意識はやはり量子現象だった! われわれの意識は宇宙と繋がっているーー最新研究で確認

文=仲田しんじ

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    意識の源はどこにあるのか――。最先端の研究で、意識が量子現象であることを示唆する報告が相次いでいるという。

    マウス実験で脳内量子現象を確認

     量子力学の「重ね合わせ」や「量子もつれ」という特性を利用して超高速計算を行う量子コンピュータだが、われわれの脳内でも量子現象が起きている可能性が示唆されている。

     1990年代にノーベル賞受賞物理学者のロジャー・ペンローズ氏と麻酔科医のスチュアート・ハメロフ氏は、脳の神経微小管(マイクロチューブル)が脳内の量子プロセスを可能にし、意識を生み出すという考えを提唱した。彼らは1996年の論文で、意識は脳の微小管を通過する量子波として作用する可能性があり、脳内の量子的な事象こそ意識の源であるという革命的な仮説を提示した。

     これは「量子脳理論(Orch OR理論)」として知られており、ペンローズ氏が「客観収縮(OR、Objective Reduction)」と呼ぶ数学的プロセスを通じて、微小管が量子計算を実行する能力をもつことが示唆されている。

     量子物理学において、粒子は古典物理学が観測するような明確な物理的位置をもつ形では存在せず、むしろ“確率の雲”として存在している。粒子が環境と接触して観測されると、粒子は複数の状態の「重ね合わせ」の状態を失って崩壊する。ペンローズ氏は「脳内で量子波動関数がこのように崩壊するたびに、意識体験の瞬間が生じる」と仮説を立てたのだ。つまり、意識とは覚醒時に連綿と続く現象ではなく、量子波動関数の崩壊の瞬間の連続体であることになる。

     では、これを証明することは可能なのだろうか。米ウェルズリー大学の研究チームが2024年8月に学術誌「eNeuro」で発表した研究は、マウスに麻酔を施す画期的な実験により、脳内の微小管が意識体験を司っていることが確認されたと報告している。

     人間を含む動物は睡眠時に意識を失うが、当人が本当に眠っているのか、それとも目を閉じて静かに横になっているだけなのか、外から見て判然としないこともある。

     本当に眠っているのかどうか、人間であれば当人に声をかけてみればすぐにわかるが、動物実験においては仰向けにひっくり返してみる手法が用いられている。

     姿勢反射消失(LORR、Loss of Righting Reflex)は動物が仰向けにされた際に正常な姿勢(腹臥位)に戻れなくなる状態であり、動物実験における鎮静、麻酔、または意識消失の指標として100年以上利用されてきた。特に鎮静薬や麻酔薬の有効性評価において、動物の意識レベルの低下を直接的に示す標準的な手法である。

     まず研究チームは、医療処置のために意識を失わせる吸入式全身麻酔薬の一種であるイソフルランをマウスに投与した。そして投与されたマウスの1グループには脳内の微小管の働きを可能な限り維持する微小管安定化薬を投与し、もう一方のグループには投与しなかった。

     すると、微小管安定化薬がマウスの意識を長時間維持することが判明。つまり、微小管の働きを薬剤で安定化されたマウスは全身麻酔で意識を失うまでに時間がかかったのだ。一方、安定化薬を投与されなかったマウスは、全身麻酔でより早く意識を失い、すぐに姿勢反射消失状態になったのである。以上の結果から、微小管の働きが意識に関係していることが示唆されてくる。

    ※画像は「eNeuro」より

     ウェルズリー大学の研究は“意識のハードプロブレム”の解明の糸口を探るという点で意義深いものであり、われわれの脳が量子演算を行い、その能力が意識を生み出しているという理論の検証に向けた大きな一歩だ。

     しかも、微小管が鍵を握るOrch OR理論が正しいならば、「量子レベルでは意識が同時にあらゆる場所に存在できる」という先駆的理論がさらに強化される可能性もある。そして、意識は理論的には脳を超えた量子粒子(quantum particle)とつながり、宇宙全体の意識と融合できる可能性まで示唆される。われわれの意識とは、宇宙と繋がっているかもしれないのだ。

     実際、この観点は複数の専門家によって支持されている。スウェーデン・ウプサラ大学でナノテクノロジーを教えるマリア・ストローム教授によると、意識とは人間の脳から生まれるものではなく、「宇宙の基本的な場を構成するブロックの一つ」として存在するとしている。

     ストローム教授が2025年11月に学術誌「AIP Advances」で発表した研究では、個々の意識が分離独立しているように見えるのは幻想であり、あらゆる経験は究極的には統一された無形の基質から生じていることが示唆されているのだ。

     またドイツの理論物理学者、ヨアヒム・ケプラー氏が2025年12月に学術誌「Frontiers in Human Neuroscience」で発表した研究によると、意識状態は脳が量子真空――つまり宇宙全体――に浸透する「ゼロポイントフィールド(Zero Point Field、ZPF)」と共鳴する能力から生じている可能性が示唆されている。

     やはり意識は量子現象であり、我々は宇宙と繋がっているのだろうか。

    Gerd AltmannによるPixabayからの画像

    意識の理解におけるパラダイムシフトは近い!?

     ある意味で夢とロマンを感じされてくれるOrch OR理論なのだが、量子効果が極低温実験室でのみ発現しているという理由でこうした観点を無視する学者もいるのが現実だ。

     たとえば量子コンピュータの動作は量子状態を維持するために絶対零度(約-273℃)に近い温度に依存している。2022年の研究によると、人間の脳の温度は最深部では約32~40℃に達する。とすれば、脳内で量子現象が起きることなどあり得ないことになる。

     とはいえ、一部の科学者たちは長年にわたり、動植物における特定の量子レベルの現象が実際に生命の機能に関係していることを示すデータを得ている。生命における量子現象には絶対零度の環境は必要ないというのだ。

     その一例を挙げると、絶対零度よりもはるかに高い温度で生息する植物は、量子プロセスを利用して効率的に光をエネルギーに変換している可能性があるという。

     植物は光子を励起子(れいきし、exciton)と呼ばれる物質に変換し、それを葉緑体へと輸送して光合成を行っている。この過程では、励起子は植物内部の目的地までエネルギーを保てる速度で移動しなければならない。そこで植物は、エネルギーをロスすることなく効率的に励起子を目的地に到達させるため、量子的な重ね合わせの性質を利用してあらゆる経路に同時にアプローチしているというのだ。

     これと同様に、動物の脳内で同時に発火する数十億個のニューロンは、量子もつれの「距離を超えた作用」という特性に基づき機能しているのかもしれない。量子もつれの関係にある2つの粒子はどれだけ離れていても相互に作用するが、2024年8月に学術誌「Physics Review E」に掲載された上海大学の研究によると、脳細胞のミエリン(myelin)と呼ばれる脂肪組織は、量子もつれに理想的な環境を提供しているという。脳は思考を促進するため量子演算を実行しており、そのプロセスが意識を生み出している可能性もある。

    alexmogoproによるPixabayからの画像

     過去、微小管に光粒子を照射して信号が劣化しない、つまりシグナル伝達において量子状態が存在することを実証した実験が2つある。

     1つは物理学者で腫瘍学の教授であるジャック・タシンスキー博士による研究だ。紫外線光子を用いて微小管で最大5ナノ秒の量子反応を発生させたところ、重ね合わせ状態は研究者が予想していたよりも数千倍長く持続したという。

     もう1つは米セントラルフロリダ大学の研究チームによるもので、微小管の一端に可視光を照射し、その光が放出されるまでの時間を測定。結果、光が(劣化せずに)再放出される様子が数百ミリ秒から数秒にわたって観察されたが、これは脳がすべての機能を実行するには十分すぎる時間だという。

     これらの研究は、ニューロンが量子演算さえ可能な速度で動作することを具体的に証明するものだ。意識が量子現象であるとする研究は着実に進展しており、まさに外堀を埋めるようにしてエビデンスが積み上がっている状況だ。人間と宇宙、そして意識を繋ぐ、科学のパラダイムシフトを迎える日は案外近いのかもしれない。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「Merkarenicus」より

    【参考】
    https://www.popularmechanics.com/science/a70395978/consciousness-connects-with-universe/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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