消えゆく風土の見聞録「日本遠国紀行」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    日本遠国紀行

    道民の人 著

    忘れられ、失われつつある、7つの「遠国」の記録

     著者の「道民の人」氏は、その名のとおり北海道出身の紀行写真家・ライター。10年にわたり「今あるものをできる限り記録に残す」活動を続けてきた。その原点には「故郷の町が近い将来消滅するであろう現実と、地方の「緩やかな死」に直面して抱いた喪失感と現実感」があった。

     本書でいう「遠国」とは、そうした日本の中にありながら、忘れられ、失われつつある「遠い国」を指す。「消える北海道の産業と街」「秋田の人形道祖神」「東北(山形・青森)の死生観」「死者の口寄せと実像のイタコ(青森)」「島原・天草の隠れキリシタン」「中世を垣間見る奥三河の祭礼(愛知)」「紀伊山地と十津川村」などの7章に分け、「僻地出身の人間が見た、日本各地の消えゆく風土と風習の見聞録」を生々しく綴る傑作。

     いずれの章も興味深いのだが、やはり本誌読者がとりわけ心惹かれるのは、イタコや道祖神、隠れキリシタンなどの話題であろうか。特にイタコに関しては、著者は「いまや日本で最後の一人になった伝統的なイタコ、中村タケ女(93歳)」に実際に面会し、自身の祖父の霊を降ろしてもらっている。その臨場感には思わず息を呑むし、子孫を思いやる祖父の心情には実にほろりとさせられ、感動を覚えずにはいられない。
     全ページ2段組みで、体裁以上の文字量があり、それに著者撮影による迫力満点の珍しい写真も満載されている。手許に置いておきたくなる一冊だ。

    笠間書院/3300円(税込)

    (月刊ムー 2026年02月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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