古書の山からハリポタ初版を発見した話など/南山宏のちょっと不思議な話

文=南山宏 絵=下谷二助

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    「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2022年12月号、第464回目の内容です。

    これぞ芸術

     デンマークの高名な現代芸術家イェンス・ハーニンは、同国オールボーにあるクンステン現代美術博物館に、2021年9月、53万クローネ(約1000万円)で初期の作品2点を再創造して納める売買契約を結んだ。
     だが、博物館の職員が送られてきた梱包を開けると、入っていたのは現金を巧みに造形した絵画ではなく、ただ空っぽの額縁が2面だけだった。
     そして別途送られてきたEメールには「どうせなら〝お金を盗って逃げろ〟というタイトルのほうが面白いでしょう」とあった。
     博物館側は目下、53万クローネ(約993万円)の前払い金の返却を求めている。

    ハリポタ初版本

     イギリスきっての保養地として知られるブラックプール在住のカレン・ラムジーさん(59歳)は、自分の娘がフリーマーケットに出品するつもりで不用品箱に入れた古本の山から、女流ファンタジー作家J・K・ローリングのシリーズ第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』の初版本を見つけた。
     念のため、古書マーケットの最近の相場をチェックしたところ、ハリポタ・シリーズ第1作の初版ハードカバー本の初刷り500部は、2020年12月11日付のチャールズ・ハンソン・オークションで、1部につき5万ポンド(約810万円)の値がついていた。
     ラムジーさんが同書を古本市に出さずに手元に置いたのは、非常に賢明だったといえるだろう。
     ロイター電2021年12月9日付によれば、昨年末に開かれたアメリカのヘリテージ・オークションに出品された、同じくハードカバーで初版で初刷りのハリポタ第1作は、価格がなんと47万1000ドル(約6817万円)と一挙に跳ね上っていた。

    心臓萎縮

     未来の宇宙旅行者は〝無重力下だと心臓が怠けて委縮する〟のを防ぐため、高強度インターバル・トレーニングを行う必要があると、米テキサス大の研究チームがこのほど研究結果を発表した。

    死人行進曲

     カリブ海の小国トリニダードトバゴ共和国の首都ポートオブスペインの市警察当局は、2020年11月23日に執り行われたチェ・ルイス氏とその父親の合同葬儀に、大きな不満と失望を表明した。
     父子の遺体を載せた霊柩車を先頭に、葬列が葬送行進曲を流しながら首都の中心部を粛々と行進したのだが、その際、葬儀社側の演出で、チェ・ルイス氏の遺体だけは棺の外に出されて、棺の上に置かれた安楽椅子に腰掛けた姿勢をとらされていた。
     家族のひとりは、葬儀社の演出をこう称賛した。
    「納棺師さんはすばらしい仕事をしてくれたわ。だってお父さんは暑い熱帯の陽射しの中を、最後まで姿勢を崩さず腰掛けてて、まるで生きてるみたいだったもの!」
     だが、市警察当局のスポークスマンは、強い口調で批判する。
    「死んでいようがいまいが、人をあのような危険な方法で運搬するのは、道路交通法第17条第38項に違反する重大な危険行為だ!」

    断食フード

     ロシア正教会の敬虔な信徒クセニア・オフチニコワさん(36歳)は、大々的な宣伝コマーシャルに心を惑わされ、四旬節(復活祭直前の40日間)の大切な断食の誓いを心ならずも破ってしまったとして、世界最大のファストフードチェーン店マクドナルド社を相手どって、訴訟を起こした。
     クセニアさんはおのれの信仰に基づいて、牛豚や鶏肉、肉製品、乳製品などを、期間中は一切口にしないように努めていたのだが、断食を開始してひと月が経過したころ、運悪くマクドナルド店が掲げる巨大な広告バナーが、ふと目に入ってしまった。
    「とたんに食べたいという猛烈な願望が沸き起こって、私は自分を抑えられなくなり、マクドナルドの店先に飛び込んで、ハンバーガーを買ってしまったの!」
     彼女が起こした〝道徳的〟損害賠償請求・請求額1000ルーブル(約2400円)の訴訟は、以下のように主張する。
    「キリスト教徒が肉や乳製品の摂取を控えている期間には、マクドナルド店も大々的な広告宣伝を可能なかぎり控えるべきだ!」
     ちょっぴり皮肉だが、ファストフードのファストという英単語には、〝速い〟という意味とは別に〝断食・絶食〟の意味もある。

    肥満蛇

     2匹の巨大な蛇がキッチンの屋根に大穴を開けて屋内に落ちているのを、帰宅したその家の持ち主ジョン・ケリナックさん(仮名)が発見して大騒ぎになった。
     通報を受けて駆けつけた当地のプロの爬虫類捕獲人スティーヴ・ブラウン氏の話によれば、大蛇の正体は体長がそれぞれ2・9メートルと2・5メートルもあるオーストラリア原産のカーペットパイソン(ニシキヘビ)だった。
     この種の大蛇は性質が温和で、噛みつかれても毒はないものの、もし巻きつかれでもしたら、命の保証はできないという。
     ブラウンが到着したとき、ニシキヘビの1匹は玄関口で、もう1匹は寝室でとぐろを巻いていた。
     ブラウンは苦笑いしながら、次のように説明した。
    「2匹とも、専門家の私さえ初めて見るほどの肥満体だった。おそらくそのせいで、屋根に這い上がったものの、その屋根が支えきれずに破れて落下したと思われる」

    未確認飛行人

     本年6月24日の午後2時ごろ、米ロサンジェルス国際空港の上空約1500メートルをジェットパックで飛行する身元不明の人物を、同じ高度を飛行中の着陸寸前のアメリカン航空機のパイロットが目撃して、管制塔に報告した。
     近年アメリカ国内では、無許可でジェットパック飛行する違法な危険行為者が続出して、航空管制上の大きな問題になりつつある。
     飛行中の民間航空機と衝突したら、大惨事にもなりかねないからだ。対策には一刻の猶予もない。

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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