エンジェルヘアはUFOの肉体の一部? NHI仮説で振り返る「エヴォラ事件」の痕跡/忘れじのUFO事件史

文=秋月朗芳(UFO手帖)

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    空飛ぶ円盤という言葉が世に飛び出して約80年。 数々の遭遇の中から忘れられない── 忘れたくない事例を振り返る。 今回は謎のゼラチン状物質が残された事件について。 昨今話題のクラゲUFOが生命体ならば、あれもそれだったのでは?

    UFOからの落とし物はネバネバした白いもの

     近年、UFOやUAPを操る存在、あるいはUAPそのものを指す言葉として「NHI(ノン・ヒューマン・インテリジェンス/非地球人知性)」という言葉が浸透しつつある。「ムー」では「ノン・ヒューマン・アイデンティティ/非地球人知生体」として言及された概念だ。
     ただ現状、NHIといいながら、結局は「異星人」を今風にいい換えただけの使われ方も少なくない。でも、せっかく新しい言葉なんだから、そこに別の可能性を見たい。もっと奇妙で、得体の知れない「違うもの」であってほしい。

     今回ご紹介する「エヴォラ事件」は、まさにそんな「違うもの」の姿を脳裏に浮かび上がらせる、きわめて奇妙な事件だ。

     1959年のポルトガル。現在では世界遺産の観光都市として知られるエヴォラも、当時はリスボンから離れた静かな地方都市だった。その町に、エヴォラ工業商業学校があった。
     11月2日、同校の校長で生物学者でもあったジョアキン・ゲデス・ド・アマラル教授は、校内で騒ぐ学生たちに呼び出される。彼らが指さす空には、鳥でも飛行機でもない、青く光る物体が浮かんでいた。アマラル教授は急いで研究室に飛び込み望遠鏡を向けた。それは民間機ほどの大きさの青く光る楕円形の物体で、空中で静止したかと思えば、高速で移動するなど、物理法則を無視するように動いたという。
     さらに数分後、もっと不可解な物体が現れる。それは縁を波打たせた巨大なクラゲのような物体で、最初の青い物体はその周囲を回り出した。そんな異様な光景がしばらく続き、やがてふたつの物体は空の彼方へと消えていったという。
     ここまででも十分奇妙だが、怪異はそこで終わらない。直後、上空から白い繊維状の物質が降り注いだのである。アマラル教授は両手を差し出し、その物質を受け止めた。このいわゆる「エンジェルヘア」の雨は、4時間にわたって降りつづいたという。
     クラゲのようなUFOは決して主流ではない。だが不思議なことに、時代をまたいで何度も現れ、近年はむしろ存在感を増しているようにも思える。

     2017年には、イラクの米軍基地周辺で撮影されたクラゲ状物体の映像が公開され、米国防総省のAAROはこれを「風船の束」と評価した。妥当な説明にも思えるが、なぜ軍事基地周辺にそんなものが漂っていたのかという疑問は残る。
     また2026年6月には、同年4月にイラン上空で撃墜された米空軍F-15Eのパイロットが、脱出前に「クラゲ」のように連結して動く多数のドローンを目撃したと報じられている。
     クラゲUFOが注目される背景には、NHIという言葉によって、UFO=金属的な物体という従来のイメージから離れたいという意識があるのかもしれない。

    1978年10月13日、スペインの有力紙「El País」に掲載されたエヴォラ事件の「地球外生物(顕微鏡写真)」(Medium.comより)。
    2017年10月23日、イラクのアル・タカドゥム空軍基地上空約2700フィートを飛行していた正体不明の物体の赤外線カメラ映像。「Jellyfish UAP」とも呼ばれるその姿は、空を漂うクラゲのようにも見え、見る者に奇妙な印象を残す(AARO公式サイトより)。

    小さな生命体の集合した何か?

     エヴォラ事件には、さらに奇妙な続きがある。空から降った物質を持ち帰ったアマラル教授は、それを顕微鏡で観察した。するとそこには、ゼラチン状の物質に包まれた核のような中心部と10本の触手を備えた、極小の生物らしきものが見えたという。
     のちに分析を引き継いだ細胞生物学者カルロス・アゼヴェードは、それを植物というよりヒトデのような動物に近い存在ではないかと話している。

     もちろん、これをそのまま信じることはできない。ただ、学校や関係人物は実在し、1959年のエヴォラでエンジェルヘア騒動があったこと、さらに同日シントラ空軍基地でも似た物質が見られたという証言が残っていることは、この事件を作り話として片づけにくくしている。

     では、この白い繊維状物質が巨大なクラゲUFOから放たれたものだったとしたらどうだろう。あるいはクラゲUFOそのものが崩れ、その一部が地上に降り注いだのだとしたら。
     UFOには、群れとなって飛んでいたり、ひとつが複数に分裂したり、逆に融合してひとつになるといった目撃談がある。UFOは最初から「一個の機械」ではなく、無数の微小な単位が集まって仮の姿を得る集合体のようなものだとしたら……。

     この発想から連想されるのが、まだ実現していない未来技術「ユーティリティフォグ」である。ナノマシンの群れが霧のように集散し、必要に応じて形を変え、物体さえ構築するというアイデアだ。想定されるナノマシンは互いに連結し、通信し合い、巨大な構造を作る。エヴォラで見つかったという10本の触手を持つ微小体を、上空のクラゲUFOの「同じ存在の別の相」として見るなら、事件の印象は一変する。
     さらに現代の私たちは、生成AIという「人間以外の知性(NHI)」にすでに触れている。もしそうした知性が物理的な体を持とうとするなら、それは肉体ではなく、こうした微小な機械群を選ぶかもしれない。さらに想像を膨らませれば、ひとつひとつが薄い知性を持った群体が地球の大気に満ち、それがときおりUFOのような姿を取るのだとしたら──。

     そんな想像をしていると、今すぐエヴォラのサンプルを取り寄せ、現代科学で再調査したくなる。だが、それは叶わぬ夢である。サンプルは最終的にリスボン大学理学部に渡り、1978年の大火災で失われてしまったのだ。UFO事件史で繰り返される、あと一歩で届かない証拠。エヴォラ事件もまた、いつもの夢なのである。

    エヴォラで採取されたエンジェルヘアのサンプルを120倍で拡大した顕微鏡写真。中央核と放射状の触手を持つ、未知の微小構造体の全体像が確認できる(Medium.comより)。
    (上下)フォグレットと呼ぶ多数のナノマシンが連携して機能するという架空のマシン「ユーティリティフォグ」の概念図。大量のフォグレットを大気に充満させれば、空中からあらゆる物質を作り出せると想定している。J・ストーマン・ホールによって提唱された概念(画像=Wikipedia)。

    ● 参考=https://caballodetroy.medium.com/an-extraterrestrial-living-being-captured-and-studied-eighteen-years-ago-222dfa7bfe78 
    https://www.AARO.mil/UAPCases/UAP-Case-Resolution-Reports/ https://www.dvidshub.net/video/960331/al-taqaddum-object https://edition.cnn.com/2026/06/23/politics/iran-drones-f-15-pilot-intelligence https://en.wikipedia.org/wiki/Utility_fog

    (月刊ムー 2026年10月号)

    秋月朗芳

    2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」代表。同会で年一回発行している同人誌『UFO手帖』の編集長を務める。また最近『日曜版』という、オカルト/ポップカルチャー/テックを扱うニュースサイトの運営も始めている。

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