古墳やスフィンクス像、人面岩に水路…火星古代文明の痕跡を追う!/嵩夜ゆう
人面岩をはじめ謎の構造物が多く指摘される火星。人類が進出を目指す赤き星には、やはり、かつて文明があった!?
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ヨーロッパ人は黄金の都「エル・ドラード」を求め、大航海時代の幕開けとともに、新大陸へ殺到した。それから約350年後、その黄金都市の実在を信じ、アマゾンの密林へ分け入ったイギリス人がいる。インディ・ジョーンズのモデルにもなった伝説の探検家は、はたして何を見つけたのか?
目次
エル・ドラード――日本語では「黄金郷」と訳される。文字通り、黄金の都だ。もともとは「金箔をかぶせた」あるいは「黄金の人」を意味するスペイン語で、かつてアンデス地方に存在した黄金の儀式からきた言葉だという。
そもそもヨーロッパ人は、古くから黄金に対する強い憧れを抱いていた。そんな彼らの黄金への強い憧れを示すのが、マルコ・ポーロによって記された『東方見聞録』に登場する、あの黄金の国ジパングだ。
それによると、中国の東海上には、莫大な黄金を産出するジパングという島国があるという。
この国では、王の宮殿は黄金でできており、人々も皆、礼儀正しく穏やかに暮らしている。
まさに夢のような理想郷だが、一説によるとジパングのモデルは、奥州平泉(現在の岩手県平泉町)の中尊寺金色堂ではないかともいわれている。当時の奥州は莫大な量の黄金の産出地として知られており、なかでもこの金色堂は内外ともに総金箔貼りで飾られ、圧倒的な威容を誇っていた。
この金色堂の噂が、黄金の国となって大陸に伝わり、マルコ・ポーロの耳にも入ったのではないか、というのだ。
ヨーロッパにおける大航海時代の始まりは15世紀半ばとされる。これによってヨーロッパの黄金事情は一変することになった。いわゆる「新大陸」――中南米から、大量の金と銀が略奪され、運ばれてきたのだ。
この大航海は、ある意味、黄金の国ジパングを捜す旅でもあった。彼らはジパングは発見できなかったが、別の黄金の国=エル・ドラードを見つけたのだ。
1511年、パナマを訪れたスペイン人たちは、ある噂を耳にする。船で数日進んだ南の地に黄金の帝国――エル・ドラードがあるというのだ。その国はどこもかしこも黄金であふれており、台所道具でさえ黄金でできているというのである。まさに黄金の国ジパングの南米版だ。
翌年、パナマ騎兵隊長のアンダゴヤという人物がこの噂に飛びつき、パナマから南に向かって、船で出発した。
アンダゴヤはその途中、「ビルー」と呼ばれる川の近くで、あるインディオと出会う。
このインディオがいうには、豊かな帝国=エル・ドラードは間違いなく南に存在するという。
こうして「ビルー」はエル・ドラードの代名詞となり、いつしか「ペルー」と発音されるようになった。もちろん、現在のペルーのことだ。
結論からいうと、アンダゴヤはエル・ドラードを発見することはできなかった。だが、それから2年後の1524年、さらに南へと進んでいった一行がいる。フランシスコ・ピサロをリーダーとする部隊である。
彼はパナマ司祭から資金援助を受け、船で旅立った。
道中、黄金のアクセサリーを身にまとったインディオと出会ったり、エル・ドラードの噂を耳にしたりしたピサロ一行は、ますますエル・ドラード実在の確信を高めていった。しかし隊員たちの不満が高まったこともあって、コロンビアの海岸線を南下する途中で挫折してしまう。
それでもピサロはあきらめなかった。1526年から1527年にかけて、2回めの遠征を決行するのだ。
このときピサロはサン・ファン(現在のコロンビアのブエナエナベントゥラ)に上陸したが、船長のバルトロメ・ルイスはさらに南下を続け、ついに一艘の小舟と出会う。航海中、初めてすれちがうインディオの舟だった。そしてそこには、見事な毛織物の服を身につけた数人の男女が乗っていたのだ。
通訳を介して話を聞いてみると、彼らの国は、まさに豊かな黄金の帝国だというのである。
黄金郷=エル・ドラードがついに見つかった!
ルイスは喜びいさんでピサロのもとへ戻った。
ピサロは信頼できる12人の部下とともに海岸沿いを南下。ついにエル・ドラード=インカ帝国を「発見」する。
インカ帝国は黄金であふれ、まさに黄金郷そのものだった。
ピサロは戦いの末、皇帝アタワルパを捕らえ、ヨーロッパの風習にならって身代金を要求した。
すると皇帝アタワルパは、2か月待ってもらえれば1部屋は黄金で、2部屋は銀で満たすことを約束する。
かくしてピサロは、莫大な黄金を手にしたといわれている。なお、アタワルパはその後、哀れにも処刑されてしまった。
ヨーロッパ人にとって、かつての南米大陸は黄金郷=エル・ドラードが存在する夢の大陸だった。それは間違いない。
だが、やがて南米大陸の支配と開発が進むと、エル・ドラードは夢物語だったとされ、人々の意識から遠ざかっていった。
そんななか、エル・ドラードへの夢を再び燃えあがらせたのが、パーシー・ハリソン・フォーセットだった。
ちなみに、彼はしばしば「フォーセット大佐」として紹介されるが、それはあくまでも自称であり、実際には「少佐」だったことをつけくわえておく。
ともあれ、彼もまた、エル・ドラードに魅せられた人物のひとりだったのである。彼が追い求めたエル・ドラード――それは「幻の黄金都市Z」と呼ばれている。ただし、最初からフォーセットは、エル・ドラードを捜していたわけではない。
あの大航海時代から350年以上がすぎた1906年10月、フォーセット率いる一行は、アマゾンのジャングルへ足を踏み入れていた。彼の身分は軍人で、目的はブラジルとボリビアの国境線を定めること、つまり測量にあった。
20世紀になっていたとはいえ、熱帯の気候は容赦なく彼らの体力を奪い、伝染病の危険を常に招いていた。さらにジャングルの住人たち――ジャガーや毒ヘビ、インディオがいつ一行を襲ってくるかもわからない。
まさに精神的にも肉体的にも、極限まで削られるような過酷な旅だった。
だがそれだけに、アマゾンはフォーセットの心を強くとらえていたのだろう。帰国後もアマゾンの魅力は彼の脳裏を離れず、1908年、1910年、さらに1911年とたてつづけにアマゾンのジャングルへ足を踏み入れ、測量を行っている。
そしてこの間にフォーセットは、アマゾンの奥地には高度な古代文明を伝える黄金都市が存在するのではないか、というアイデアに取り憑かれるようになった。彼はこの黄金都市=エル・ドラードを「Z」と名づける。そして以後の人生を、黄金都市Z捜しに捧げたのである。
ちなみにフォーセットは、黄金都市Zを、かつて大西洋に存在したというアトランティスの植民都市ではないかと考えていたという。
フォーセットが耳にした現地住民からの情報によれば、彼らの祖先は広くて美しい集落に住み、とても豊かな生活をしていたというのだ。実際、ジャングルには古代の絵が刻まれた岩や、土器などもあった。
かくしてフォーセットは、かつてこの地には、高度な文明と都市があったという確信を抱くようになる。
実はフォーセットが黄金都市Zの存在を確信した背景には、もうひとつの理由があったともいわれている。
それが、彼がセイロン(現在のスリランカ)赴任中に体験したと伝えられるエピソードだ。
ここでフォーセットは、インドの北からやってきたという聖者と出会い、こんな予言をされたというのである。
「ニーナ(フォーセットの妻)は、世界の新しい人種の父となる男児を産む。その子が成長したとき、遠い南の地で父親に同行し、ふたりとも行方を絶つだろう。ただしそれは夫妻の子息が、新しい文明の胸中に戻るためなのである」
はっきりいっておくが、このエピソードの信憑性は高くないというのが一般的な評価だ。だが後述するように、もしも事実であれば、予言は見事に成就したことになる。あるいはフォーセットがジャングルをさまよううちに、自分はそのように運命づけられていたのだと思いこんだとしても、不思議はないだろう。
第1次世界大戦が終わると、フォーセットは退役し、本格的に黄金都市Zを捜し求めるための探検計画を進めるようになっていった。そのためには資金が必要で、彼は必死になってスポンサー捜しに奔走したが、協力者はなかなか現れない。
それはそうだろう。本気でエル・ドラードの存在が信じられていた大航海時代とは、状況は大きく違うのだ。ブラジルの奥地にエル・ドラードがいまも存在しているなどという話をしたところで、だれも本気で耳など貸さなくなっていた。
それでも1920年になると、ブラジル政府からわずかながら資金提供を受け、探検隊を結成。このときはできるだけ肉体的にも精神的にも屈強な隊員を選んだが、ジャングルの過酷な環境に隊員たちは音を上げてしまい、捜索は中断する。
しかしフォーセットはあきらめなかった。翌1921年には私財をはたいてひとりでアマゾンに入り、3か月間、飢えと乾きに苦しみながらジャングルをさまよい歩いてみたものの、何の成果も得られなかった。
こうして破産状態に陥ったフォーセットだったが、1924年、ある記者と知り合ったことで、状況は一転する。
幸運にも彼を通じてアメリカの団体から資金援助を受けることに成功し、長期間の黄金都市Z捜索計画をスタートさせたのだ。今回は、最低でも2年間はジャングルで過ごし、黄金都市Zを発見するまで戻らない決死の覚悟だった。
だが、そうなると問題は隊員選びだ。前回の隊員たちよりも、さらに屈強な肉体と精神を持つメンバーが必要となる。そこで白羽の矢を立てたのが、フォーセットの息子ジャックと彼の親友ローリーだった。
そう、まさにかつてセイロンで受けたあの予言が成就しようとしていたのだ。
1925年、3人は不退転の決意でアマゾンのジャングルへと足を踏み入れた。
リオデジャネイロから列車で1500キロの距離を走り、アゾンの奥地にあるクイアバという町に到着。ここでふたりのガイドを雇うと、さらに150キロ先にあるバカイリを目指していった。
ようやく到着したバカイリは、20軒ほどの粗末な小屋が建ち並ぶだけの場所だった。そこからさらにジャングルを進むうちに、ガイドが同行を拒否するという最悪の事態が発生。
仕方なく、それまでの記録と妻への手紙を彼らに託し、フォーセット一行はたった3人でさらなる奥地へと進んでいくことになった。そしてそのまま、ぷつりと消息を絶ってしまったのだ。のちには捜索隊も結成されたが、現在に至るまで、3人の行方は杳として知れないでいる。
問題は、彼らが黄金都市Zへたどり着いたのかどうかということだろう。そこで気になるのが、前述の予言である。
「子が成長したとき、遠い南の地で父親に同行し、ふたりとも行方を絶つだろう。ただしそれは夫妻の子息が、新しい文明の胸中に戻るためなのである」
この予言を信じるなら、フォーセット親子は黄金都市Zに到達したはずだ。もちろん、黄金都市Zも実在したことになる。だが、そうでなければ、3人はあえなく命を落としたということになろう。
衛星写真の技術が発達した現代社会では、アマゾンの奥地であっても宇宙から見下ろすことができる。残念ながら、そこに黄金都市Zらしき姿を見つけることはできない。
もちろん分厚い緑に覆われたジャングルだから、完全に緑に埋没しているという可能性もあるだろう。だが筆者はここで、もうひとつの可能性を指摘しておくことにしたい。
もしかすると黄金都市Zは、地底都市なのではないか、ということである。
仏教やヒンドゥー教の伝承によると、地底には「アガルタ」もしくは「シャンバラ」と呼ばれる理想郷があるという。また、世界各地に残るさまざまな神話でも、地底世界の記述は数多く見ることができる。そして地底世界への入り口は、世界各地に存在しているのだ――と。
一般にこうした考えを「地球空洞説」という。ただしその内容は、地球内部が完全に空洞になっているという説と、地核のなかに広大な空間があり、そこに都市がある、という説などある。いずれにせよ、アガルタやシャンバラはこうした地底世界にある、というのだ。
しかもレムリアやアトランテ
ィスなど、失われた古代文明の住民は、危機の際にこの地底都市に逃げこんだという指摘もあるのである。
だとすればフォーセットが捜し求めた黄金都市Zは、地底都市だった可能性のほうが高いのかもしれない。いや、そう考えたほうがむしろ自然だろう。
最後に――。実はブラジルは、世界有数の金の産出国でもある。1690年代にアマゾンで金鉱脈が発見されると、たちまちゴールドラッシュが起こり、18世紀半ばにはブラジル産の黄金が、世界の総生産量の85パーセントを占めたこともあるのだ。
最近になっても、1970年代以降、アマゾン奥地でゴールドラッシュが起こっており、「ガリンペイロ」と呼ばれる人々が今も一攫千金の黄金――つまりエル・ドラード――を求めてジャングルに分け入っている。
こうした背景から見ても、フォーセットがいう黄金都市Zの存在も、一概に否定はできない。できうるなら、フォーセット親子は今も、黄金都市Zの「胸中」に抱かれていると願いたいものである。
(ムー2018年3月号掲載)
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