時空を超えて過去や未来をも見透す! 遠隔視リモート・ビューイングの基礎知識

文=泉 保也

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    断片的な情報から、遠隔地のさまざまな事物を透視するリモート・ビューイング(遠隔視)。 それは距離だけでなく、ときには時間をも超えて、過去や未来も視ることができるという驚異的な力だ。 そして、並外れたリモート・ビューイング能力を持つビューアーたちが、東西冷戦時代のアメリカで、極秘で対ソ連の諜報活動に参加していた。 彼らはそのサイキック・パワーで、いったい何を見たのか?

    科学者を驚嘆させたインゴ・スワンのRV能力

     アメリカのカリフォルニア州メンロー・パークにあるスタンフォード研究所(SRI)の研究室の電話が突然鳴った。その研究室では、物理学者ラッセル・ターグ博士と工学者ハロルド・パソフ博士が、超能力者インゴ・スワンを被験者として、「リモート・ビューイング」の実験・研究を継続的に行っていた。

    RVの第一人者といわれるインゴ・スワン。驚異的なRV能力の持ち主である。
    (上)スタンフォード研究所でリモート・ビューイング(RV)実験を行うインゴ・スワン。(下)彼がスケッチした絵は、彼の頭上に置かれた目標物を正確に表していた。

     ターグが受話器を取った。相手はターグも面識がある政府筋の科学者だった。

    「ドクター・ターグ、君たちの実験レポートによると、インゴ・スワンという男は地理座標だけで、その場所を透視して絵に描けるそうだが、本当かね」

     揶揄(やゆ)するような口調である。

    「本当だとも。何百回も実験を重ね、インゴ・スワンに特異な能力があることを確認した。今も彼と今後の実験方法について打ち合わせているところさ」

    「それはタイミングがいい。スワンに電話を代わってもらって、私がいう地理座標に何が見えるか答えてもらえんかね」

     挑戦的な態度にターグは怫然(ふつぜん)としたが、送話器を手で押さえ、事の次第をスワンに伝えた。

    「オーケー、やってみよう」

     悠然と応じて受話器を握ったスワンに対して、科学者が与えた地理座標は南緯49度20分、東経70度14分だった。オーストラリア、アフリカ、南極の3大陸からほぼ等距離に位置する洋上である。

     目を閉じて透視すること数十秒。スワンが視た情景を図上に再現しはじめた。岩だらけの寒々とした島で、海岸線といくつかの建造物、滑走路、燃料タンク、車道などの配置図をリアルに描いてから、要所要所の特徴と印象を科学者に語って聞かせた。

    「……!」

     科学者の驚愕ぶりと狼狽ぶりが、受話器を通じてはっきりと伝わってくる。

     スワンに代わって電話に出たターグに向かって科学者はいった。

    「リモート・ビューイングの内容はきわめて正確だ。あの地理座標は南インド洋上のフランス領ケルゲレン諸島を示すもので、そこには超高層大気を研究する仏ソ共同の研究基地があるんだ。疑って悪かった。許してくれ」

     のちにスワンが描いた絵図を見たフランスの南極研究所のザン・リーボは、その正確さにただただ驚嘆するばかりだったという。

     スワンは、この座標による走査(スキャニング・バイ・コーディネイト)を短縮して「スキャネイト」と呼び、多くの劇的な成果をあげている。

    (上)スワンが座標軸だけの情報からRVしたケルゲレン諸島のスケッチ。(下)ケルゲレン諸島の実際の地図。スワンのスケッチと驚くほど似ている。
    ケルゲレン諸島の仏ソ共同研究基地。スワンは岩だらけの島に建物が点在する様子もいい当てている。

    未来の出来事を予知し、見えない施設を透視する

     リモート・ビューイング(以下RVと略)は、邦訳すれば遠隔視。ESP(超感覚的知覚)の一種で、いくつかの断片情報をもとに遠隔地の人物や物体、情景などを透視する能力のことをいい、ときに時間を超えて過去や未来すら透視できるといわれる。

     アメリカのRVの研究・開発は東西冷戦の真っ只中の1972年にはじまった。当時、旧ソ連は超能力兵器の開発を精力的に進めており、危機感を抱く国防情報局(DIA)や中央情報局(CIA)は対抗措置として、人間の特殊能力の可能性について研究していた屈指のシンクタンクであるSRIに白羽の矢を立て、RVの研究・開発に着手したのだった。

     指揮を執ったのは前出のターグとパソフで、スワンをはじめとするリモート・ビューアーらを対象とした実験の結果、RVが時空を超越すること、電磁シールドの影響を受けないことなどが判明した。

    カリフォルニア州にあるスタンフォード研究所(SRI)。米政府によるRV研究の出発点である。
     
    (上)SRIの物理学者ラッセル・ターグと(下)工学者ハロルド・パソフ。両者の指揮のもと、RV研究は飛躍的に進んだ。

     1974年にSRIで行われた実験例をふたつ紹介しておこう。ビューアーはパット・プライス。当初はボランティアとして実験に加わった元警察部長である。

     ターグとプライスは研究室に残り、パソフと研究所長ボナー・コックスがでたらめな進路で随意にドライブし、30分後どこにいるかをRVするという実験だった。

     15時=車がSRIを出発。
     15時5分=プライスが「午後3時半まで待たなくてもいい。ふたりは湾沿いの小さな突堤かドックへ行くはずだ。小型船やモーターボート、小さな帆船が視える。ふたりのすぐそばに東洋風の建物がある」と発言。
     15時30分=車がターゲット地点に到着。
     15時45分=車がターゲット地点を出発しSRIへ向かう。
     16時10分=車が帰着。パソフとコックスは、レッドウッド市営マリーナへ行ったとして、その風景について語った。

     それはプライスが視た情景とすべて合致していた。市営マリーナは避難港とドックを兼ねており、中小のモーターボートや帆船が碇泊中で、ドックを見下ろす丘の上には東洋風のレストランがあった。

     RVは正確で、しかも”予知”RVをしていたのである。

    元警察本部長の肩書きをもつリモート・ビューアーのパット・プライス(左)。右に映っているのはハロルド・パソフ。

     プライスはスキャネイト能力も発揮した。彼に与えられたのは、ターゲット地点の緯度と経度、「ソ連の施設」という情報だけである。

     瞑想状態に入り、ターゲット地点に意識を集中したプライスが語りはじめたのは、1分ほどが経過してからだった。

    「橋の形をしたクレーンのような巨大重機が視える。クレーンには車輪が8個あり、レール上を移動している」

     そのターゲット地点は、じつはセミパラチンスクに極秘裡に建設された核実験場だった。

     プライスはそのRVが正確無比だったことを確かめることなく1975年に死亡したが、1977年5月2日発行の「アビエーション・ウィーク・マガジン」誌上で公開されたセミパラチンスク核実験場の見取図には、レールに乗った橋形の巨大クレーンが描かれていたのである。

    プライスがRVしたソ連のセミパラチンスクにある核実験場の見取図。
    (左)プライスがスケッチした、8つの車輪をもつクレーン。(右)核実験場の見取図にも、8つの車輪のある巨大クレーンが認められる。

    ペンタゴンが諜報活動に利用した驚異のRV能力

     これらのRVプログラムは、CIAでは「インスコム」「スキャネイト」、DIAでは「サンストリーク」「グリルフレーム」「センターレーン」などのコードネームで呼ばれ、その後、アメリカ国防総省の軍事情報収集計画へと引き継がれていく。極秘プロジェクト「スターゲイト」がそれだ。

     1978年、陸軍情報保安司令部将校スキップ・アットウォーターがRV部隊を創設し、「ゴンドラ・ウォッシュ」というRVプログラムをメリーランド州フォート・ミードでスタートさせた。実験・開発の場は翌年初頭にSRIに移されて、名称も「スターゲイト」と変更され、国防総省の監督下で数多くの実験が行われるのである。

    米国防省ペンタゴン。ここでRVを利用した「スターゲイト・プロジェクト」が極秘裏に進められていた。
    陸軍情報保安司令部にRV部隊を創設したスキップ・アットウォーター。
    RV部隊によるプロジェクトは、これらメリーランド州フォート・ミードの実験室でスタートした。

     軍の情報将校のなかから選ばれた当初のリモート・ビューアーは、FBI超能力調査官として日本でも有名なジョー・マクモニーグルら6名。彼らは、次のいずれかの超能力を備えていた。

    ▼コーディネイト・リモート・ビューイング(CRV)=特定の地理座標をもとに情報を得る。インゴ・スワンがいうスキャネイトと同義。

    ▼エクステンデッド・リモート・ビューイング(ERV)=瞑想とリラクゼーションの組み合わせによる透視。

    ▼リトゥン・リモート・ビューイング(WRV)=トランス状態と自動書記あるいは自動描画を組み合わせた透視。

     RVを用いれば相手に悟られることなくターゲット地点に侵入できるわけで、彼らビューアーはサイキック・スパイとして養成され、さまざまな政府機関に出向いて目覚ましい成果をあげた。

     ちなみに、マクモニーグルは18年間の在籍期間中に4000件以上ものRVを行い、的中率はじつに53パーセントに上ったという。

    当代随一の「サイキック・スパイ」といわれるジョー・マクモニーグル。FBI超能力調査官として日本でも有名だ。
    RVを行うマクモニーグル。彼は「スターゲイト・プロジェクト」で4000件ものRVを行い、53パーセントも的中させている。

     的中例をいくつかあげよう。

     1979年、軍当局はソ連がセベロドビンスク付近で大きな建造物を新築したという情報をつかんだ。が、建造物のドアを遠くから撮影した写真があるだけで、内部に何があるかわからない。

     その写真を唯一の情報源として、マクモニーグルともうひとりのビューアーがRVを試みた。

    「内部にあるのは潜水艦だ。搭載されているミサイルは従来のソ連製のものとは異なっているので、おそらく新型の潜水艦だろう」

     ふたりが出した結論は、のちに立証された。諜報活動で入手した建造物内の写真に写っていたのは、新型のタイフーン級潜水艦だったのである。

    ソ連の「タイフーン」級原子力潜水艦。マクモニーグルらビューアーたちは、遠くから撮影したドアの写真だけで、建物内部にある原潜の存在を見抜いた。

     1981年、ジェームス・ドジャー准将がイタリアで同国のテロ組織・赤い旅団に誘拐されるという事件が起こり、DIAからRVの依頼があった。准将の監禁場所を特定してほしいというのだ。

     RVしたのはマクモニーグル以下4人で、マクモニーグルはベネチア近くのパドアという町の通りや監禁場所のビル、部屋の内部を絵に描いた。

     手錠をかけられた准将が部屋に張られたテント内で椅子に坐らされ、イヤホンで大音量の音楽を聴かされている場面を描いたビューアーもいた。

     DIA局員が現地に急行したとき、イタリア警察はすでに准将を保護していたものの、マクモニーグルらのビューアーが視た町名、通り、建物などの情景の85パーセントは正確だった。

    めざましい成果と極秘プロジェクトの終焉

     彼らビューアーは未来も視た。1980年代初め、ソ連の首都モスクワに建設中のアメリカ大使館に盗聴器が仕掛けられていないかRVしてほしい、とCIAから依頼された。新大使館の完成予定は数年後。つまり、未来に完成する建物のRVだ。

     ビューアーたちは半年後ごとに未来へと進み、大量の盗聴器が壁や天井に埋め込まれているのを視た。スチール梁(はり)とそれを補強する棒を組み合わせた盗聴器用の巨大な発信アンテナも視た。

     指揮官のスキップ・アットウォーターはさらに未来へと進ませた。ところが、ビューアーたちが描く情景に違いが生じはじめた。データが一致しないのである。

     RVは失敗に終わったかに思われた。が、そうではなかった。

     1983年、CIAと国家安全保障局(NAS)が建設中の新大使館にX線探知機を持ち込んで壁や天上の内部を調べ、数千もの盗聴器や巨大発信アンテナを見つけた。結局、新大使館建設は中止され、建物は破却された。

     データが一致しなかった理由はそこにあった。RVしようにも、その建物は破却されて未来がなかったのである。

     紙数の関係で事例の紹介はこの程度でとどめるとして、スターゲイト・プロジェクトに関与したリモート・ビューアーは数々の目覚ましい成果を残したが、ソ連の崩壊とそれに伴う冷戦終了後の1995年、同プロジェクトは幕を閉じたといわれる。

    多方面で活躍するリモート・ビューアーたち

     一方、同プロジェクトで訓練を受けたビューアーたちは、極秘任務から解放され、その稀有(けう)な能力を民間で活用するようになった。

     日本のテレビにもしばしば登場し、本誌でも邪馬台国と卑弥呼をRVしたジョー・マクモニーグルのほか、RVを企業化してサイ・テック社を設立したエド・デームズらは広く知られているところだろう。

    著名なビューアーのひとりであるエド・デームズ。1989年にサイ・テック社を設立し、RVをビジネスとして活用している。

     1989年に設立されたサイ・テック社は多数のビューアーを擁し、軍事面だけでなく産業面でも着々と実績をあげている。しかも同社は1週間でRV能力を開花させるプログラムを開発し、ビューアー養成セミナーも実施している。サイ・テック社だけでなく、同様のセミナーを開いている民間企業や専門学校は相当数ある。

     RVはESPの一種であると前記したが、正確にはそうではない。訓練によってだれもが獲得できるテクニックなのだ。

     インゴ・スワンはRVを五感と同じようなものと見なし、自分がRVするときどのようなプロセスを経るのかを研究し、それを普通の人間に応用できるテクニックを開発した。実際、SRIの研究員をトレーニングすることで、超能力がない普通の人間がRV能力を獲得できたという。

     スターゲイト・プロジェクトにゴーサインが出されたのは、そうした背景があったからで、エド・デームズやジョー・マクモニーグルらはスワンに師事してその能力を開花させたのだった。

     そして、軍事利用からはじまったRVのノウハウは、スターゲイト・プロジェクトの終焉とともに機密解除され、一般市民も自由に学べるようになったのである。

     一例をあげれば、2003年11月3日、アメリカのアトランティック大学で、RV研究者スティーブン・シュワルツが主催するRVセミナーが開かれた。

    ターゲット地点は「イラクの元大統領サダム・フセインがアメリカ軍もしくは連合軍によって発見されるときの居場所」で、47人の学生たちがその場所の情景を絵図に描いた。

     フセインは同年12月16日、アメリカ軍特殊部隊により、民家の庭に掘られた穴のなかで発見・拘束されたが、軍によって公開された見取図とRVセミナーで得られた絵図は酷似していたのである。

    2003年12月16日、米軍に拘束されたイラクのフセイン元大統領。
    (上)アトランティック大学のRVセミナーで得られたスケッチと(下)フセインが潜んでいた民家の写真。建物の左右に木が生えているなど、ビジュアルが酷似している。

     ただ、RVのメカニズムについては不明な部分が多い。人間の意識が肉体を離脱して遠隔地の事物を視ているわけで、幽体離脱と関係があるともいわれる。

     実際、インゴ・スワンは生まれつき幽体離脱能力を備えていたし、ジョー・マクモニーグルは1970年に幽体離脱を体験してから、勝手に意識が空間移動し、さまざまな世界を視ることができるようになった、と自身が語っている。

     とまれ、RVテクニックの詳細については関係書に譲るが、その能力を獲得すれば、地球上だけでなく宇宙空間をも自由に旅することができるし、未来予知もできるようになるという。

    ●参考資料=「CIAも恐れる透視能力者」(秋山眞人・「ムー」176号所収)、「禁断のリモート・ビューイング」(パンタ笛吹+並木伸一郎/「ムー」269号所収)、「『スターゲイト計画』の真相」(並木伸一郎/「ムー」292号所収)、「リモート・ビューイング」(デビッド・ハーベイ/ムー別冊「世界超能力大百科」所収)ほか

    (月刊ムー 2010年7月号初出)

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