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ドキュメンタリー映画『おらが村のツチノコ騒動記』がクラウドファンディングの参加者を募集中!
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筆者は昨年夏に、1本のドキュメンタリー映画について紹介する記事を書かせていただいた。その映画『槌の子物語』は、ツチノコの目撃が日本でも特に多いエリアの岐阜県・東白川村出身のドキュメンタリー映画監督・今井友樹氏が、故郷で丁寧な取材を重ねた作品であった。
『槌の子物語』は18分ほどの短編であったが、今井監督はその後も取材を丹念に重ね、現在は長編ドキュメンタリー映画『おらが村のツチノコ騒動記』の完成に向けて「ツチノコ」を追いかけ続けている。
新作では、東白川村だけでなく、日本中からツチノコにまつわる証言を取材しているという。UMA研究家として活動する筆者は、今井監督と「ツチノコ対談」をさせていただいた。その対談の模様をお届けする。
ーー今井さんはどうしてツチノコを題材にドキュメント映画を撮ろうと考えたのでしょうか? これまでの作品では日本各地の民俗文化を対象にしていますが、UMAを題材にした作品を撮るのは初めてですよね?
今井友樹 自分は出身が東白川村なんですよ。自分の祖母の兄もツチノコを目撃していて、「ツチノコっているんだな」というのが肌の感覚としてありました。1989年から村をあげてのツチノコ捜索イベントが始まったんですが、その時にちょうど小学生でした。大人も子供もすごい盛り上がりようで、自分も捜索に参加しましたね。子供よりも大人の方が熱心に、我先へと山奥へ入っていって。みんなとても楽しそうで。そんな大人たちの姿が、子供心ながら憧れとして強く記憶に残ったんです。
ーー当時のツチノコ捜索イベントは、村おこしの意味合いも強かったんじゃないかという印象も受けますが、皆さん本気に熱意を持ってされていたんですね?
今井 そうですね。当時「ツチノコ探そう会」という会があって、それの初代会長は、奥様がツチノコらしきものを目撃されてるんですよ。それを見つけて証明したいという思いは強かったそうです。真面目にツチノコの正体を確かめたい人も多くいて、同時に全国各地で同時多発的に地域おこしのムーブメントもあって、それらが重なって大きなものになった感じはありますね。
中沢健 もともと東白川村ではツチノコの目撃が多かったということですよね。70年代にブームになって日本各地で「ツチノコ情報」が発信されていきますけど、そもそもツチノコがいつ頃から認識されてきたのか、これは判別が難しいですよね。古事記に記されている野槌から目撃としてカウントするかどうか。
今井 線引きが難しいところですよね。でも、岐阜県の加子母の地域や、東白川村よりもさらに東の地域にも江戸時代の目撃エピソードが文献に残っています。あながち最近に始まったものではないとは言うことができるかもしれませんね。
中沢 日本人とツチノコの付き合いは本当に長いと考えて良いとは思いますね。
東白川村には「つちのこ神社」がある
今井 東白川にはツチノコを祀った「つちのこ神社」もあります。
中沢 自分も東白川村でツチノコを捜索するときは参拝に行くんですが、こじんまりとした社殿だけで、言ってみればあんまり商売っ気のない神社ですよね。
今井 この神社は質素ですけども、毎年ツチノコ捜索イベントの時はこの神社で祭礼が行われるんですよね。台風など、色んな事情でイベントが中止になっても、必ず祭礼は行われるんです。イベントとは別のものとして、この神社での神事は継承されていくのかもしれません。
ーー余談ですが、東白川村にはお寺がないんでしたっけ?
今井 そうですね。東白川村は江戸時代には苗木藩という藩の管轄だったんですが、そこでは廃仏毀釈(お寺を排斥する運動。明治時代初期に全国で盛んだった)は盛んだったんですよね。他の地域は後にお寺が復活したりしているんですが、東白川村ではお寺がないまま今に至っていますね。
中沢 この「つちのこ神社」とは別に、誰にも知らせていない真のツチノコ神社があるという話をオカルト関係の方からお聞きしたこともあるのですが……
今井 それは……わからないですねえ(笑)。
ーー極秘に決まってるでしょう! そんな話してしまったら今井監督が実家に帰れなくなりますよ!(笑)
中沢 以前に東白川村に調査に行った際、近くでゲートボールをされていたご年配の方々にお話を伺ったんです。12人くらいの方がおられたのですが、「ツチノコを見たことはありますか?」とお聞きしたところ、半分ほどの方が手を挙げられた。たまたま出会ったおじいちゃんおばあちゃんの半分が勘違いをしているなんて確率は考えにくい。東白川村に「ツチノコがいる」ことを強く確信したんです。
今井 今回の取材でも、地元の中学生にアンケートをとったんです。「ツチノコの存在を信じるか、信じないか」という問いに対しては答えは半々に割れたんですよね。
でも興味深かったのが、年配の層と若者とで思い描くツチノコ像に大きな違いがあったことです。ツチノコの姿、イメージについて聞くと、若者たちは地元キャラクターのつっちーとのこりんを描くんです。一方の年配の世代では、ツチノコを怖いものとして捉えている人も多い。1989年にツチノコ捜索イベントが始まった際、「ツチノコをイベントとして扱って大丈夫なのか。たたりがあるのではないか」と声が上がったりもしたそうですね。東白川村だけでなく、奈良県の下北山村などでも同時期にツチノコ捜索イベントが開かれたそうですが、やはり同じような意見が出たこともあったと。自分はこの世代間でのツチノコ観の隔たりに興味がありますね。
中沢 なぜツチノコがこんなにも愛されるのかというのも不思議ですよね。ネッシーやビッグフットとか、モンスターみたいなUMAと比べたら、ツチノコは「ちょっと変わった蛇」でしかないし、地味な存在でもあるのに。
今井 自分はツチノコ捜索イベントには3回参加しています。イベントのなかでも、ツチノコが見つからなくて怒る人はいませんでしたね。いるか、いないかを超えて愛されている不思議さがありますよね。
中沢 ところで、今井監督ご自身としては、ツチノコは実在する未知動物である、と思っているんでしょうか?
今井 幼少期には周囲から目撃談を聞いてましたから、存在すると思っています。ツチノコを探してる大人の背中を見ていますし、実在感がある。
自分は高校からは東白川村を出ているんですが、地元の説明で「ツチノコで有名な東白川村」というと一番伝わりやすい(笑)。でも同時に若干冷ややかなリアクションが、「ツチノコなんて、いないでしょ?」みたいな反応も返ってくる。故郷がバカにされているような、嫌な気持ちになってしまって、自分でも「ツチノコもいないんじゃないかな」と思うようになってしまった。それから時間が経ってしまったんですけども、今改めて「あれは何だったんだろう」「東白川村のツチノコっていったいなんだ?」と向き合うことにして、映画を撮り始めました。
ーー子供のころの感覚、「ツチノコがいる」という気持ちの確認のためでもあるんですね。
今井 ツチノコの目撃体験を取材するうち、その方々の語る世界に引き込まれていくんです。伝説とか心霊体験のような話ではなく、物凄いリアリティがある。
中沢 そうですよね。目撃された方の話を聞いていると、どうしても嘘をついているとは思えないし、絶対に何かは目撃してる。
今井 自分より上の世代の方々は、自分なんかよりどっぷり自然と密接に生活してたんですよね。動物の足跡を見たら、即座に何の動物か分かるような。そんななかで、その経験からしても判別つかない得体の知れない存在がいたりする。これはツチノコに限らないですが。地域の方々は、それを当たり前なものとして受け入れてきた背景があったんですよね。
中沢 そうですよね。ある時期までは、そんなにツチノコなども珍しい存在じゃなかったんだと思います。
今井監督との対談は動画も公開中なので、より詳しい内容を知りたいという方は是非そちらをご覧いただきたい。
実際の体験者の方への取材を通して、今井監督の中でも自身のなかで形作られたツチノコのイメージがあるという。それが存在するかしないかという疑問は、ツチノコが明確に発見されるまで残り続ける。だがしかし、それを目撃したという人は確かにいる。今井監督は、それを丹念にドキュメンタリー映画として表現していこうとしている。
現在、映画『おらが村のツチノコ騒動記』は都内での上映や、順次全国の劇場の巡回へ向けて準備中である。7月28日まで、クラウドファンディングを募集しているとのこと。ぜひ、皆さんも参加し、ツチノコ映画を世に出すお手伝いをお願いしたい。
中沢健
作家、UMA研究家。UMAのお土産を集めるのが最大の趣味で、町興しや観光に利用されているUMAが特に好き。
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