スペイン南部アンダルシアに眠る古代都市タルテッソスはアトランティスなのか?/アトランティス遺産

文=遠野そら

    失われた超文明アトランティスの候補地を探るシリーズ、今回はアンダルシア地方の地下に迫る!

    自然保護区「ドニャーナ国立公園」の地下に

     その真偽を含め、今なお多くの人々を魅了してやまないアトランティス大陸の伝説。世界各地でアトランティスを彷彿とさせる謎めいた遺物が発見されているが、いまだその存在を示す決定的な証拠にはいたっていない。

     これまでも地中海や大西洋など様々な場所がその比定地として挙げられてきたが、今回はスペイン南部に位置する「アンダルシア説」を検証していきたいと思う。

    ドニャーナ国立公園。画像=Wikipedia より。

     まずアトランティス=アンダルシア説が広く知られるようになったのは、今から約16年前の2009年ごろのこと。アンダルシア地方に広がるヨーロッパ最大級の自然保護区「ドニャーナ国立公園」の地下に伝説の古代都市アトランティスが沈んでいる、と発表されたことがきっかけであった。

     これは地元スペインをはじめ、世界各地の考古学や地質学の専門家らで形成された国際研究チームが明らかにしたもの。高感度磁場測定や深地レーダーを用いた現地調査に加え、上空や水中からも徹底的に調査分析した結果、アトランティスに酷似した特徴が複数発見され、発表に至ったのだという。

     ここは奇しくも地元では古くから聖書や古代文献にもその名が記されるスペインの古代王国「タルテッソス」があったと信じられている場所。それだけに両者の関係性も含め大きな話題を呼んだのである。

    ドニャーナ国立公園の地下に眠っている古代都市のCG。水没構造の証拠も発見したという。画像=https://www.nbcnews.com/id/wbna42072469

    「推測ではありません。ドニャーナ国立公園の地下6〜9メートル地点に、約5メートルの謎のメタン層が存在していました。これは有機物から発生するものですが、ここに人知れず古代都市が眠っているとしたらどうでしょうか。長い年月をかけて構造物が分解され、そしてガスが発生した、そう考えることができます。実際、私たちは電気抵抗トモグラフィーによって、地下に人工構造物を確認しています」

     ナショナルジオグラフィック社の取材に、当時の米ハートフォード大学のフロイント考古学教授はこう答えている。氏によると、これまでもNASAの衛星画像から、ドニャーナ国立公園の一部の地形が古代ギリシアの哲学者・プラトンが伝えるアトランティスに特徴が一致しているという指摘はあったそうだ。しかしここは東京都23区の2/3以上という広大な面積に加え、そのほとんどが沼地や干潟といった湿地帯であることから、研究チームは複数年をかけ、乾季である8月に集中して調査を実施してきたのだという。

     また他にもこの地に古代都市が眠っている証拠として、複数の遺物を紹介している。ひとつは10㎝ほどの女神像と思しき石像であるが、これは炭素年代測定の結果、約5000年前のものであることが明らかになったのだという。

    調査中に出土したという女神像。約5000年前のものだというがアトランティスの存在を示す遺物なのだろうか。画像=https://www.mikedavidsontv.com/lsa-manage-blogs-here/the-lost-city-of-atlantis

    紀元前約1550年の津波で沈んだ?

    またアトランティスが滅亡した年代についても、フロイント教授は新説を唱えている。プラトンの著書から、アトランティスが海の底に沈んだのは今から約1万2千年前とされているが、調査の結果、アトランティスは紀元前約1550年、または紀元前1150年ごろに発生した巨大津波によって滅亡した、と結論付けているのである。

    「私たち考古学者は“石”に真実を追い求めます。そこから判明したのは、この地域は巨大津波により約5000ヘクタール以上が水中に飲み込まれたという事実です。内陸約90キロを消滅させる津波だなんて想像がつかないでしょう。ですが、我々が調査しているのはまさにこれ(理解し難い現実)なのです。そして津波を逃れたアトランティスの住民は各地でまた新たな都市を築いていった。これがアトランティスの真実なのです」

     フロイント教授は、地質調査からドニャーナ国立公園にまで津波が到達していたことはほぼ間違いないと断言。
     さらにドニャーナ国立公園=アトランティス説を裏付ける証拠として、カンチョ・ロアノなど、スペイン中部に点在する古代遺跡にみられる共通した「円形」の特徴を挙げている。氏によると、これらは津波の難を逃れた人々が、水没した故郷を偲びアトランティスの様式を真似たものだという。確かに離れた土地で同時多発的に建造されるのは何か背景があると考えられるかもしれない。

    アトランティスが存在すると推測されている場所。中央には長方形の構造が見られることから神殿と考えられているそうだ。画像=http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/3766863.stm

     実際にアトランティスに特徴が酷似していると指摘されていた場所をGoogleマップで見つけたが、専門家ではないため、著者にはなんとも判断が難しい。彼らの発表を受け、「ドニャーナ国立公園の地下には何らかの古代文明の痕跡が残されている可能性が高い」として支持する研究者は多いようだが、これを幻の古代都市「アトランティス」と結論付けるには性急すぎる、という指摘もあるようだ。現在はまた新たな方面から調査が続けられているというが、ドニャーナ国立公園の湿地帯には何が眠っているのだろうか。古代のタイムカプセルが開く日を楽しみに待ちたいと思う。

    ここの地下にアトランティスが眠っているのだろうか? https://maps.app.goo.gl/trJ1F1BhFi5y1ikG9

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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