史上初の査読済みUFO論文の内容とは? 1966年「ヘインズビル事件」の知られざる真実が今明かされる

文=仲田しんじ

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    世界のUFOコミュニティにとって“UFO公聴会”に並ぶ歴史的快挙といえそうだ。世界トップクラスの学術誌に、初めて査読済みのUFO/UAPに関する論文が掲載されたのだ――!

    1966年の「ヘインズビル事件」

     航空宇宙工学分野の権威ある学術誌で、厳格な査読プロセスで知られる「Progress in Aerospace Sciences」(2025年6月号)に、史上初となるUFOに関する研究論文が掲載された。この論文は、1966年の忘れ去られたUFO事件を再検証したもので、ムー読者にはお馴染みのジャック・ヴァレー博士のほか、リュック・ディニ氏、ジェフリー・メッチャースキー氏が共著者として名を連ねている。

     今回の新たな論文の発表により、この事件は新たな重要性を帯びるとともに、長年の解釈に疑問が投げかけられ、影響力のある学術誌上で未確認飛行物体に関する真剣な議論を行う道が切り拓かれたといえる。

    画像は「ScienceDirect」より

     研究論文によれば、1966年のUFO事件「ヘインズビル事件」の詳細は次の通りだ。

     1966年12月30日の夜、当時31歳の原子物理学教授ルイ・A・ギャロウェイ氏は、28歳の妻と5歳と7歳の子供2人と共に、米ルイジアナ州ヘインズビル近郊の国道79号線を車で北上していた。

     周囲は森林地帯であり、空は厚い曇に覆われ、霧雨が降っていたが雷は発生していなかった。

     車を走らせていると、前方左の上空に赤みがかったオレンジ色の光を放つ半球型の浮遊物体が見えた。光は規則的に脈動し、約2秒周期で鈍い赤色から明るいオレンジ色へと変化していたという。

     少しすると突然光は白く輝き始めたが、車が光球を追い越してから光は暗くなり、再び赤とオレンジ色の点滅状態に戻った。

     ギャロウェイ氏はいったん車を停め、後ろを振り返って光る浮遊物体を確認し、再び運転を続けたのだった。

     その後、同氏はルイジアナ州のバークスデール空軍基地に本件を報告し、概要がコロラド大学のUFO調査プロジェクトと空軍の「プロジェクト・ブルーブック」の両方に伝えられた。10週間後、現場の調査が行われたが、光の原因は不明であった。

     注目すべきことにこの事件は、1969年にエドワード・コンドン博士が米国科学アカデミーに提出した最終報告書である「コンドン報告書」で“未確認”として分類され、NICAP(全米航空現象調査委員会)に記録されることとなった。

    異常なエネルギー源が関与か

     その後、ギャロウェイ氏は同僚のジョン・ウィリアムズ教授と共に現場を再訪し、自ら徹底捜索に乗り出すと正確な発生現場を特定。さらに現場の木々を綿密に調査し、付近にある廃線になった線路の位置や、光が最初と最後に観測された地点を割り出し、より詳細な地図まで作成した。

     その結果、事件の正確な発生場所は、直径約9メートルの空き地で、中心部に向かって樹皮に黒ずんだ焼け跡が残っていることが判明した。採取されたサンプルを(放射線源から離れた)同地域で採取された木材と比較した結果、放射線被曝の物的証拠も発見され、物体が放った光に強く晒された影響であることも示された。

     放射線の影響を受けた樹木の種類は特定されていないが、この地域はルイジアナ州の典型的な植生に覆われている。コンドン博士による初期のエネルギー計算では、この物体の推定出力は500~1400メガワットときわめて強大で、これは現代の小型原子力発電所の出力に匹敵するという。

     UFO/UAPに関する報告において、高エネルギーの発生を伴うケースは珍しくない。しかし、これらの現象は目撃者の中枢神経系、皮膚、眼を損傷させたり、入院を必要とする長期的症状や、稀に致命的症状を引き起こすなど、生理学的影響を伴うことがある。UFOが放つ光は人体にきわめて有害であることが多いのだ。

    画像は「Ovniologia」の記事より

    焦げた樹皮からセシウム137を検出

     今回の研究論文でジャック・ヴァレー博士らは、この物体がどのようにして付近の木の樹皮に火傷を負わせ、強烈な光を発したのか詳しく分析している。

     最新の推定では、この現象によって放射されたエネルギーは、コンドン博士の推定値(500~1400メガワット)よりは低いものの、500~900メガワットとやはり小型原子力発電所に匹敵する可能性があると示唆されている。

    ジャック・ヴァレー博士 画像はYouTubeチャンネル「The Good Trouble Show with Matt Ford」より

     物体が放った高エネルギーが環境とどのように相互作用したかを理解するため、研究者たちが樹皮における熱伝播をシミュレートしたところ、樹木の表面温度は数秒のうちに20度から760度以上に上昇し、回収されたサンプルと一致する深さまで焦げることも示された。

     また、発生現場から採取された樹皮のサンプルをガンマ線スペクトロメトリーで分析したところ、天然放射性核種とセシウム137の存在が明らかになった。自然界に存在しないセシウム137の検出は看過できない決定的物証であり、研究ではさらなる調査が必要であると結論づけられた。

     今回の研究とそれが査読付きの学術誌に掲載されたという事実は、UFO研究史における画期的出来事であり、過去の物理的証拠と現代の分析を組み合わせることによって、これまで逸話的報告として扱われてきた事件にも再調査の道が開かれるという前例を示したといえる。

     調査ジャーナリストのマット・フォード氏が司会を務めるトーク番組「The Good Trouble Show」に出演したヴァレー博士も、同様に今回の歴史的“快挙”について熱弁している。この研究を皮切りに、UFO/UAPの科学的分析が継続して行われるとともに、大きな成果をもたらしてくれることに期待したい。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「The Good Trouble Show with Matt Ford」より

    【参考】
    https://ovniologia.com.br/2025/08/for-the-first-time-in-history-a-peer-reviewed-scientific-article-on-a-ufo-case-is-accepted-in-progress-in-aerospace-sciences.html

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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