。冬は凍った湖を渡れるようになるなど、探索のワクワク感も高まっています。

     主人公は魔族のピサロ。父の魔王から魔物と戦えなくなる呪いをかけられ、モンスターマスターとなることを決意したピサロにどんな運命が待ち受けるのでしょうか?

    バトルは仲間にしたモンスターにコマンドで命令する。本作で登場するモンスターは500種族以上

     では、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』から連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。

    キーワード1:エルフ

     主人公ピサロの大切な旅の仲間となるのがエルフのロザリーです。

    「エルフ」という言葉のルーツをさかのぼると、古代北欧の古ノルド語「alfr(アールヴ)」という北欧神話に登場する種族にたどり着きます。

     エルフとフェアリー(妖精)の違いについては、語り始めるときりがないですが、現在のイメージは、フェアリーは羽根が生えた小さくいたずら好きな超自然的な存在、エルフは森に住む優雅で人間に近い体格の種族といったところでしょうか。

     この現在のエルフ像の基礎を作ったのが、J.R.R.トールキンの小説『指輪物語』。エルフは美しく長命で神秘的。また、森に住み弓を使うというのは、旅の仲間のひとりであるエルフのレゴラスの特徴です。

     英語にはエルフがつく言葉がいくつかあります。「elf lock」はもつれ髪。エルフのいたずらで髪がもつれ、解くと不吉なことが起こるとされていたそうです。「elf arrows」は石矢じり。新石器時代の矢じりが出土した際に、これはエルフが人間に撃ったもの……とかつては考えられていたとか。

     また、アイスランドでは大きな岩のなかにはエルフが住むと信じられており、「huldufolk(エルフ)の岩」と呼ばれています。道路工事の際に大きな岩をどかしたところ、工事関係者に災いが起きた……という話がしばしばあるようで、日本で言うところの大木に近い感覚でしょうか。エルフは日常に息づいています。

    不思議なチカラで冒険を導くエルフの娘ロザリー

    キーワード2:魔王

     魔王はRPGには欠かせない存在。魔王というと西洋風世界が想像されますが、実は「魔王」は仏教用語でもあります。

     そもそも「魔」はサンスクリット語「mara」の音写で、「殺すもの」「破壊」という意味。そこから人の修行や善事を妨げる存在、人を悪の道に誘うものという意味に変化しました

     仏教では一般的に、輪廻転生する世界は欲界・色界・無色界の3つに分かれ、そのなかで一番低いとされるのが欲界。さらに欲界のなかでも位が分かれ、上位にある欲界六天の最上位が「他化自在天(たけじざいてん)」。ここに魔王(第六天魔王)が住むとされています。

     この第六天魔王を自ら名乗ったといわれるのが織田信長。武田信玄からの挑発的な書状に返信する際に「第六天魔王」と署名した、と宣教師のルイス・フロイスが記しています。

     ちなみに、神仏習合により、第六天魔王を祀っていた魔王天神社や第六天魔王神社という神社が関東周辺には今でも残っています。RPGファンなら心掴まれる名前ですね。

    主人公のピサロは父である魔王を倒す復讐の旅に出る

    キーワード3:配合と遺伝子組み換え

     モンスター2匹を親にして新しいモンスターを生み出す「配合」は、『ドラゴンクエストモンスターズ』の醍醐味。

     現実世界では、突然変異した種を選抜し定着させたり、違う形質を持つ親をかけ合わせたり(交配)する、いわゆる品種改良が行われてきました。最近ブームとなっているメダカは、2004年に朱色の体色が美しい品種「楊貴妃」が作り出されて以来、その鮮やかさに虜になる人が増えています。

     こうした交配とは手法が違う、新たな品種改良法が遺伝子組換え。こちらは、ある生物が持つ遺伝子(DNA)の一部を、他の生物の細胞に導入して、その遺伝子を発現させる手法。

     遺伝子組換えで注目される例としては蚊が挙げられます。蚊は伝染病を媒介する厄介な存在。その対策として、子孫が繁殖できない遺伝子組換え蚊を作り出し、自然界に放つ実証実験が2013~15年に行われたそうです。しかし、その後のニュースによると、当初は蚊の個体数が減少したものの、結局は実験開始前の規模にまで回復してしまったとか。

     研究チームは遺伝子組換え蚊が生き残り、改変されたゲノムの一部を受け継いでいる蚊がいることも明らかにしたそうです。同様の実験は2023年に米フロリダ州でも行われたとのことです。蚊に限らず、私たちが気付かぬうちにさまざまな遺伝子組換えの実験が行われているかもしれません。

    仲間モンスターから2体を選んで配合する。配合システムが進化し、生まれてくるモンスターがイメージしやすくなった

    【参考文献】
    谷口幸男・訳『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社
    中村元『仏教語大辞典』東京書籍
    村上直次郎・訳『耶蘇会士日本通信 下巻』駿南社

    © ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX

    ※画面はすべて開発中のものです。

    卯月鮎

    ゲームコラムニスト・書評家。雑誌、Web等でゲームの紹介、書評を中心に活動する。著書に、ゲーム実況のはしりとも言われる『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)がある。

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