映画『真・鮫島事件』永江二朗監督×オカルト探偵・吉田悠軌対談ーーネット発怪奇譚の”民話化”と現在

構成=吉田悠軌 写真=我妻慶一
取材協力=イオンエンターテイメント

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    2ちゃんねるの書き込みから最恐のネット都市伝説として定着した「鮫島事件」について、公開中の映画『真・鮫島事件』の永江二朗監督と、オカルト探偵・吉田悠軌が語り合う! 「鮫島事件」の真相とは? そして、2000年代に続発したネット発の怪奇が、現在にメジャーシーンへ増殖する背景とは……?

    2ちゃんねる怪談の映像化

    ーー公開中の映画『真・鮫島事件』をきっかけに、ムーでも2021年1月号で、「鮫島事件とは何か?」というそもそもの解説記事を掲載しています。そこで、筆者の吉田悠軌さんと、映画の永江二朗監督とで、鮫島事件についての”真相”を語っていただこう……ということで、おこしいただきました。

    真・鮫島事件 メイン写真

    吉田 今回の『真・鮫島事件』。コロナ禍の状況や、リモート通話を多用するなど、非常に「今っぽい」描写が多い印象を受けました。
    永江 2020年の清水崇監督『犬鳴村』のヒットも影響しましたね。そこから、イオンエンターテインメントさんが映画製作へと動いていただいて。
    吉田 『犬鳴村』のヒットを受けてということは、フットワークはそうとう軽い。企画から完成まで1年くらいということですね。
    永江 1年もかかってないですね。他にも色々と企画があったのですが、僕の中では「今は鮫島事件だろう」という想いがあり、それがイオンさんにも伝わった、というかたちです。
    吉田 清水監督は『犬鳴村』に続いて『樹海村』も制作しています。ここにきて2000年代の2ちゃんねるの怪談がリバイバルした感がありますね。
    永江 「きさらぎ駅」もそうですよね。テレビの「世界の何だコレ!? ミステリー」で2回放送して、2回ともTwitterのトレンド入りするという……。そこまでウケるのか、というのが斬新でした。
    吉田 今更感。
    永江 今更感! そう、今それなんだ、って!
    吉田 それこそ永江監督は、既に2010年の段階で、『2ちゃんねるの呪い』(2010年~)のオリジナルビデオシリーズから劇場版までを制作しています。2000年代の2ちゃんねる怪談の映像化については、いちばん早く・多くたずさわっている人じゃないですか。
    永江 そうですね、多分いちばん多いかな。2ちゃんの「洒落怖」(※)とか「オカルト板」の映像化ですが、シリーズ第1作DVD版もOV版も僕が初めてだったので。

    ※スレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」の略。2020年末現在では361番目が継続中。

    ーーもともと2ちゃんに張り付いていたんですか?
    永江 いや、10年くらい前、「ネットの怖い話のオムニバスを作ろう」ということで『2ちゃんねるの呪い』第1弾が製作されたんですが、シリーズ化の予定はなかったんです。売れ行き次第だったんですが、スマッシュヒットしたので続くことになった。ただ正直に言うと、その時の僕は2ちゃんねらーではなかったです。そこからだんだん、「2ちゃんねるに怖い話がいっぱいあるぞ」ということを知っていき、ひたすら勉強していったという流れですね。
    吉田 製作は2009年ですから、あのタイミングでネットの怖い話をやろうと思うと、やっぱり「洒落怖」になりますよね。もちろん他のオカ板スレッドや「ホラーテラー」など2ちゃん以外のサイトもありましたけど。とはいえ2000年代は”洒落怖・一強”という感じですもんね。
    永江 そうですね。ミソは「それをだれも実写化していなかった」ということ。あの大量にある話題・宝の山があるのに、だれも手つけない、映画化・実写化してないんだという。
    吉田 それこそ『電車男』映画化が2005年にありましたけどね。
    永江 そういえば、そうですね! その流れで『痴漢男』(※)というのもありました。

    ※「電車男」と同じく、2ちゃんねるの書き込みから派生した作品。元ネタはスレッド「ものすごい勢いで痴漢に間違えられた」。

    永江 「電車男っていうのが流行ってるぞ!」ということで、私の師匠である寺内康太郎監督が映画化したんですが、それも同じ2005年。僕はそこに助監督でついていました。「2ちゃんねるの映画化なんて、そういう方法があるんだなあ……」って思ってましたけど。
    吉田 それ、すごく面白いですね。じゃあ永江監督は「2ちゃんねる映画化」という流れの、元祖の方から関わっているってことですね。

    サブ3

    ”定番”のネット怪談とホラー映画としての原点回帰

    ーーただ、そういった2ちゃんねるの怪談はもう、現在の中高校生にしてみれば「昔話」化してるんですよね。まったく聞いたことがない世代が出てきてるというのが。「ネット=新しい」みたいなことでは全然なくなったんだな……という、おっさんの感想を改めて抱いてしまう2020年でした。
    永江 そうですねー。
    吉田 まあ、確かに出来のいい話ですからね。いずれもストーリー自体に力があるので、存在を知らない子たちからしたら「こんな話があるのか!」ってビックリしてくれるでしょうね。だから『犬鳴村』もそうですけど、やっぱり中高生にこそウケている。
    永江 だから若い子たちが「鮫島事件ってなに?」となって、おっさんたちが「いや、それだけは語るな」なんていう、例の光景がそのまま展開しているような。
    吉田 そもそも鮫島事件自体が、90年代からパソコン通信とかネットに触れてた古参組が、2000年代に2ちゃねんるから入った新規参入組をからかうネタですし。
    ーー関係性において、マウントをとる材料だったと。
    吉田 お前らネット新参者は知らないだろうけど……という内輪ノリですね。
    永江 みたいなもんですよね、おそらく。ただ現在ではもう、そうしたノリがさらに二周くらいしている感じなので、今回の映画でうまいこといけばいいな、と。
    吉田 若い子みんなに、本当に本気で信じさせるくらいの。いちばん最初の元スレッド『伝説の「鮫島スレ」について語ろう』は、「これを本気にしたらバカじゃん」みたいな、ちょっとひねくれた提出の仕方で、わかってる奴ら同士でふざけているという感じ。でも現在では、それがまた反転して、ストレートに怖がらせにいくノリになっていると思います。
    永江 そうですね。今のホラー映画界は、日本だとポップな方向に振れていたり、海外だとハイセンスなアート方向にいくことが多い。だから僕の中で「一回ここで原点に戻り、単純に80分ずっと怖い、バンバン怖いことが続くホラー映画というのを作りたいな」という気持ちがありまして。今回の『真・鮫島事件』は、ひたすら怖がらせに徹しました。
    吉田 コロナの影響もあるんでしょうか、限定された空間における、正統的なホラーになってますよね。
    永江 そうですね、驚ろかしは、いたって古典的なものを全部取り入れているので。今いちばん新しい「リモート会議」や「コロナ」を取り入れつつ、でもやってるホラー描写は超古典のオンパレードというギャップ。最新と最古のアンバランスさを取り入れた映画にしてみました。
    ーー武田玲奈さんもきっちりホットパンツで。
    永江 まあホラーの女主人公といえば。本当は上もタンクトップにするかと悩んだんですが。ハリウッド映画は大体そうですよね。ただ実際見たら、短すぎたなって思うぐらい短くて(笑)。よくやってくれた、と思いました。衣装合わせで見ていたんですが、撮影に入ったら「こんな短かったんや」っていう。衝撃的に短すぎて。

    サブ2

    「鮫島事件」をJホラーとして描く

    吉田 確かに本作は、前の『2ちゃんねるの呪い 劇場版』の時よりもストレートな感じですよね。
    永江 そうですね。もう本当にストレートに。皆さんご存じ鮫島事件における「血の16画像」のリンチ説の方をベースにしました。ーーただ最後は一応「実は鮫島事件というのは、他にも孤島説とか色々あるんだぞ」と終わらせてるんで。そこはちょっと前回と同じような感じには、匂わせているんですけど。どれが本当かわからないけど、どれも本当かもしれない……という余韻はやっぱり入れておかないと。
    吉田 鮫島事件は、陰謀論にしろ、内輪もめのリンチ殺人であるにしろ、設定としては一応リアルな話。どの説にしても心霊要素はないじゃないですか。ただ永江監督の扱う「鮫島事件」は、いつも心霊が入ってますよね。
    永江 そうですね、そこはだいぶ脚色してます。やっぱりJホラーの良さは、心霊物の怖さにあると思っていまして。『リング』『呪怨』が代表するように、幽霊描写の怖さなら、世界中見渡しても、日本がいちばん断トツで優れている。
    吉田 海外にも影響を与えていますしね。永江監督はやっぱり、心霊のJホラーに思い入れがある。もし思い入れがなければ、「鮫島事件」を人が怖い話=ヒトコワに振って作ることも出来たはずですし。
    永江 そうですね。幽霊を出したほうが絶対いいエンタメになるな、という気持ちがありました。ヒトコワでもいいとは思うんですけど、この限られた条件と限られた日数での製作状況では、やっぱり幽霊を出したほうが勝負しやすい。ヒトコワにした瞬間、誰が出演しているかとか、予算の大きさとかの方が、どうしても注目されがちなので。だから今回は絶対に幽霊もので演出一本で勝負してやるというか、それこそキャスティング前は、下手したら全員無名の人が出演するくらいで撮ってやる、という気持ちでやってたというか。
    吉田 それを逆にいうなら、『2ちゃんねるの呪い劇場版』の方は、「最終的にヒトコワだった」という話でもありますし。
    永江 あ、そうですね。
    吉田 本作『真・鮫島事件』ではもうラストシーンまでストレートな心霊ホラー、王道でいってますね。
    永江 10年たって真逆に変えたというか。まあ今回は前作とは全く関連性もないですし、考え方も全然変えて、ひたすら80分怖がらせるっていうのがいちばんの思いでしたね。前の作品はぶっちゃけていうと、風呂場から貞子みたいなのが出たりとか、僕の中で完全にJホラーへのオマージュ、リスペクトでした。今回はもっとリアルな感じ。基本ずっとリアルタイムで進行してますし、臨場感を大事にしたりと、前作とホラーのベクトルは違う感じで作りましたね。例えばダーレン・アロノフスキー監督の『マザー!』も臨場感で攻めていて、音楽とか入れてないんですよ。僕も今回はあえて、全部オールハンディ、音楽もラストのとこ以外全部抜いたんです。もうSEしかいれなかったんですよ。
    吉田 あ、そうなんですね。
    永江 不穏な時に不穏な音楽が流れだすようなことを全部やめたんです。もうラストのあの空間にいくまで、部屋にいる時は部屋の音しか入れてない。それでずーっと引っ張っていって、リアリティを大事にした感じです。前作は完全にJホラーオマージュ映画で、こっちはドキュメンタリーというかリアリティを追求した。音楽入れると、みんな音楽でシーンを理解しちゃうから、見やすくなるんだけど、B級映画によくある感じになってしまう。そこをあえて、勇気をもって全部外したんですよね。もう空間音とSEだけにして。
    吉田 限定された空間が臨場感をもって迫るという意味では舞台的でもあるし、ドキュメンタリー的な記録っぽさもある。
    永江 コロナの世の中で、みんなマスクをしてて、帰ったら丁寧に手を洗ってるシーンとかも含めて、記録映画っぽいというか。それが、なんとなく怖い、みたいな。やっぱりこの時期ですから、撮影方法として「対面での会話をしないで作る」っていうのを徹底しました。基本、一部屋にひとりの役者、一台のカメラ、録音機材でひとりのスタッフしか入れないっていう撮影方法。リモートの部分は全部それで撮ってます。ガイドラインを守って、なおかつ超怖い映画を作ってやるっていう、僕の中でのコロナとの闘いみたいな面もありました。
    吉田 やっぱり、今この時を映した記録性、企画から完成までサーッと作ったスピード感がありますね。
    永江 今回は脚本も自分でやってるので、脚本段階から、撮影において今の時代できること・できないことをずっと考えていて。「ふたりが会っても、片方は死んでてしゃべらない」「リモート会議やネット通話」とかを駆使しているので、面と向かって会話するシーンが絶対無いんですよ。会話シーンがゼロの映画って、たぶん初めてなんじゃないかな。
    ーー昔なら展開の説明として2ちゃんの書き込みをばあーって出してたところが、今ならリモート会話で表現できますね。
    吉田 テクノロジー的にはもう、リモート会議もスマホの通話も、そこそこの画像で出せますし、助かりますよね。
    永江 今のこの時代だからこそ、ウェブカメラ通話なんて当たり前ですし。もうちょっと前だと、「こんなにリモート通話しなくない?」って違和感を与えたと思うんですよ。でも今はリモート飲み会なんて超当たり前の世界になってるから。
    吉田 確かに。テクノロジーの問題だけではなく、一年前の社会状況ではリアリティーの無かったことが、当たり前になっている。
    永江 それこそ今年しか出来ない映画ですね。来年から元に戻る世の中を期待して、今年は最初で最後という思いで、こういう形で作りましたけどね。もう、苦肉の策に苦肉の策を重ねた感じ。

    サブ1

    吉田 でも逆に、このスタイルを発展させる手もありますね。Jホラーの「小中理論」みたいな「永江メソッド」として。
    永江 清水崇さんも文化庁のシンポジウムで「『真・鮫島事件』という、コロナ禍を見事に逆手にとった面白い映画がある」と触れてくれたそうです。ただ、来年はもっと普通の、みんなが会話する映画を、僕も撮りたいです(笑)
    吉田 今回のリモート会議やネット通話の使い方もそうですけど。『2ちゃんねるの呪い劇場版』の時も、最初の車のシーンで、窓の外をスクリーンプロセスにしていたのが印象的でした。なにより、ラスト付近の鏡のシーンがすごく怖かったんですよ。あれだって、「過去と現在が、一緒の場に映り込む」という臨場感の演出じゃないですか。
     今いる場に、他の空間が同時に映り込む。臨場感をもって、映像を通してつながる。そういうスタイルと、永江監督の相性がいいのかなと思っていたんです。今の話をうかがって合点がいきました。
    永江 それこそデビューからずっとホラーばっかりやっていて、90年代のJホラーの延長をずっと踏襲していたら、なにをやっても「貞子、伽椰子、俊雄」って言われ続ける。まさに10年前の『2ちゃんねるの呪い劇場版』の時だって、「貞子が出てきた」と言われてしまいました。
     これじゃあダメなんだ、自分の中で変えようと思って作ったのが『心霊写真部』。ハリウッドホラーも一生懸命見て、いいとこどりをしよう、Jホラーとハリウッドホラーの中間のテイストを目指そう、というのを思いついたんです。『心霊写真部』でそれを実践したら、ニコ生で火がついて、ニコ生No.1ホラーと言っていただけた。それが僕のベースにあるというか、Jホラーとハリウッドホラーの両方をミックスして2で割ったようなホラー演出を心がけてるつもりです。鶴田法男さんからは「Jホラーの進化系」と言っていただけました。
    吉田 具体的にハリウッドホラーとはどういった面を指してるんでしょうか。
    永江 『エルム街の悪夢』も『13日の金曜日』も、それこそバンパイアもそうですが、みんな実体化した怪物が襲ってくるじゃないですか。普通のJホラーだったら、後ろに立ってるだけじゃないですか。だから日本とのいいとこどりで、幽霊が物理的に襲ってくる。うわあ、この幽霊、ガチでめっちゃ襲ってくるやん、みたいな(笑)。 
    吉田 そうですね、Jホラーの幽霊の攻撃は、なんだかよくわからないけど精神的にやられて死ぬパターンですよね。
    永江 それはそれで、とってもいいんですけど。ボーっと幽霊が立ってるだけで、登場人物がキャーッとなって、でも攻撃はしてこないじゃないですか。僕の場合は『真・鮫島事件』でも、幽霊が手を伸ばして物理攻撃してくる。ジェットコースター感もあるし、「これって幽霊なの? 人間なの? 幽霊人間なの?」という怖さもある。そこは僕ならではのアイデアじゃないかな、と思います。
    吉田 そこもやっぱり「鮫島事件」というモチーフとの相性はいいですね。あのケースでは、幽霊が殴り殺しにてきても違和感ないですし。そういう風に殺された奴だから、そうするかもなっていう。
    永江 そうですね! もともとはリンチ殺人とか、ヒトコワの話ですからね。ちょうどそことリンクしたかもしれない。

    ネットリアリティを踏まえて、次回の構想は……?

    吉田 となると次回作は……どうする計画ですか?
    永江 いやあ……すでにもう「次は、きさらぎ駅を狙ってるんだろ」とか、いいたい放題いってくる人もいますけど。
    吉田 そうですよ。次はもう、誰が「きさらぎ駅」に手を付けるかの競争ですね。それこそ中田監督も清水監督も、松竹も東映も狙ってるかもしれない。
    永江 ビッグトピックとしては、どうしても「きさらぎ駅」ですよね。もしかしたら、すでにどこかで企画が動いてるのかもしれませんが(笑)。ただ2ちゃんねるの怪談シリーズっていうのは、やろうと思えば無数にありますからね。「本当に危ないところを見つけてしまった」っていうスレッドも、個人的にはすごく好きなんですよ。韓国映画の『コンジアム』みたいに、廃墟だけを使っためっちゃ怖い映画にもできるだろうし……。
    吉田 確かに、「本危」の設定や展開は、永江監督と相性がよさそうです。
    永江 本当に、当時の2ちゃんねるオカルト板に書き込んでる人たちは天才ばかりなんで。
    吉田 2000年代は熱かったですね。
    永江 そうですね、才能の集まりですよね。今でいうYouTuberみたいに才能が結集しちゃってるんで。
    吉田 それが実質、著作権フリーで使える。
    永江 あれだけの天才たちが0円で動いてたっていうのが、すごいですよね。『犬鳴村』のヒットにも関わってると思うんですけど。今のご時世、若い子って聞き慣れない言葉を知ったら、2秒後にはスマホで検索するじゃないですか。そしたら「犬鳴村」「鮫島事件」にまつわる怖ろしげな記事がたくさん出てくる。この「実際に検索でヒットする」というのが大事だな、と思ったんですよ。
    吉田 なるほど! 本当にそうですね。
    永江 検索して出てくるから、「なんだ、架空の設定か」ではなく「本当にある! なにこれ?」となる。そういった、根底に実際のものがあるのが強いな、と。
    ーー「検索リアリティー」というのはありますね。人から情報を聞いた後、ネットで確認してヒットして、そこで初めて確信する、みたいな。
    吉田 これまでのネットの成果が、1円もかけずにプロモーションをしてくれるってことですもんね。
    ーーまったくゼロから作るコンテンツだと、まず名称の浸透から頑張らなくちゃいけませんからね。
    永江 そうですね。『真・鮫島事件』が映画化発表した時、いきなりTwitterトレンド1位になったじゃないですか。あれもやっぱり、そういうことですね。
    ーーグーグルとかが10年、20年かけてもみ殻を敷いてくれているから、あとは火をつけるだけという。
    吉田 今はいいタイミングですね。犬鳴村があって、樹海村、鮫島事件。「事故物件」の浸透だって、大島てるさんが2005年から続けてくれていたおかげだし……。もはやネット文化っていうのは「新しいもの」ではなくて、「古いもの」としての文化的蓄積が、相当あるっていうことですよ。そういえば2001年の「鮫島事件」の噂の発生にしてからが、「昔、こんな怖ろしいことがあったんじゃよ……」という、老人から若い人へ向けた昔話みたいな設定だったんですけどね。
    永江 それがずーっと広まって、時間が経って、また鮫島事件を昔話として語り直すことになった。
    吉田 今は2ちゃんねるすら無くなってますからね。鮫島事件ふくめた当時の2ちゃんねるの怪談が、もはや「民話」になっているんです。
    永江 本当にそうですね。いやあ、面白いなー。

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    (左)永江二朗(ながえじろう) 「2ちゃんねるの呪い劇場版」で監督デビュー。 山本周五郎人情時代劇「めおと蝶」にて民放連盟賞優秀賞。 2020年ドラマ「大江戸スチームパンク」「GARO VR」「ほぼ日の怪談。」等を監督。『真・鮫島事件』では監督のほか脚本も手掛けた。
    (右)吉田悠軌(よしだゆうき) オカルト探偵、作家、怪談師。「ムー」にて怪談・都市伝説・未解決事件などのルポルタージュ「オカルト探偵」を連載中。著書多数。

    映画『鮫島事件』

    <あらすじ>佐々木菜奈(武田玲奈)は、その日、高校時代の同級生たちと、毎年恒例の部活飲み会をリモートで開催した。仲間の一人あゆみが、連絡も無しに参加してこない。不審に思うメンバーたち。すると裕貴、鈴が重い口を開いた。20年以上前に流行った『鮫島事件』という都市伝説があり、『鮫島事件』の真相に触れた者は、必ず呪われて死ぬとされていること。様々な説がある中、その廃墟に3人で行ったこと。そして、その時からあゆみの様子がおかしかったこと。『鮫島事件の呪い』は、実在するのか? パニックに陥る菜奈たち。そこには想像を絶する恐怖が待っていた—。

    公式サイト https://samejimajiken-movie.com/

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