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「この先、日本国憲法は通用せず」の警告で知られる有名心霊スポット「犬鳴村」をテーマに、Jホラーの第一人者・清水崇監督がオリジナル映画を生み出した。トンネルを抜けた先にある、実在しないはずの村に迷い込んだ人たちが見舞われる怪奇・恐怖が描かれる。福岡県宮若市の協力を得て、実在のトンネルや公衆電話を再現した臨場感と、監督オリジナル設定のぶっ飛んだホラー描写が同時に迫る怪作だ。 実際に現地を取材した吉田悠軌と清水崇監督の対談で、虚実いりまじる「犬鳴村」について語り合っていただいた。
吉田悠軌(以下、吉田) 試写を拝見しました。よろしくお願いします。
清水崇(以下、清水) 撮影現場でも、いろいろとムー編集部にはご協力いただきました。本棚に「ムー」が並んでいたリ、弟の部屋にムーのグッズが置いてあったり。
吉田 弟くん、小学生でムーマニアというのは、さすがにすごい。父親の影響という裏設定かと思いました(笑)。なにしろ父親役の高嶋政伸さんが、ムーの愛読者らしいので。
清水 役では真逆ですが、政伸さんは本当に詳しいですからね。あるパーティで知り合ったんですけど、すごく離れたところで丁寧に会釈していらっしゃって…僕は面識なかったので誰にお辞儀しているんだろうって思ったら、政伸さんが「清水監督ですよね?いつかお仕事御一緒出来たら…」と仰っていて。今回、実現したわけです。
吉田 ホラーもオカルトも好きなんですね。
吉田 今回の『犬鳴村』、第一印象としては、だいぶ攻めた描き方をされてるなと思いました。いってみれば実在の場所じゃないですか。旧犬鳴トンネル自体も現存していますし。
清水 調べていくうちにイメージが膨らんで映画オリジナルの世界にしていますが、実在の場所の話をもとにしていますね。
吉田 監督は、犬鳴村のリアルタイムの騒動、2ちゃんねるなどで都市伝説が盛り上がっていく様子には触れていたんですか?
清水 リアルタイムで張りついてはいませんでしたね。でも何かと目にはしてて、もちろん名前も場所も知っていました。聞きかじった情報として、白い車や看板が出てくるとか、電話ボックスは実際にあるらしい……とか、ちらほらと。
今回、東映の紀伊プロデューサーから「犬鳴村って知ってる? あれ映画にならないかな」という相談を受けて、あらためて調べなおしたんです。もちろん虚実が混じっているので、どこを使うべきかなあ、と。
心霊スポット突撃リポート的なものとか、若い人が肝試しで一人ずつ殺されていく話やフェイクドキュメンタリーみたいなものだと、そういう映画は今まででも沢山あるし。やっぱり、劇場で見応えあるオリジナルの「劇映画」の分野でいきたい、と。
そうなると、僕の中でいつも抱えているのが、自分のルーツ探しとか血筋の話とかへの恐怖。霊感があって何かを見る、ということはありませんが、偶然とは思えないような縁のつながりに、ふと気づくことがあるんですよ。その上、紀伊Pは、『犬神家の一族』や『サスペリア』の世代で、「古い因習的な怖さにしたい」と。それならば…と、逃れられない血縁やルーツが、まさか心霊スポットに結びついたら……という荒業をやってみたくなったんですね。
吉田 家族という因縁ですかね。
清水 ただ僕が家系図とか背景とかの設定を考えるのが好きなので、そればっかり膨らましすぎてしまって。制作の序盤は、現代劇なのに昔のことばかりで、いっこうに現代に生きる人が出てこないことに(笑)。プロデューサー陣もすごい量の文献みたいなのを読まされて。これは資料なのか、プロットなのか? いったいどんな映画なのか? っていう状況になりました。
そこで、これをまとめてくれる脚本家として、保坂大輔さんに入ってもらったんです。保坂さんは何も知らずに呼ばれて「ちょっと来週、福岡へシナハンに行きたいんだけど一緒にいかない?」って、いきなり現地に連れていかれたんですよ。
清水 ……やっぱり実際行ってみると、インスピレーションが沸いてくる。
これまで別段なにも意識せず生きていた主人公に、この場所がどういう風にかかわってくるのか、どういう話になるだろう、と。
それら大量の背景と家系図を、いったん保坂さんに投げてみたんですが、「監督、この家系図の複雑さは、2時間じゃ絶対わからないです」と(笑)。だいぶ少なくしました。それでも4世代ぐらい残ってますが……。そんな流れで始まったんです。
吉田 実際の場所がモデルになっているというのは、日本のホラー映画でも珍しいケースです。
清水 そう、かもしれないですね。
吉田 そうした本当にある場所に、監督がおっしゃるような想像が、セル画のように重ね合さっています。インターネットの都市伝説として、2000年くらいに犬鳴村が大ブームになったのも、それと似ています。実在する場所に、2ちゃんねるなどネット住民たちの想像が重ね合わせられた、という意味で同じかなと。
清水 噂の拡がる速さと、広さもすごかったですね。なぜこんなにも薄気味悪く、怖い噂が広がったのだろう。やっぱり不安を掻き立てる要素を、みんながどこかで望んでいるんだろう、好きなんだろう……っていうのが怖いです。悪しきニュースほど大衆の食いつきを誘って報道されるじゃないですか。
吉田 確かに。炎上ほど広がりやすい。
清水 映画『リング』で、真田広之さんが演じる高山竜司が言うセリフとして、(脚本の)高橋洋さんがうまいこと書いていて。「呪いのビデオはどこから来たんだ?」「出処なんてありゃしない。人々が不安に思うことが噂になる、あるいはそう望んでいるのかも」みたいなことを言うんです。
こんな素晴らしいセリフを、普通にフェリーの上で言わせるのか、すごいなあ……と。そういった都市伝説の発生元にある“人の世の闇”のニュアンスは入れたかった。まさに全国どこにでもある、根っこがあるようでないものが、すごく怖いなと思います。
吉田 犬鳴村伝説でネット住民たちが怖がっていたポイントも、監督がおっしゃるような血縁と関わる部分かもしれません。完全に根も葉もない噂なんですけど、近親交配を繰り返している村があって……という。当時の人たちも、やはり『犬神家の一族』的な血の怖さ、というところがフックとなったんでしょう。
清水 そうかもしれないですね。
吉田 それこそ監督の『呪怨』のような、交通事故みたいにたまたま怪異に出くわしてしまう怖さとは、また真逆の恐怖。自分の生まれや出生にまつわる、逃れがたい因縁があったら……という恐怖ですね。
清水 はい。心霊スポットや都市伝説の根底がまさか自分=主人公の血筋に関わってくる映画というのは、あんまり観たことないんじゃないかなって。
吉田 どっちかに分かれますね。『犬神家の一族』的な方か、『呪怨』のように巻き込まれる方か。
清水 『犬鳴村』も、最初は若者二人が肝試しでビデオを撮りに行って……という巻き込まれ型ですけど、そのまま定番で行きたくないな、という思いもあって。まあ、巻き込まれ型を求めている人もいるのかもしれませんが。日本人って、なかなか自分のルーツについて考えることがないですからね。
清水 福岡の地元の人は、みんな旧犬鳴トンネルの噂について知っているんですね。道行く人、ちょっと挨拶した人が皆さん口を揃えて「あんなとこ行くもんじゃないよ」って。なにを根拠に…と訊いてみると、要は、皆さん若いころに行ったことあるからなんですよ。
吉田 車の免許取ったらとりあえず行く、というパターンは多かったみたいですね。
清水 僕と紀伊さん、アシスタントプロデューサーの女性と脚本家の保坂さんとで、シナハンに行ったんですが、山道を登っているだけで、まず脚本家の保坂さんが「監督……俺さっきから乳首が立ってしょうがないんですけど」って言うんです。どこで霊感を受けてるんだよ!って笑ってたんですけど、言い出しっぺである紀伊さんは、トンネルが見えたとたん立ち止まって押し黙ってしまった。
吉田 ビジュアルのインパクトも強いですしね。私が行った時も、軽自動車に六人で乗ってきた地元のヤンキーと出くわしました。
やはり犬鳴村は、心霊スポットの中でもネット都市伝説の中でも、ちょっと群を抜いている存在ですから。監督としては、そんな犬鳴村の都市伝説のここは生かしたい、という箇所はあったんですか?
清水 やっぱり例の看板ですね。どういう人が、どういう意図で立てたのかって、そこをずっと考え、発想を広げていきましたね。
吉田 “ここから先、日本国憲法つうじません”なる看板の噂ですね。じゃあ映画でも看板にまつわる裏設定が……?
清水 裏設定はあります。これはもう誰かが強引に「ここから法治国家ではない」として、虐げられた人々を隔離した、みたいな。そういう怖ろしい看板だっていう発想です。
吉田 なるほど。都市伝説では、村を訪れる人向けにたてられた警告の看板と思われているけど、それを逆向きにして、村の人々側に向けたものだという。
清水 都市伝説だと「村に入ったら村人が襲ってくる」っていう設定があるじゃないですか。そうではなく、村人側にこそ哀しい事情があったんだろう……と。そんな背景ばかり考えてました。劇中に登場する怪しげな唄も、そこから発想していて、村の人々の哀しい思いが籠ったものです。
あと、あの電話ボックス。あれ、本当のところはもうとっくに撤去されてるんですよね。でも今では地元民も勘違いしているみたいで、橋のたもとに残っているのが本物だと思っている。
「あそこは夜中、白い女の幽霊が出るらしい」とか、噂が色々と混ざってるんですが、実際にはもう無い。
でも、電話ボックスはどこかで使いたくて。諸事情あって、一時はカットしよう、となったんですが、そこはプロデューサーの紀伊さんが「あれは見たい。なんとかするから撮ろう!」と言ってくれました。あのシーンは、好きだって言ってくれる人も多いし、撮ってよかったですね。
吉田 そうすると、今回の見所としては。
清水 えーと……主人公が車で逃げても逃げてもどんどん追いつめられていくシーンがあるんですけど。そこを観た人たちが、はたして怖がるのか、笑ってくれるのか、僕は楽しみです(笑)。
吉田 私はそこが一番怖かったです。
清水 それは、こちらとしてはありがたい。笑える人は笑ってもらってもいいんですが。微妙なさじ加減ですね。
吉田 すごく微妙なさじ加減。あんなに遠くから撮るのか、たった数秒間なのか、とか……。
清水 あれ、怪談だとよくあるネタなんですよね。ただ、なかなか映画でじっくり見たことないなって思ったので。語りや想像だと怖いけど、具体的な絵になると怖くない、というのは往々にしてありますが、この描写なら…と取り組んでみました。
吉田 確かに、あそこは怪談的な怖さです。
清水 そうですね。
――あ、もし『犬鳴村』の次に都市伝説、心霊スポットをやるとしたら、どこがいいですかね?
吉田 ああ、それなら〇〇県の××というスポットがいいんじゃないでしょうか……。
清水 へぇ、そんな場所が……。
(左)清水崇/1972年群馬県出身。映画『犬鳴村』で監督・原案・脚本(共同)を務める。『呪怨』シリーズなどJホラーの旗手として知られる。
(右)吉田悠軌/1980年東京都出身。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。都市伝説ルポを中心に各種メディアで活動。「ムー」でルポ「怪談解題」を連載中。
*対談は2019年12月12日に収録。
2月7日より全国ロードショー
公式サイト https://www.inunaki-movie.jp/
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