古代エチオピア文明の宮殿は高層ビルだった! 通説を超越した高度すぎる建築技術の謎

文=仲田しんじ

    紀元前800年のエチオピア文明の都市には16階建てのビルディングが建っていたのか――。最新の研究ではエチオピアの古代遺跡の宮殿は驚くべき高度な建築技術で建造されていたことが示唆されている。

    紀元前800年の宮殿は16階建てだった!?

     紀元前5世紀にさかのぼるアクスム王国をはじめ、アフリカ東部の半島で紅海貿易の拠点として繁栄していたエチオピア文明。その特徴は、巨大なオベリスク(四角錐の石柱) や、一枚岩をくり抜いて造られたラリベラの岩窟教会群など、高度な建築技術にある。

     数々の古代建築の中でも、エチオピア北部ティグライ州イェハにある宮殿遺跡「グラト・ベアル・ギブリ(Grat Be’al Gibri)」は、紀元前1千年紀初頭の東アフリカおよび南アラビア地域において最大級の記念碑的建造物として知られている。

    ※画像は「MDPI」より

     独ブランデンブルク工科大学とドイツ考古学研究所の研究チームが今年7月に発表した研究論文によると、宮殿兼行政複合施設であったグラット・ベアル・ギブリは、これまでの想定よりもはるかに多くの階層を支えるのに十分な強度をもっており、推定されるサイズはなんと最大60メートル四方。現代では20階建てのビルに相当する超高層建築だった可能性もあるという。

     火災によって大部分が消失したと考えられているグラット・ベアル・ギブリ。現存するのは1階と基礎部分だが、宮殿の壁は地元産のフォノライト(響岩)の砕石と粘土モルタルで造られ、木製の梁を何層にも重ねて補強されていた。南アラビアの同様の古代建築では、木材は水平方向と垂直方向の両方に配置されるのが一般的だったのに対し、グラット・ベアル・ジブリの梁は水平方向にのみ設置されていた。

     研究チームはこの珍しい建築技術が上層階をどこまで支えることができたのか検証すべく、宮殿の3次元復元モデルを作成。外壁の角と、出入口のある内壁に加え、古代の石材、粘土、木材に関する不確実性まで踏まえたコンピュータシミュレーションを実行した。その結果、壁の強度にはかなりの構造的余裕があったことが示されたのだ。

     これまでの仮想復元では、通常の5階建て建築の上にピラミッド状の3階分が乗った構造が想定されていた。しかし今回の新たな分析では、理論上の耐荷重能力は8階では有り余ることが判明したのだ。研究チームらが想定した(建材に関する)最も悪条件のシナリオでも、この構造は理論的には少なくとも16階までは支えることができたはずであるという。

    ※画像は「MDPI」より

     もちろん今回の結果は、グラット・ベアル・ジブリが実際に16層構造だったことを意味するものではないが、その壁構造が想定よりもはるかに重い重量を支えることができたことを示している。

    古代の優れた木造高層建築技術

     今回のシミュレーションを通して、石積みの中に埋め込まれた木材に関して数々の新たな知見も得られた。

     木材の性質のばらつきは、全体の耐荷重能力には比較的影響が少なかった一方、現代のセメントの代わりとなる石と粘土でできた組積造(そせきぞう)の性質の方がはるかに重要であり、粘土モルタルで固められた建材の引張破壊が構造上の重大な制約要因として浮上したのだ。

     また、木材は極めて慎重に選定されていた。梁材の木材としてアフリカオリーブとコルディア・アフリカーナが確認されており、どちらもシロアリなどの害虫に対する高い耐性を持つ。

     適した建材と堅牢な構造が示唆しているのは、宮殿の規模の大きさだ。1階の壁は厚さ約1.9メートル、基礎となる基壇の高さは約6メートルで、入口にある巨大な石柱は約10メートルにまで達していた。(階段などの他の考古学的遺構からも)グラット・ベアル・ジブリが現存部分よりかなり大規模な建造物だったことが想定されるという。

    ※画像は「MDPI」より

     研究チームは、今回のシミュレーションで確認された相当な耐荷重余裕を考慮すると、壊滅的な破壊を引き起こすには、よほどの異常事態が起きたはずであると結論。古代の大規模な火災によって破壊された可能性がさらに高まることになった。

     研究チームによると、古代の南アラビアや東アフリカの建物が実際に何階建てまで支えられたのか検証する構造解析は、これまでほとんど行われてこなかった。従って、今回の研究はこの地域の古代建築に関する稀有な工学的視点を提供するとともに、古代の建築家たちが実践的経験と技術知識の伝承を通して壮大な建築物を建造できたことを示しているという。

     研究チームは今後も分析を継続し、木材補強のさまざまな配置の影響を検証、より詳細な床荷重や材料特性を組み込んだ分析を目指している。サステナビリティの観点からも注目されている木造高層建築のヒントが、紀元前の東アフリカからもたらされるとすれば興味深い限りである。

    【参考】
    https://www.heritagedaily.com/2026/10/ancient-ethiopian-palace-could-have-stood-16-storeys-high-study-finds/159472

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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