AIとおさん 4コマ漫画「オカルとおさん」
月刊ムーで人気連載中の石原まこちん作「オカルとおさん」をwebムーでも公開!
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「SFホラーすぎ」とSNSに恐怖旋風を巻き起こした話題作がコミックス化。著者に創作秘話を聞く!
みんながいつも笑顔でいるやさしい世界。でもそこは、何かがおかしい……。少女マンガ誌「ちゃお」のwebサイトに掲載され、「SFホラーすぎる」「すごい切れ味だった」と巷に恐怖と絶賛をまきおこしたホラー短編マンガ「笑顔の世界」。衝撃的な結末とともに記憶に刻まれているかたも多いのではないだろうか。閲覧数はなんと3300万PVをこえたのだとか。
そんな「笑顔の世界」をはじめ、エッジのきいたホラー作品を世に送りだしている漫画家、岬かいりさんのコミックスが小学館より発売される。読者の意表をつく作品はどのように生みだされているのか、岬さんに創作の裏話をたっぷりときいた。
『笑顔の世界』は岬さんの初の単行本で、2年ほど前から少女コミック誌「ちゃお」のホラー増刊や、webサイト「ちゃおコミ」に掲載してきた短編がまとめられている。
表題作「笑顔の世界」からして岬さんは筋金入りのホラー愛好家かと思いきや、小さい頃からとくに意識的にホラーだけを読んでいたことはなく、あくまで少女漫画のいちジャンルとして楽しんでいたのだそうだ。
「『ちゃお』でもはじめはメジャー路線の少女漫画を描いていたんですが、「ちゃお」にはホラーの増刊があって、そこで数作ホラーを描きました。そこからさらにwebサイト『ちゃおコミ』がスタートするタイミングでホラーの読み切り短編を描かせてもらって、公開された一作目が「笑顔の世界」でした。
昔から少女漫画は好きだったんですが、たとえば作品のなかで主人公たちが両想いになっても、でも中学生カップルだからそのうち別れちゃうのかな……なんて想像する、ハッピーエンドに違和感を持ってしまうような発想が暗い子どもだったので(笑)、ホラーのほうにハマった感じですね」(岬さん)
漫画家というとアシスタントについて経験を積んでいくイメージがあるが、岬さんは岐阜県出身で、現在も県内在住。上京の経験はなく、作画技術もストーリーを構成する方法も独学だそう。
子どもの頃から好きだった「世にも奇妙な物語」やホラー漫画にインスパイアされるところもあるが、いま作品をうみだすアイデアの着想は、意外なところからきているという。
「ネタは、毎日の生活のなかで何気ないものを見た時に思いついたりします。たとえば以前、対面で会話しているのにマスクが少しも動いていない人がいて、『え、この人どうやってしゃべってるんだろう?』とマスクの向こう側を想像したら全然話が入ってこなくなってしまったことがあったんです。その体験をもとに描いたのが『口裂け女』という作品で、今回の単行本にも載せています。
怖いといえば、私は岐阜県生まれなんですが、『岐阜』って漢字、怖くないですか? 阜なんてほとんど岐阜専用で他で見ないし、なにより字のかたちがお墓みたいに見えるんですよね。それが怖いな……って昔からそんなことばかり考えていました(笑)。
アシスタント経験もほぼなく他の漫画家さんと交流がないので、ネタだしとか他の方がどうやっているのかもわからないんですよね。」
「ムー」のようなノンフィクション雑誌や実話怪談のジャンルであれば、取材をしてネタを集めることが可能だが、岬さんの作品は独特な感性とビジュアル的な観察力から生み出されているようだ。だからこそ、取材からでは生み出せない圧倒的なオリジナリティがあるのかもしれない。
岬さんがもうひとつ創作の参考にしているのが、意外なことにホラーとは対極にありそうな「お笑い」だという。
「ホラーはお笑いに通じるところがあるんですよ。それは、どちらも『ずれ』『ギャップ』が大事だという点だと思っています。だから芸人さんのコントの作り方はとても勉強になります。
『笑顔の世界』が話題にしてもらえたのも『ちゃお』なのにこのテイスト、この怖さなのか!っていう仕掛け的なギャップのおかげもあるので、そこは全然自分の力だけじゃないなと思っています。それだけに、『笑顔の世界』のようなテイストの作品ばかりだと雑誌にとって迷惑系みたいになっちゃうかもしれないので(笑)、作風の配分には注意しています」
たしかに、絵柄やビジュアルよりもストーリーで怖がらせる、構成の妙で恐怖させるホラー短編を描き続けるという岬さんのスタイルは、お笑い芸人が毎回4分間の勝負ネタを仕上げていくような大変な作業かもしれない。それだけに「どうやって量産するか」が岬さんの目下の悩みのタネでもあるそうだ。
しかし、これだけ怖い作品を連発する岬さん、実は強力な霊感の持ち主で、実体験を参考にしている……ということはないのだろうか?
「私は霊がみえることもなくて、それらしい体験といっても一度金縛りにあったことがあるというくらいです。小さい頃、祖母と近所を歩いていたら『ここの池で人が死んだことがあるんやぞ』といわれて、夜ひとりでこっそりその池を見にいくような、子どもの頃から怖いもの見たさの強い人間だったんですが。心霊体験してみたいんですけど、ないんですよね……。
ただ、数年前にすごく怖かったことがありました。それは初めてホラー作品を描いたときなんですが、描いている間に顔の半分にぶわーっと帯状疱疹がでちゃったんですよ。どうにか作品を仕上げて、その直後に救急車で病院に運ばれました。デビュー直後でかなり疲労が溜まっていたのはあると思うんですが、でも顔に帯状疱疹ってかなり珍しいんだそうです。
その時はタイミング的にも『これは何かに取り憑かれちゃったかなー』と怖かったですね。もう完治したんですが、今もたまにビリビリ疼くんです。これが『古傷が疼く』というやつかと、そのビリビリを感じるたびに初心を思い出しています(笑)」
ホラー漫画には霊が視える漫画家が描いた実話怪談的な作品も多いが、そのジャンルとは全く違った切り口から「怖さ」に向き合っていることが、岬さんの唯一無二の作風として発揮されているようでもある。そして、「してみたい人はできない」のが心霊体験のあるあるである。
今回『笑顔の世界』は「ちゃお」ではなく、裏サンデーコミックスのレーベルから発売される。より幅広い読者層を想定したレーベルにすることで、ホラー好きの人に見つけてもらいたい、目にとめてほしいという編集戦略だそうだ。
「今回の収録作品は『ちゃおコミ』初出のものが多いですが、webコミックは雑誌を卒業した女の子も戻ってきて読んだりするだろうと考えて、読者を中学生以上と想定して描きました。なので、コミックスもぜひ年齢の上のかたにも読んでもらいたいです」
読者アンケートも好評なことから、しばらくは読み切りホラーというスタイルで作品を描いていきたいという岬さん。創作秘話をうかがうとその道のりは大変そうだが、これからの活躍に期待するばかりだ。そしてもし念願の心霊体験をした際には、ぜひ本誌にご一報いただきたい。
『笑顔の世界』(岬かいり著、税込715円、小学館、1月12日発売予定)
https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784098516438
webムー編集部
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