超古代文明アトランティスは大西洋か地中海か? ジブラルタル海峡を挟んだ2つの有力候補
超文明アトランティスは大西洋の向こうに栄えたのか? それとも地中海に沈んだのか?
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アトランティス、ムー、レムリア……超古代に栄えた幻の文明という壮大な世界観を、昭和のこどもたちはどう受け止めていたのか?
「『古代文明』系のネタはまだ一度も取りあげてませんよね? このあたりをやってみませんか?」というご提案をムー編集部からいただき、ドキリとしてしまった。
そうなのである。ムー大陸やアトランティスなどのお話は70年代オカルトブームの根幹といってもいい王道トピックであり、本連載がテーマとしている昭和の「こどもオカルト」においてもド真ん中に位置していた大ネタだ。にもかかわらず、今まで一度も触れてこなかったのは、ひとえに僕が子どもの頃からこの種のネタを苦手としていたからなのである。「難しそう」「めんどくさそう」という印象しか持てなかったのだ。
たいていのオカルト児童書はむさぼるように読んできたが、歴史や地理の話、古代文字や古文書の説明などがズラズラと続く「超古代文明の謎!」みたいな項目は、たいてい読み飛ばしてきた。この傾向は大人になってもほとんど変わらず、いまだに僕は「アトランティス」「ムー」「レムリア」、さらには「マヤ」「インカ」「アガルタ」などなどのお話、ましてや日本の超古代史やら偽史・偽書といったお話については「すみません、よく知りません……」という感じなのである。
そんなヤツが「ムー」に原稿を書いてもいいのか?……という気もするが、ともかく今回から二回ほどにわたって、この「超古代文明」というテーマが70年代の「こどもオカルト」においてどのように扱われ、それらに当時の子どもたちはどのように反応してきたのか?……といったことを回顧してみたい(その種のネタに「反応」しなかったお前に回顧する資格があるのか?と言われそうだけど)。
各種「消えた大陸」ネタはもちろん、ピラミッド、ストーンヘンジなどの遺跡や不可解な出土物、さらには日本国内における謎の遺跡など、ともかく「古代文明」絡みのトピックを大雑把にまとめて見ていこうと思う。
本題に入る前に、ちょっとだけ言い訳をさせていただきたい。
70年代の子ども文化におけるオカルトブームの勃発時あたりの書籍や雑誌、テレビ番組などに多大な影響を受けた僕ら世代のオカルト好きには、実は僕のような「古代文明音痴」(?)が意外と多いのではないか?……と僕は勝手に思っているのである(そうでもないのかなぁ?)。
この連載でも何度も書いているが、僕が昭和オカルトの世界に引きずり込まれる直接のきっかけとなったのは、小松崎茂や石原豪人などの挿絵画家たちのイラストレーションだった。彼らの作品を掲載していたオカルト児童書や、『少年マガジン』の名物企画「大図解」などに魅了され、いわゆる「怪奇系児童書」の沼に沈むことになったのだ。
僕は以前から当時のそうした記事をまとめた本をつくったりしているが、昨年11月、『別冊太陽』(平凡社)の特集「子どもの昭和史 科学と怪奇の空想大全」の監修と図版選定・解説をやり、僕が直接影響を受けた60年代後半~70年代初頭の「こどもオカルト」の傾向をあらためて俯瞰する機会を得た。
そこであらためて気づいたのだが、あの当時の「こどもオカルト」を構成していたコンテンツをざっくり大別すると、基本的には「心霊」「妖怪」「UMA」「終末」「秘境」のネタが大半で、これに「UFO」と「超能力」が多少加わる程度なのである。
要するに、読者の子どもたちをビジュアル的に圧倒できるような、オドロオドロしい迫力に満ちた挿絵をつけやすい内容にほぼ限られている。こうしたものを僕は「見世物小屋的オカルト」と呼んでいるが、これらを幼児期に刷り込まれた僕ら世代は、見世物小屋の毒々しい絵看板のような「子どもだまし」のオカルトの世界(これを「オカルト」と呼べるのかは微妙だが)から、なかなか抜け出せないのではないだろうか? 正直に白状してしまえば、少なくとも僕は、あのコケ脅しの幼稚な世界に「なかったもの」には、大人になってからもいまひとつ興味が持てないままなのである。
70年代後半以降は「こどもオカルト」の世界も成熟(?)し、本格的(?)な記事も増え、絵の迫力だけで子どもたちを魅了する一発芸的「見世物小屋的オカルト」は徐々に駆逐されていった。80年代が近づくにつれ、僕が大好きだった感じの「オカルト」がどんどん変質し、なにやら「ややこしい」ものになってゆく……。そんな喪失感があり、当時は取り残された気分になったのを覚えている。
今から思えば、それが来るべき80年代の「精神世界」ブームの兆しだったのかも知れないが、要する僕は70年代の「こどもオカルト」の成熟に合わせた成熟ができなかった「落ちこぼれ」だったわけだ。周囲のオカルト好きの子が上手に「スピリチュアル気分」へと移行し、それこそ「超古代史」などに着想を得たマンガやアニメやSF小説に耽溺するのを横目で見ながら、相も変わらず時代遅れの見世物小屋の絵看板をぼーっと眺めている6歳児の感性のまま、「落ちこぼれ」として80年代を過ごしてしまったのだと思う。

さて、らちのあかない言い訳はこのへんにして、まずは「失われた大陸」というテーマについて、当時のオカルト児童書の典型的な記事を見ていこう。主に僕が愛読していた70年代の児童書を漁って関連記事を拾ってみたところ、先ほど「古代文明ネタには興味がなかった」などと書いたばかりだが、この種の記事を思っていたよりも大量に読んでいたことに驚かされた(笑)。再読してみると、どの記事もけっこう記憶に残っているのである。
「失われた大陸」といえば、筆頭にあげなければならないのが「アトランティス」である。なにしろ、かのプラトン大先生が提唱したというのだから、今の僕らが楽しんでいるあらゆるオカルト的物語の「源流」といってもいいほど由緒正しいネタである。大衆レベルで知れ渡るきっかけとなったのは、ジュール・ヴェルヌの海洋冒険小説『海底二万里』(1870年)だったという。すっかり忘れていたが、そういや小学生時代に福音館書店の恐ろしく大きくて重い本で読んで、「アトランティス」の遺跡を発見する場面にはけっこう興奮したような気もする。
さらに1882年、アメリカの政治家だったイグネイシャス・ドネリーが『アトランティス 大洪水以前の世界』を発表、「西欧社会の文明は海に沈んだ太古の大陸によってもたらされた!」との主張を展開し、世界中に一大「アトランティス」ブームが巻き起こった。
以降、この「アトランティス」をめぐる物語が無数のバリエーションを生み、さまざまな形で「応用」されるようになる。各種「失われた文明」物語の強力なフォーマットとして、模倣・増殖・反復され続けてきたわけだ。神智学、人智学などの近代オカルト思想にも多大な影響を与えたのもご存知の通り。
こうした「失われた文明」ネタが詰まったオカルト児童書として我々世代におなじみなのは、定番シリーズ『小学館入門百科』の『世界ミステリーゾーン』だろう。もちろん「アトランティス」の概要もきちんと掲載されているが、なぜか記事内にはドネリーの名はまったく登場せず、「アトランティス実在説」を最初に主張したのはトロイの遺跡の発見で知られるハインリッヒ・シュリーマンだとしている。
そう、あの『古代への情熱』の人である。同世代なら岩波文庫版を読んだ、というか先生や親に読まされた記憶のある人も多いと思う。シュリーマンが「アトランティス」にどの程度執着していたのかを僕は知らないが、ドネリーが牽引した「アトランティス」ブームの根底には、シュリーマンのトロイの遺跡の発掘が世界に与えた衝撃があったのは事実のようだ。神話や伝説と思われていたものの痕跡を本当に発見してしまったという彼の功績は世界中にセンセーションを巻き起こし、一大「発掘ブーム」が勃発したといわれている。

「超古代文明」ネタの「原型」ともいえる「アトランティス」のお話は、70年代の多くのオカルト児童書に掲載されているが、どちらかというと前置きというか、本題に入る前のイントロとして使われていたようだ。この種のネタの本命は、やはりなんといっても「ムー大陸」である。
年端のいかない幼児でも、またオカルトになんの関心もない子でも、なぜか「ムー大陸」という言葉には魅了されてしまうような空気が70年代にあったのだと思う。「ムー」関連の記事を当時の児童書から引用しようとすると、多過ぎてキリがないくらいなのである。
古いところでは、1968年刊行の『少年少女・世界のノンフィクション』の一冊『世界を驚かした10の不思議』。70年代に入っても学校図書館の蔵書として定番だった本で、およそオカルト児童書とは縁のない金の星社の刊行である。この連載で以前にも書いたが、いわゆるオカルト児童書が続々と刊行されるようになる以前(だいたい1974年までの時期)、多くの「学習読みもの」が遠慮がちにオカルティックなトピックを徐々に増やしはじめるという傾向があった。モロなオカルトは支障があるので、あくまでも学習にかこつけた形でおとなしめの記事を掲載するわけである。世界史のお勉強の流れに乗せることができる「失われた大陸」というネタは、こうした編集方針にちょうどよかったのだろう。
僕が最初に「ムー大陸」に関する本格的な記事を読んだのも、たぶんこの『世界を驚かした10の不思議』の「消えた大陸」だったと思う。先述の通り、おそらく適当に読み飛ばしたので印象は薄いのだが、今読み返してみても、地味なフィールドワークの工程と「ナーカル絵文字」の解説などが延々と続き、やはりまたもやほぼ読み飛ばしてしまった。しかし、かなり詳細に「ムー大陸」ブームの立役者であるジェームズ・チャーチワードの研究を解説している。

『世界を驚かせた10の不思議』の記事はあくまで「学習読みもの」の体裁を維持した丁寧な記述で、結果的に「ムー実在説」をやんわりと否定する形で終わっている。しかし、70年代っ子をより夢中にさせたのは、「アトランティス」の項でも引用した『世界ミステリーゾーン』に掲載されていたタイプの乱暴(?)な記事だろう。『世界を驚かせた10の不思議』から7年が経過しており、すでにオカルト本のノリが全開になっている。
そもそも「レムリア大陸」はイギリスの動物学者・フィリップ・スクレーターがインド洋にあったと主張していたのだが、「ムー大陸」の研究者であるチャーチワードが「ムー大陸の起源はレムリア大陸」と提唱したことから、「レムリア」と「ムー」は太平洋に存在した同一の大陸とされることが多くなった。さらに神智学のブラバツキーも「レムリア=ムー」との見解を示し、人智学のシュタイナーなども同じ主張をしたので、以降、オカルトやニューエイジの世界では、たいていの場合、両大陸が「同じもの」として語られる。
子ども向けの本も多くがこれを踏襲していたと思うが、同書の記事では「レムリア」と「ムー」は別種のものとされている。特に注目すべきは、「アガルタ」(東洋のどこかにあるとされた「大地底都市」)の研究で知られるロバート・ディクホフ(ラマ僧で古代史研究家)の説だ。
以下に要約して引用してみよう。
「レムリア」は2~4億年前に南半球いっぱいに広がっていた「ゴンドワナ大陸」の一部だった(これを提唱したのはドイツの生物学者、エルンスト・ヘッケル)。
「ゴンドワナ」の人々は高度な文明を誇っていたが、「宇宙の星団」(?)から飛来した「魔族」(?)との戦いに敗れ、生き残った一部の人々は「地下帝国」を建造して移住した。それから数万年後、再び地上に現れ、「レムリア」に新たな文明を築いた。しかし7000万年前、とてつもない大地震が起こって「レムリア」は海底に沈み、大西洋には新たな二つの大陸が隆起した。これが「アトランティス」と「ムー」である。「レムリア」の生存者は「ムー」に移住したが、1万2000年前、月世界を征服して植民地としていた「アトランティス人」と大戦争となり、月が核戦争の舞台となった。これによって「ムー人」も「アトランティス人」も絶滅し、月は現在のような荒れ果てた死の世界となった……
本書では上記のように紹介されているディクホフの説は、別のオカルト児童書では「ムー」の人々は「火星人」に「改造」された「超人類」であり、後に地球支配を目論む邪悪な「金星人」との戦争に敗れて大陸もろとも消え去った……と語られたりもしている。
どちらにしても引用しているだけで頭痛がしてくるような内容なのだが、これらのトンデモSFファンタジー的見解こそ、70年代っ子が「ムー」や「アトランティス」に抱いていた典型的イメージだったと思う。同世代なら、幼児期に目にした多くのマンガやアニメが、こうしたネタを応用していたことを思い出すのではないだろうか? 思えば僕ら世代は、各種オカルト記事よりも先に、もの心がついたころから大量のアニメなどによって「ムー」や「アトランティス」のイメージを刷り込まれてきたのだ。
次回は、そのあたりのことを回顧していきたいと思う。

初見健一
昭和レトロ系ライター。東京都渋谷区生まれ。主著は『まだある。』『ぼくらの昭和オカルト大百科』『昭和こども図書館』『昭和こどもゴールデン映画劇場』(大空出版)、『昭和ちびっこ怪奇画報』『未来画報』(青幻舎)など。
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