深紅のドレスで飛び跳ね、見る者を恐怖させる「アクロバティックさらさら」/ダンダダン考察ファイル

関連キーワード:

    人気アニメ「ダンダダン」の第1クールで、あまりにも切ない親子の絆を描いた妖怪「アクロバティックサラサラ」。視聴者の多くを涙させたこの物語の源流である都市伝説とはいかようなものか…その謎に迫る──。

    新旧織り交ぜた都市伝説が入り乱れる人気アニメ「ダンダダン」

     ターボババアやセルポ星人、ネッシーに学校の怪談と都市伝説がこれでもかと押し寄せてくる人気アニメ「ダンダダン」。特筆すべきはその幅の広さで、古くは言い伝え級の昔話から現代はインターネット発祥の妖怪まで、新旧問わず世の中の不思議をこれでもかと描いている。
     2025年7月からはアニメの第2期が放送開始され、その熱量はさらに増す一方だ。そこで今回は、「ダンダダン」に登場するキャラクターの中でも屈指の人気を誇る「アクロバティックさらさら」について掘り下げていこう。

    母娘の慕情が生み出す非業の妖怪アクさら

    「ダンダダン」に登場するアクロバティックさらさら(通称:アクさら)は、赤いロングドレスを身にまとい、長い黒髪をなびかせながらアクロバティックな動きをする長身の妖怪だ。頭にツバの広い帽子をかぶっているのも特徴的。
     その正体はオカルンやモモの同級生である白鳥愛羅を娘と勘違いし、求めてさまよう母親の霊が変異したもの。力づくで愛羅を奪おうとするがオカルンとモモによって阻止され、壮絶な戦いの末に自らの過ちを認めて浄化する。
     生前の母親が我が娘を失い、その悲しみのあまり闇に落ちていく様を描いた第7話は視聴者の涙をさそい、そのあまりにも美しい回想シーンはシリーズ屈指のエピソードと評判が高い。
     浄化したあとは愛羅のために力を貸し、アクさらのような姿に変身できるようになる。変身した愛羅はまるでアクさらのように深紅のロングヘアをなびかせ、脚を使った攻撃技を繰り出す。

    元ネタはネット掲示板発祥の近代妖怪

     インターネットの匿名掲示板サイト「2ちゃんねる」にて、2008年9月に書き込まれた「ヤヴァイ奴に遭遇したかもしれん」というスレッドで初めてその名が示される。
     赤い服と長くサラサラした髪が特徴的な長身の女性で、眼球はなく空洞だったという。屋根やビルの上での目撃例が多いとされるこの妖怪は、アクロバティックな動き+サラサラな髪の特徴からアクロバティックサラサラと呼ばれ、その後定着する。(元ネタのほうは「サラサラ」のカタカナ表記)
     ユニークな名前が先行しがちだが、「出会ったらヤバい」と言われ、その姿を見たものには不幸が訪れる。
     主に北海道、東北、茨城、大阪、広島などで目撃されているが、不思議と四国や九州、離島などでの目撃証言はない。また、それまではネット上で特定のオカルトファンの間での噂レベルだったが、2022年12月にTVの特番で取り上げられるとその情報は瞬く間に伝播していき、知名度を高めていくこととなる。
     派手な見た目から恐怖のアイコンとして扱いやすいからか、アクサラを題材とした漫画やイラスト、映画、ゲームなどは多数存在する。

     同系統の近代妖怪としてやはり長身の女性がモチーフとなった「八尺様」がいるが、どちらもその元となるのは古くから息づく妖怪「山女」だとする説がある。山女は山に住む女の姿をした妖怪で、遠野物語にも記述がある。非常に背が高く、その黒髪は身長よりもさらに長かったという。また夜になると炭小屋の外から長身の女性が覗き込んでいたり、夜になると山中から叫び声を発するという。

     本稿で紹介しているアクサラの画像はAI生成でその姿を浮き彫りにしたもの。踊るというよりは疾走しており、ターボババアのイメージが混ざっているのかもしれない。アクサラにせよ八尺様にせよ、昔の妖怪は現代のネット情報を媒介として、進化しながら生き続けている。

    webムー編集部

    関連記事

    おすすめ記事