アフリカの人喰いUMA「ウォーター・ライオン」の恐怖目撃事例! 正体はゾウの仲間で本当の好物はカバ?/ブレント・スワンサー

文=ブレント・スワンサー

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    ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーがついに『ムー』に登場!! 日本人がまだ知らない世界の謎について語る!

    半水棲のライオンがいる?

     アフリカの一部には、「ウォーター・ライオン」と呼ばれる謎めいた半水棲の肉食動物の伝承がある。その名が示すように、この動物は大型のライオンに似ているが、下向きにカーブした牙をもつ姿で語られることが多い。また、水をはじく毛皮、時には象のような短い胴体を持つとされる。

     地域によって多少の違いはあるが、どの目撃談でも彼らは川や湿地帯に生息し、他の大型動物を狩るため、ほとんどの時間を水中で過ごしているという。また、船を転覆させたり、人を捕食することもある非常に獰猛かつ攻撃的な性格と考えられている。  

    探検家を魅了した怪物

     生息地域の住民には古くから知られていたが、西洋の探検家たちがウォーター・ライオンの存在を報告するようになったのは、20世紀初頭のことである。アフリカがまだエキゾチックで神秘的な別世界のような土地として認識されていた時代であり、探検家たちは想像力をかき立てる怪物の話を土産話として自国に持ち帰っていたのだ。

    ウォーター・ライオン 画像は「Encyclopaedia of Cryptozoology」より引用

     1904年、現在のコンゴ北部に遠征した探検家兼ハンターのパーシー・パウエル=コットンが、スワヒリ族に伝わる謎の怪物について記している。それはコンゴ川の上流域に生息し、カバを襲うこともある半水棲の肉食動物だという。 

     その後、さらに多くの探検家がウォーター・ライオンの話を持ち帰るようになった。1907年、ウォルター・ロスチャイルド卿は、アンゴラ、中央アフリカ、エチオピアに半水棲の凶暴な動物が生息しており、地域ごとに「ムールー・ングー」「コジェ・ヤ・メニア」「ディンゴネク」「チペクエ」など、さまざまな名前で知られていると報告した。ロスチャイルド卿によれば、コンゴ自由国の将校がこの動物の死体を目撃しているという。

    ウォーター・ライオンに人間が喰われた?

     そして1911年、クランペル要塞から中央アフリカ共和国のンドレに向かったフランス兵の一団が、怪物を目撃したばかりか、襲われるという事件が起きた。フランスの博物学者であり、植民地の狩猟監視官、森林管理官でもあったルシアン・ブランコワは、事件を目撃したムーサという部族民から聞いた話として、次のように記している。  

    イメージ画像:「Adobe Stock」

    「1911年、フランスのライフル兵たちはクランペル砦からンドレへと向かった。ポーターとして同行していたムーサは、バミンギ川とクークルー川が合流する辺りで、兵士の一人が『ムールー・ングー』に捕まるのを目撃した。カバのように水中から現れた怪物が、兵士たちが乗ったカヌーを転覆させ、一人を水中に引きずり込んだのだ。『ムールー・ングー』は豹のような姿で、ライオンより少し大きいが縞模様があり、体長は12フィート(約3.6m)だった。後の捜索で、兵士のライフル銃と装備一式が川底から見つかっている」

     実はムーサは、以前から川岸でその怪物の足跡を何度も見かけており、それはライオンの足跡よりも大きかったが、奇妙なことに中央部分が丸い形になっていたという。

    好物はカバか? 目撃者の証言続々

     1920年代には、コンゴ川の上流域にあるバングウェウル湖周辺の沼地や湿地帯から、現地で「チペクエ」という名で知られるウォーター・ライオンにまつわる証言がいくつか届けられている。

     1928年、植民地行政官ファーカル・バリオール・マクレーは、この「チペクエ」を何度も見たという男から聞いた話として、次のように記している。

    「彼は『チペクエ』について、カバよりもかなり大きく、ボサボサの毛に覆われ、足腰部分にヒレが生えていたと述べた。また、サーベルタイガーのように下方に突き出た2本の大きな牙を持っていたという。彼はバングウェウル湖の端の浅い沼地で、2~3匹の怪物が遊んでいるのを何度か見たことがあり、この怪物はカバさえ殺すことがあったそうだ」

    カバを狩るウォーター・ライオン 画像は「Encyclopaedia of Cryptozoology」より引用

     また、前述のルシアン・ブランコワは、中央アフリカ共和国のムバリ川でカバのハンティングをしていた時、この地域で「ムールー・ングー」と呼ばれるウォーター・ライオンに獲物のカバを盗まれたと主張した。

    「日暮れになってもまだ浮いてこなかったので、翌日まで近くでキャンプして、死骸が浮いてくるのを待った。夜中に強風が吹き、小雨が降った。夜明けになると、ポーターとトラッカーが、沈んだカバの近くから『ムールー・ングー』の鳴き声が聞こえたと教えてくれた」  

     さらにブランコワは、1936年にこの怪物が村の男を連れ去ったという悲惨な報告もしている。

    保存された頭蓋骨は今どこに?

     そして1930年代、アンゴラに10年間住んでいた植物学者のイルゼ・フォン・ノルデは、「コジェ・ヤ・メニア」として知られるウォーター・ライオンの存在を報告している。

     その一つは、「コジェ・ヤ・メニア」がカバを追いかけて殺す光景を見たと語る運転手の話である。彼は地元のハンター数人と調査に行き、急いでいるように見えるカバの足跡、そして象の足跡に似て非なる動物の足跡を見つけた。それらの足跡を辿っていくと、やがて彼らは草や灌木がなぎ倒された場所に出た。そこにはカバの死体が横たわっており、腹部には「巨大な鉈で切り裂かれたような」深い傷が確認されたという。

    画像は「Cryptid Wiki」より引用

     1950年代には、中央アフリカ共和国のバンゴラン川で漁網にかかったとされるウォーター・ライオンの話がある。村人たちはこの怪物を殺害し、頭蓋骨を保存したとされているが、その後どうなったかは不明である。

    近年も続く遭遇…… 怪物の正体は?

     それほど多くはないが、近年でもウォーター・ライオンとの遭遇は報告されている。1985年にバミンギ川で釣りをしていた男性が、背後から近づいてきたウォーター・ライオンに襲われ、危うく水中に叩き込まれそうになったと主張している。また、1999年にはアンゴラの水路をウォーター・ライオンが徘徊しており、複数のカバを殺したとの報告がある。

     実際のところ、怪物の正体は今もわからない。未発見の大型ネコ科動物であるとか、水棲に進化したサーベルタイガーの生き残りであるとか、新種の厚皮類(ゾウ、サイ、カバなどの体毛が少なく皮膚の厚い哺乳類)であるとか、絶滅したはずのゾウの仲間「デイノテリウム」の生き残りであるとか、既知の動物の誤認であるとか、あるいは単なる神話や作り話であるとか、さまざまな説が唱えられているが、謎は謎のままである。

    Brent Swancer(ブレント・スワンサー)

    豪ミステリーサイト「Mysterious Universe」をはじめ数々の海外メディアに寄稿する世界的ライター。人気YouTubeチャンネルの脚本、米国の有名ラジオ番組「Coast to Coast」への出演など、多方面で活躍。あらゆる“普通ではない”事象について調査・執筆・ディスカッションを重ねる情熱と好奇心を持ちあわせる。日本在住25年。『ムー』への寄稿は日本メディアで初となる。

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