国家の一大事も予言? ネパールの「少女生き神」クマリに密着取材した貴重映像が配信中! 

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    ヒマラヤの国に残された謎多き「少女生き神」信仰。そのリアルな日常を撮影した貴重なドキュメント映像がYouTubeで配信中!

    ヒマラヤの国ネパールに残る「生き神」信仰

    「生き神」と聞いたらどんな神さまを思い浮かべるでしょう?
     白衣をまとったおじいさんか、あるいは後光がさすような聖人か……。

     日本では、かつて天皇が「現人神(あらひとがみ)」とされていたことはよく知られていますが、他にも長野県に鎮座する諏訪大社の最高神職・大祝(おおほうり)が神の依代である生き神とされていたように、生身の人間を神として崇める信仰文化がありました。

     ただ、現在でも大活躍するスポーツ選手を「神さま」扱いするような例はあるものの、信仰対象としての生き神文化は今はほとんど残ってないといっていいでしょう。

     しかし、日本を離れること5000キロ、インドと中国のあいだに位置するヒマラヤの国ネパールでは、現在でも生身の人間を神として信仰する文化が広く残されています。
     しかも神になるのは、幼い少女。
     日本でいえば小学生になるかならないかくらいの少女が生き神「クマリ」に選ばれ、一身に祈りを捧げられる存在となるのです。

     さまざまな条件をクリアしてクマリに認定された少女は、神と崇められながら一般の子どもとはまったく異なる特殊な生活を送ることになります。本人や家族にとってたいへん名誉なことであると同時に、そこには現代を生きる人としてのさまざまな葛藤も。

     現代に残る生き神は、何を食べ、どんな場所でどのような暮らしを送っているのか……。そんな神秘のヴェールに覆われた少女生き神の日常を記録したとても貴重な映像が、なんと現在YouTubeで配信されています。

    21世紀の「少女生き神」に完全密着したドキュメント!

     それがこちら、全4回のシリーズ映像 「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」。

     配信しているのは、ドキュメンタリーを中心に多くのコンテンツ制作を手掛ける映像制作会社・ヴィジュアルフォークロアの公式チャンネルです。
     映像はネパールの古都パタンでクマリとして在位していた少女に密着したものなのですが、撮影時期は2001年で、すでに21世紀。今世紀を生きる生き神を記録した映像がYouTubeで観られてしまうなんて、これもまたものすごく21世紀的。

     以下、「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」の内容を少しご紹介します。

    シリーズ#1「朝の身じたく」編では、少女生き神のモーニングルーティン、毎朝の身じたくが記録されています。
     クマリの1日はまず水で体を清めるところからはじまります。その後決められた髪型に髪を結い上げ、クマリの服として定められている赤い服をまとい、蛇の首飾りなどの装飾を身に付けます。

    「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」より。クマリの身じたくは家族によっておこなわれる。

     額には扇形のような化粧が施されますが、これは神のサードアイ、第三の目をあらわすのだそう。そうして神の姿になったクマリの前には数々の供物がそなえられ、祈りが捧げられます。その間、神である少女は言葉を発することもなく、静かに祈りを受けるばかり。それはまさに仏像や神像に祈るシーンそのものといった光景です。

    「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」より。椅子に座るクマリに祈りが捧げられる。

     ひとたびクマリに選ばれれば、少女は生き神としての役割を終えるまで基本的にこうした日々を送り、そのほとんどを「クマリハウス」のなかで過ごすことになります。外出の機会は年数回の大きな祭りなど、ごく限られたときのみ。映像ではこの貴重なクマリ外出の場面も記録されています。

     撮影されたのは、雨乞い祭り「ラト・マチェンドラナート」でのクマリの“おでまし”。クマリは男性に抱きかかえられ、自らは歩くことなく現地に向かいます。神聖なクマリの体を地面に触れさせてはならない、という信仰のためです。
     雨を祈り、3、4階建ての家ほどもありそうな大きな山車をひきまわす人々を見守るクマリ。少女はここでも祭りを楽しむことはできず、淡々と神としての役割をこなさなくてはなりません。

    クマリによく似た日本の神事

     ところでこの雨乞い祭り、観ているうちに不思議な既視感がわいてきます。
     京都三大祭り、祇園祭の山鉾巡行によく似て見えてくるのです。

    「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」より、祇園祭山鉾を彷彿とさせるネパールの雨乞い祭り。
    「【密着ドキュメント✨】生き神クマリ」より。生き神であるクマリは地に足をつけない。

     街なかを進む大きな山車はもちろんですが、ふたつの祭りにはもうひとつの共通点が。祇園祭では、山鉾にのるお稚児さんは乗馬するか、強力とよばれる従者役の男性に担がれて移動します。それは「神の使いであるお稚児さんは地面に足をつけてはならない」とされているから。クマリとまったく同じ理由なのです。
     5000キロも離れた国の祭りに残る共通点。それは偶然なのか、あるいは人類がもつ共通のイマジネーションからでてくるものなのでしょうか。それとも、ふたつの信仰のあいだには知られざるつながりが……?

    国家の一大事を予言した少女生き神は今……

     シリーズは、#2ではクマリの食べ物が、#3では知られざる「生き神選考」の背景が紹介されます。クマリに選ばれたら食べられなくなる禁忌の食材とは? クマリを選んだ僧侶が語った認定の決定的ポイントとは、などこちらもとても興味深い内容。

     そして、最終回となる#4では、雨乞い祭りでネパール国王(当時)とクマリが揃い踏みした場面の貴重な映像が公開されています。
     カトマンズ盆地の旧王ナーガ(蛇神)が国王に権力をゆずることをあらわす儀礼が行われるなど、王の権力を示すためにも重要な意味をもつのがこの雨乞い祭り。しかしこの年、祭りのあとに不思議なことが起こります。なぜか祭りが終わってから、クマリが泣き続けたのです。
     クマリは2日目も3日目も泣き続け、「これは何か異変の前兆ではないのか」と、人々が噂をするなか迎えた4日目の夜。その夜、王宮では晩餐会が開かれていたのですが、そのさなかに勃発したのが、ネパール国内のみならず世界を驚かせたあの大事件だったのです。少女生き神の涙はその大凶事を予言するものだったのか……。

     ちなみにクマリを務めた少女・チャニラさんは現在はその任を退き、グローバル企業に就職しとても忙しい日々を送っているそうです。なんだか本当に現代のおとぎばなしのよう。

     またヴィジュアルフォークロアといえば、諏訪大社の失われた神事を再現し大きな話題を呼んだ映画「鹿の国」の制作会社でもあります。「鹿の国」をみて諏訪の生き神信仰に興味をもった方は、ぜひこちらの映像も視聴してみてはいかがでしょうか。

    webムー編集部

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