トカラ列島・悪石島の仮面神ボゼと遭遇! パプアニューギニアの精霊に酷似する異形の仮面神が悪霊を祓う奇祭
屋久島と奄美大島の間に連なり、秘境の島々とも称されるトカラ列島。 その島のひとつ、悪石島に「ボゼ祭り」という奇祭が伝わる。 盆の終わりに現れて、悪霊や邪気を払うという仮面神「ボゼ」。巨大な仮面と植物を
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極彩色のペイントと奇抜な装束に身を包んだ人々が、自然と一体となって繰り広げるエネルギッシュな祭り「シンシン」。 ときに激しく、ときに繊細に、飽くことのない熱情に満ちあふれた、魅惑の奇祭に迫る――。(1990年取材)
パプアニューギニアと聞いて、真っ先に思い浮かぶのは深いジャングルのイメージだろうか。第2次世界大戦で日本軍と連合軍との激戦の舞台になったところだという印象も強い。
パプアニューギニアは、日本から南へおよそ5000キロ、赤道とオーストラリアに挟まれた位置にある。世界で2番目に大きな島、ニューギニア島の東半分(西側はインドネシア領)と、大小600あまりの島々からなる国だ。

大航海時代にはじめて島を訪れたポルトガル人が、この地を「パプア(マレー語で“縮れた髪”を意味する)」の国と呼び、その後スペイン人の探検家が、住民の風貌がアフリカのギニア人に似ていることから「ニューギニア」と名づけたことが、国名の由来といわれている。
17世紀から続いたヨーロッパの列強による植民地支配から1975年に独立した若い国家でもある。
日本からは直行便でおそよ6時間半。ジャクソン空港に降り立てば、立派な高層ビルが建ち並ぶ首都ポートモレスビーの近代的な街並みが目に入る。一方で、まだまだ昔ながらのスタイルを守って生活している地域もある。高地では、シャツ姿で頭には羽根飾りといういでたちの人々が、空港のフェンスを囲んで飛行機を眺めている、というなんとも不思議な光景を見ることができるのだ。(*取材時)


そんなパプアニューギニアで、独特な祭り「シンシン」を取材することができた。
1990年9月16日。明け方、にわかに起こった歓声と太鼓の音で目が覚めた。この日から3日間、山岳地帯の町ゴロカでは、パプアニューギニア全土からさまざまな部族が集まって、盛大に「シンシン」が披露されるのだ。
朝8時ごろ、祭りのためにメーキャップしている部族の人々を横目に見ながら、祭りの会場に向かった。会場付近はものすごい数の人々と熱気でごった返している。1万人以上はいそうだ。
人々は、頭には派手な羽根飾りをつけ、顔や体には赤や黄、白、黒と鮮やかにメーキャップを施して、木の葉や動物の毛皮、鳥のくちばしなど、自然界で手に入るさまざまなものを身にまとっている。ほうぼうで太鼓や笛を鳴らす音、雄叫びをあげる声が響き、リズムに乗って躍動的な踊りが繰り広げられていく。

それまで見たことのない光景に圧倒され、出てくるのは「すごい……」という言葉だけだった――これが筆者とシンシンとのはじめての出会いである。
シンシンとは、鬨(とき)の声を上げて踊る儀式のことで、英語の「sing, sing」からきている言葉だ。
もともとは戦いの前に士気を向上させるための儀式だったようだが、最近では結婚式や収穫の祝い、集会、遠方から客人が訪れたときなどに行われるようになり、祭りの性格が強くなっている。ちなみに、かつてイギリスのチャールズ皇太子が訪問した際にも、盛大にシンシンが行われたという。

パプアニューギニアには500とも700ともいわれる数の、言葉も習慣も違う部族がいる。シンシンは部族の数だけあるというから、すべてのシンシンを見ることはまず無理といえるだろう。
シンシンの見どころは、なんといってもそのファッションだ。部族ごとに独特なスタイルを持っていて、一目でグループの違いが見て取れる。
飾りに使われるものも、それぞれの部族が住む地域を表していて興味深い。極楽鳥の羽やクスクスなどの小動物の毛皮をふんだんに使っているのは高地地方の部族で、植物の繊維を編んで作った腰みのに貝殻、船のモチーフの被り物を身につけているのは沿岸地方の部族、という具合だ。


踊り方やかけ声、使う楽器などもさまざまである。隊列を組んで練り歩くタイプや輪になって踊るタイプ、中には簡単なセットをこしらえて、舞台風に歌と踊りを披露するスタイルもあるから面白い。
最近では、シンシンを見るために世界中から観光客が訪れるようになった。そのせいか、シンシンも“見せる”ことを重視した、ショー的な要素が強まってきたようだ。
しかし、その動きが従来のシンシンが持つ伝統まで消し去ってしまうものだとは思えない。パプアニューギニアの人々にとって、シンシンはそんな薄っぺらなものではないのだ。
パプアニューギニアの文化は「祝宴の文化」だといわれる。たった数日、あるいはたった1日しか行なわれない祝いのために、何か月もかけて準備と踊りの練習をする。また、シンシンは結婚式などの祝い事のほか、死者が出たときに聖霊と交信するためなど、あらゆる儀礼的な席で執り行われる。シンシンはそれぞれの部族社会に深く根ざし、もはや彼らの生活の一部なのである。
人々の生活に密着したシンシンは、毎日必ずどこかの村で行われているというが、特に規模の大きいものをいくつか紹介したい。
まず、高地の「ハイランドショー」としてゴロカと並ぶのが、マウント・ハーゲンのシンシンだ。毎年8月下旬に開催され、大変な賑わいを見せる。


全土からたくさんの部族が集まるが、人気のある部族のひとつにアサロ渓谷の「マッドマン」がいる。
全身を灰白色の泥で塗りたくり、派手な色づかいの部族が多い中では、そのシンプルさがかえって目立つ。一番の特徴は泥で作った巨大なマスクだ。
「自分たちは、よその部族よりも背が低く、戦いでいつも負けていた。だから体を大きく見せようと泥のマスクをかぶってみたら、気持ち悪がって、敵が逃げてしまった」というユニークな誕生のエピソードを聞かせてもらったことがある。


もちろん高地地方だけでなく、海の地域らしさあふれるシンシンもある。パプアニューギニア随一のマリンリゾート地であるマダンでは、不定期だが「マスクフェスティバル」が行われる。多くの部族が集まる点はハイランドショーと同じだが、貝殻で作ったマスクをつけた部族のシンシンが見られるなど、沿岸地方ならではの風情がある祭りだ。




首都のポートモレスビーで、独立記念日に合わせて開催されるのは「ヒリ・モアレフェスティバル」だ。かつてモツ族の男たちが、交易のために海へ乗りだした様子を歌と踊りで再現するイベントで、ほかのシンシンとは一風変わっている。
その昔、男たちはラガトイ船という大きなカヌーで交易に出たが、常に沈没の危険と隣り合わせの、命がけの航海だったそうだ。祭りでは、実際に大きなラガトイ船を海に浮かべ、浜では女たちが男た達の航海の無事を感謝し、喜びの踊りを披露する。
船や衣装など、当時の様子を忠実に再現しているので、遙か昔にタイムスリップしてしまったような錯覚を覚えるだろう。




はじめてシンシンを見てから十数年がたつが、どれだけ見ても見飽きないのがシンシンの不思議な魅力だ。もしかしたら、自然に寄り添って生きている彼らの姿に、日本人が失ってしまった“自然崇拝”の精神を感じるからかもしれない。
機会があれば、ぜひ一度はシンシンを体感してみてもらいたい。そして筆者はといえば、シンシンの魔力に誘われて、今年もかの地を訪れるだろう。

(月刊ムー 2004年2月号記事を再編集)
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