膨大な図版でオカルト世界を見る「Occult 神秘思想表象大全」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。

    Occult 神秘思想表象大全

    ピーター・フォーショー 著

    知識・教養・学問としてのオカルトを総覧

    「オカルト」という言葉は、心霊写真から都市伝説まで、「超自然的で常識とかけ離れた「怪しげ」なものと一般的に理解されている」。だが近年では、この領域に「文学研究や美術史……科学史・思想史・宗教史・文化研究・人類学・政治史等々、幅広い学問分野の研究者たちが一気に流入してきている」。本書はこのような時流に鑑み、現代人に必須の知識・教養・学問としてのオカルトを総覧せんとする試みである。
     全3部構成であり、第1部「基礎」では占星術、錬金術、カバラが、第2部「オカルト哲学」では自然魔術、占星魔術、儀式魔術が、そして第3部「オカルト復興」では、オカルティズム、タロット、ニューエイジとネオカルチャーが語られる。
    「表象大全」の標題にふさわしく、全ページにわたってともかく図版が豊富。それも、だれもが知っているような基本的な図版から、かなりのマニアでも見たことのないような珍しいものまで、豊富に収録されているから、眺めているだけでも実に有意義な時間を過ごすことができよう。
     著者のピーター・フォーショーは、アムステルダム大学ヘルメス学史研究所准教授で、英国エクセター大学名誉フェロー。魔術、錬金術、占星術、カバラなどの西洋エソテリシズムの専門家である。そんな著者が、おのれの知識と愛情のすべてを込めて執筆した本書は、すべての「オカルト」愛好家が書架に備えるべき基本文献といえよう。

    東京書籍4620円 (税込)

    (月刊ムー 2025年12月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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